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「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー

0292025.04.30UP5千年以上前から燃え続ける世界最古の炭層火災 ~バーニング・マウンテン-地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-

地下に埋蔵されている石炭の層が自然発火し、燃え続けている火災

 「炭層火災」という火災があるのをご存じでしょうか? 私はオーストラリアに来て地図を眺めていた時、ここニューサウスウェールズ州に「バーニング・マウンテン(燃える山)」という、なんとも興味をそそられる名称の場所があることに気づき、初めて「炭層火災」というものを知りました。

 炭層火災とは、地下に埋蔵されている石炭の層が何らかの原因で自然発火し、地中で消えることなく燃え続けている火災なのだそうです。調べていくうちに、日本にも北海道夕張市に「神通坑」と呼ばれる炭層火災があることがわかりました。これは明治時代から行われた炭鉱掘削が一因となって、大正期に入って自然発火したものであるため、「坑内火災」とも呼ばれるそうです。

 この他にも、世界中に炭層火災が起こっている場所がいくつかあり、そのほとんどは「神通坑」と同じく、炭鉱掘削と関連しているようですが、ニューサウスウェールズ州にある炭層火災は、人為的な炭鉱掘削とは無関係。なんと驚くことに、少なくとも5,500年前から燃え続けていると推定され、炭層火災としては『世界最古』となるそうです。

 発火した原因が何なのかは特定されていませんが、おそらく落雷などの自然現象によって、地中の炭層に引火したのではないかという説もあります。また、この場所の炭層火災は、約30m地下で起こっており、毎年約1mの速度で炭層を侵食し続けているため、研究者の間では、これからも長く燃え続けるだろうと言われているそうです。


バーニング・マウンテン自然保護区入口。 ©Miki Hirano

バーニング・マウンテン自然保護区入口。
©Miki Hirano

バーニング・マウンテンの頂上付近。 出典:Wikipedia

バーニング・マウンテンの頂上付近。
出典:Wikipedia


(動画)This Mountain Has Been Burning For 6000 Years(Wonder World)


先住民の人々が大切にしてきた“燃える山”

 この「世界最古の炭層火災」は、シドニーの北西約300kmのニューサウスウェールズ州内陸部にあり、通称「バーニング・マウンテン(燃える山)」と呼ばれています。何千年も前からこの地で暮らしてきた先住民たちは、地中で火災が起きていることを知っていたようで、この山のことを、「火」を意味する言葉である「ウィンゲン」と呼んでいました。山と火にまつわる神話も残されており、信仰の対象として大切にされてきたことが伺えます。

 ウィンゲン山は、現在は、州の国立公園事務局が管理する自然保護区に指定されています。保護区内には頂上へと続くウォーキング・トレイルが整備されており、ところどころにこの場所の自然と炭層火災、この地で暮らしてきた先住民の文化が学べる案内版が設置されています。


先住民の暮らしぶりを描いた案内板。 ©Miki Hirano

先住民の暮らしぶりを描いた案内板。
©Miki Hirano

1829年に英国人によってこの場所を特定され、数千年間燃え続けている「炭層火災」であることが示された看板。 © Miki Hirano

1829年に英国人によってこの場所を特定され、数千年間燃え続けている「炭層火災」であることが示された看板。
©Miki Hirano


 私も実際に歩いてみましたが、地下で火災が起きているとされる場所では、地面がほんのりと温かく、彼らはこうした地中の熱を冬の寒さ対策に役立てるなど、山の自然をうまく利用して生活していたのだろうなあと思わずにはいられませんでした。

 頂上へは往復1.5~2時間程度。中腹あたりでは、地中の粘土層が炭層火災の火で焼かれて自然にできた「煉瓦」が地上に露出している様子を見ることもでき、自然の神秘と先住民文化を身近に感じることができました。有名観光地のように目立った見どころはありませんが、ハイキングやピクニックなどを兼ねて訪れてみてはいかがでしょうか?


自然が作った「煉瓦」についての説明版。 ©Miki Hirano

自然が作った「煉瓦」についての説明版。
©Miki Hirano

自然にできた煉瓦が割れて地上に露出している。 ©Miki Hirano

自然にできた煉瓦が割れて地上に露出している。
©Miki Hirano


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バックナンバー

  1. 001「知っているようで、意外と知らないオーストラリアという国。」
  2. 002「自然環境を大きく変えるグレートディヴァイディング山脈」 -ニューサウスウェールズ州-
  3. 003「世界最大の珊瑚礁と世界最古の熱帯雨林」 -クイーンズランド州-
  4. 004「コンパクトな地の利と多様な環境が育む‘食の宝庫’」 -ビクトリア州-
  5. 005「原始の森に包まれた世界でいちばん空気がきれいな島」 -タスマニア州-
  6. 006「乾燥と寒暖差を利用した世界屈指のワイン産地」 -南オーストラリア州-
  7. 007「インド洋に沈む夕日と独自の生態系が見られる資源の宝庫」 -西オーストラリア州-
  8. 008「湿潤な森と湿原、乾燥した砂漠の2つの顔を持つ準州」 -ノーザンテリトリー準州-
  9. 009「二大都市間に計画的に造られた政治の中枢都市」 -キャンベラ首都特別地域-
  10. 010「その昔は海だった!? 5億年以上前の地球を目の当たりにする、ウルル-カタジュタ国立公園」 -地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-
  11. 011「地球にとって重要な古生物が今も生き続けるシャーク湾」 -地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-
  12. 012「地球が生んだ七色の宝石と過酷な環境で暮らす地下都市・クーバーペディ」 -地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-
  13. 013「自然界の偶然が生んだ奇跡の楽園!不思議な世界最大の砂島・フレーザー島」 -地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-
  14. 014「砂漠地帯に残された氷河期の人類の足跡・ウィランドラ湖群地域」 -地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-
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  16. 016「大規模森林火災でコアラ数万頭が犠牲になったカンガルー島」 -地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-
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  29. 029「5千年以上前から燃え続ける世界最古の炭層火災 ~バーニング・マウンテン」-地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-

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