「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
南オーストラリア州は、その名の通り、オーストラリア大陸の中央南部に位置しています。
島であるタスマニア州を除く、オーストラリアのすべての州と接している唯一の州でもあります。
州の北半分はアウトバックと呼ばれる乾燥した砂漠地帯が広がり、南側は南極へと続く海に面しています。南極との間の海は、南極環流と呼ばれる寒流が流れ、常に冷たい海水が運ばれるため、豊かな漁場となっています。
州都アデレードは、南の沿岸部に位置し、冬でも比較的暖かく温暖ですが、夏場は雨があまり降らず、低湿となり、乾燥が激しくなります。これは、年間を通じて降雨量の少ない内陸部で温められ、乾燥した熱い空気が流れ込むためです。
州の北側にあたる内陸部は、乾燥した大陸と言われるオーストラリアの中でも最も乾燥した地域の一部となっており、数年に一度しか水が満たされない塩湖がいくつも点在しています。湖が干上がって水の無い期間は、塩分だけが残った白い大地がどこまでも続く光景が広がっています。
定期的に乾燥した空気が流れ込む海沿いは、地中海性気候のため、ワイン作りのためにヨーロッパから持ち込まれたブドウと相性がよく、国内最大のワイン生産地帯となっています。
州内には、バロッサバレーやマクラーレンベール、クレアバレーといった世界的にも有名なワイン産地が点在し、バロッサバレーには、世界最古のシラーズ種と言われる老樹が現存しています。
南オーストラリア州の経済にとって、ワインは重要な資金源のひとつです。その基となるブドウ農家を保護する政策のひとつとして、作物に発生する疫病を最小限に食い止めるべく、東隣のビクトリア州からの農産物の持ち込みを厳しく制限しています。
これは、このシリーズ第4回でもご紹介した通り、ビクトリア州が国内最大級の酪農地帯でもあることから、家畜由来の疫病を持ち込まないようにするためです。そのため、地続きとなっている州境では、検疫検査官による厳しいチェックが行われています。
冒頭でもお伝えしたように、南オーストラリア州が接する海域は、南極からの冷たく新鮮な海水が運ばれてくるため、海産物の種類が豊富で、国内有数の漁場となっています。
日本が主な輸出先となっているミナミマグロは、この海域での養殖が成功し、地元では「マグロ御殿」と呼ばれる大邸宅に住む漁業関係者が現れるほど、大きな産業のひとつです。マグロ漁の盛んな海沿いの町では、毎年、マグロを投げて飛距離を競う「ツナラマ」というお祭りが行われているほどです。
また、マグロのほかにも牡蠣の養殖、夏場はロブスター漁やアワビ漁なども盛んなことから、州の海岸沿いは「水産養殖街道」と呼ばれているほどです。
南オーストラリア州の経済を支えるもうひとつの顔は、鉱業です。中でもオリンピックダム鉱山は、世界一のウラン埋蔵量で知られています。オリンピックダム鉱山から採掘されるウランは、オーストラリアのウラン産出量の約70%を占めています。
しかしながら、鉱山では採掘に伴う周辺環境の汚染が懸念されるため、反対派住民らの抗議行動が度々行われています。
州内には、ユーカリやブラックボーイの愛称を持つススキノキなど、夏場の厳しい乾燥にも耐えられる植物を多く目にすることができます。また、内陸部にはオーストラリアの乾燥地帯でしか見られない固有種も多く、中でも、春になると真っ赤で目玉のようにも見えるユニークな花が咲く「デザートピー」は、南オーストラリア州の州花となっています。
動物たちも、比較的乾燥地帯に適応できるエミューやアカカンガルー、ハリモグラなどが多く生息しています。また、ウォンバットの一種で、長い毛と特徴的な鼻を持つミナミケバナウォンバットは、南オーストラリア州が国内最大級の生息地となることから、州を代表する動物に選ばれています。
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