「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
「炭層火災」という火災があるのをご存じでしょうか? 私はオーストラリアに来て地図を眺めていた時、ここニューサウスウェールズ州に「バーニング・マウンテン(燃える山)」という、なんとも興味をそそられる名称の場所があることに気づき、初めて「炭層火災」というものを知りました。
炭層火災とは、地下に埋蔵されている石炭の層が何らかの原因で自然発火し、地中で消えることなく燃え続けている火災なのだそうです。調べていくうちに、日本にも北海道夕張市に「神通坑」と呼ばれる炭層火災があることがわかりました。これは明治時代から行われた炭鉱掘削が一因となって、大正期に入って自然発火したものであるため、「坑内火災」とも呼ばれるそうです。
この他にも、世界中に炭層火災が起こっている場所がいくつかあり、そのほとんどは「神通坑」と同じく、炭鉱掘削と関連しているようですが、ニューサウスウェールズ州にある炭層火災は、人為的な炭鉱掘削とは無関係。なんと驚くことに、少なくとも5,500年前から燃え続けていると推定され、炭層火災としては『世界最古』となるそうです。
発火した原因が何なのかは特定されていませんが、おそらく落雷などの自然現象によって、地中の炭層に引火したのではないかという説もあります。また、この場所の炭層火災は、約30m地下で起こっており、毎年約1mの速度で炭層を侵食し続けているため、研究者の間では、これからも長く燃え続けるだろうと言われているそうです。
(動画)This Mountain Has Been Burning For 6000 Years(Wonder World)
この「世界最古の炭層火災」は、シドニーの北西約300kmのニューサウスウェールズ州内陸部にあり、通称「バーニング・マウンテン(燃える山)」と呼ばれています。何千年も前からこの地で暮らしてきた先住民たちは、地中で火災が起きていることを知っていたようで、この山のことを、「火」を意味する言葉である「ウィンゲン」と呼んでいました。山と火にまつわる神話も残されており、信仰の対象として大切にされてきたことが伺えます。
ウィンゲン山は、現在は、州の国立公園事務局が管理する自然保護区に指定されています。保護区内には頂上へと続くウォーキング・トレイルが整備されており、ところどころにこの場所の自然と炭層火災、この地で暮らしてきた先住民の文化が学べる案内版が設置されています。
私も実際に歩いてみましたが、地下で火災が起きているとされる場所では、地面がほんのりと温かく、彼らはこうした地中の熱を冬の寒さ対策に役立てるなど、山の自然をうまく利用して生活していたのだろうなあと思わずにはいられませんでした。
頂上へは往復1.5~2時間程度。中腹あたりでは、地中の粘土層が炭層火災の火で焼かれて自然にできた「煉瓦」が地上に露出している様子を見ることもでき、自然の神秘と先住民文化を身近に感じることができました。有名観光地のように目立った見どころはありませんが、ハイキングやピクニックなどを兼ねて訪れてみてはいかがでしょうか?
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