「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
オーストラリアの首都はどこ? と聞かれても、すぐに名前が出てこない人が多いのではないでしょうか。大都会というイメージからか、東京と対比されることの多い「シドニー」と答えてしまう人も少なくないそうです。
ですが、オーストラリアの首都は「キャンベラ」。
どの州にも属さず、「キャンベラ」というひとつの都市で構成され、独自の自治権を持ち、連邦政府の直轄地的な位置づけの特別区域となっています。
キャンベラには、政治の中枢として国会議事堂があり、世界各国の大使館も置かれています。
首都でもある「キャンベラ」は、オーストラリアの二大都市シドニーとメルボルンのちょうど中間あたりに位置しています。しかし、シドニーまたはメルボルンから飛行機で約1時間、車で約3?3.5時間程度、電車は4時間以上もかかるうえに、一日3本程度しかなく、交通の便はあまりよくありません。
なぜこんな不便なところが首都になったのか。その理由は、英国の植民地から独立する際、英国が最初に入植し、開けていった街シドニーと、その後のゴールドラッシュで栄えた街メルボルンとの間で、どちらを首都にするか決められなかったことにあります。
どちらの都市も首都として発展していきたいという意向が強く、議論は平行線となり、その結果、両都市の中間あたりに位置するキャンベラに白羽の矢が立った、というわけです。
そして、計画的に首都として造成され、政治機能のみをここに置き、これまで発展してきた2つの街が、経済の中心として機能していくこととなりました。
キャンベラは、シドニーの南西約300kmのところに位置し、ニューサウスウェールズ州の中にポツンと「キャンベラ特別区域」ができている形になっています。
これは、首都決定の条件のひとつとして、シドニーから最低でも100マイル(約160km)以上離れていること、また、逆にメルボルンからも相当の距離が保てる場所で探した結果、現在のキャンベラ一帯に首都となる街として建設していく際に、ニューサウスウェールズ州から連邦政府へ割譲されたことによるものです。
ですので、ニューサウスウェールズ州内陸部と同様、夏場はかなり気温が上がって暑くなり、冬はぐんと下がって寒くなります。ただ、ニューサウスウェールズ州の回で紹介したグレートディヴァイディング山脈の谷間に位置し、山に囲まれた地形のため、盆地のような気候となっており、年間を通じて全般的に乾燥していて、フェーン現象が起きやすい土地柄です。
街の中心部は、モロングロ川をせき止めて造られた人工湖「バーリー・グリフィン湖」に面し、そこから放射状に街が広がっています。街の周囲は、自然をそのままに残した保護区や国立公園に囲まれ、大自然を身近に感じられるのも特徴のひとつです。
南側には、オーストラリアで最も高いコジオスコ山が聳え、ニューサウスウェールズ州のスキー・リゾートへのゲートウェイ都市にもなっています。
上述の通り、計画的に造成された際、周囲にあったはずの森林は切り開かれ、広大な平原に変わってしまいました。
切り開かれた平原は、牧草地へと利用され、放牧が盛んに行われています。その牧草地へ進出したのが、カンガルーたちです。キャンベラ周辺では、開かれた牧草地に適応したカンガルーが増えすぎて、毎年、大量のカンガルー駆除が行われている現実があります。
カンガルー駆除は、オーストラリア各地で行われているのも事実ですが、増えすぎて手に負えなくなったキャンベラでは、カンガルーを駆除するのに必要な許可制を廃止し、動物愛護団体から苦情が殺到したほど。この件に関しては、その後も議論が続けられていますが、解決には至っていません。
キャンベラは計画的に造られたため、自然をそのまま生かした場所が残されてきたこともあり、他の同規模の都市に比べると、元々この地に生息している固有種の生息場所が、比較的守られています。
そのため、同じ環境にあるはずのニューサウスウェールズ州では、絶滅が危惧される種であっても、キャンベラ周辺では、高い確率で見ることができます。グレーの体に赤い頭が特徴的な「アカサカオウム」、黒と黄色の鮮やかなコントラストが美しい蛙「コロボリーヒキガエルモドキ」など、他ではあまり見ることのできなくなった珍しい生き物たちが、街からさほど遠くない場所に生息しています。また、「ゴウシュウツル」のような大型の水鳥も飛来し、バードウォッチングも人気です。
アカサカオウム © JJ Harrison (jjharrison89@facebook.com) - Own work
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