「Eco Value Interchange」バックナンバー
来る10月24日(火)、毎年恒例となった「EVI環境マッチングイベント」が、東京国際フォーラム(ホールB7)を会場に開催される。
テーマは、「私たちにできること。」。環境貢献のために、それぞれの立場から“私たちにできること”は何か、専門家や実践者の講演や事例紹介を聞いて、考えて、一歩踏み出してもらうことがねらいだ。
2012年から継続してきた同イベントでは、毎回、イベントの最終セッションで次年度のテーマを発表してきた。今回のテーマ「私たちにできること。」も、昨年(2016年)10月20日(木)に開催した「EVI環境マッチングイベント2016」において、これまでのテーマの紹介と併せて発表された。
本記事では、約1か月後に迫った同イベントの概要と見どころについて紹介したい。
「EVI環境マッチングイベント2017」は、一般100名、企業200名の合計300名を定員に、8月1日から申し込みの受け付けを開始している。同時に、企業や自治体等の環境貢献事例紹介・展示ブースの出展も無料で受け付けている。
今回のマッチングイベントでは、昼と午後にブースツアーを設定し、タイトルの通り、参加者のマッチング機会の促進を図る。ここ数年、びっしりと詰まったプログラムが充実した半面、マッチングタイムが十分に取れていなかったのが反省点として上げられた。会場は、セミナーエリアと、展示ブース及び相談会・ワークショップを実施するエリアに仕切られ、開催中は自由に出入りできるようになっている。展示ブースエリアには大型スクリーンも設置され、セミナーエリアの様子がモニターできる。
主催者であるカルネコ株式会社代表取締役社長・加藤孝一による開会挨拶のあと、第1部の基調講演として、環境省地球環境局地球温暖化対策課長の松澤裕さんが「世界の潮流を踏まえた低炭素化の取組」と題して話をする。パリ協定の発効を受けて、脱炭素化が世界の潮流となる今日、国・自治体・事業者・国民などさまざまな主体で温暖化対策を効果的に行っていく必要があるという。今回の講演では、COOL CHOICE(賢い選択)とカーボン・オフセットの2つの取り組みを例に、長期大幅削減を達成するための方策を提示する。
さらに、もう一つの基調講演として、前年のマッチングイベントでも登壇した国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)特別顧問で国際金融アナリストの末吉竹二郎さんが、『始まった「脱炭素経済」への助走』をテーマに話をする。パリ協定から早や2年。この間も気候変動は加速的に悪化し、被害は広がるばかり。そうした中で、パリ協定成立の陰の立役者であったビジネスと金融が、今、大きく変わり始めているという。その最新動向をお伝えする。
前年度は、金融業界による「divestment(石油関連企業からの投資引き揚げ)」の流れと、排出が前提の“低炭素(low-carbonization)”を脱却し、そもそも出さない“脱炭素(de-carbonization)”へ価値観の転換が動き始めている世界各国の潮流について紹介。さらに一年の時を経て、世界及び日本におけるカーボンプライシングへの取り組みがどう進化・深化しているのか、それに対して“私たちにできること”とは何なのか考えるヒントを得られることが期待できる。
第2部は全国各地で動き始めた環境貢献の具体的な事例報告が並ぶ。最初に口火を切るのは、前年度のマッチングイベントにも登壇いただいた、ソフトバンクSBパワー株式会社代表取締役社長の馬場一さん。EVIとのコラボで2017年2月1日にサービスを開始した、日本初の環境保全団体寄付型電気「自然でんき」の仕組みや半年を経たこれまでの実績等についてご報告いただく。
前年度のマッチングイベント当日では、プレスリリース前のため、EVIとの具体的な関係等について触れられなかったが、満を持しての再登壇となった。
同社では、「自然でんき」を通じて支援する全国各地の森林にカルネコEVIスタッフとともに足を運び、森林や施業の状況を視察している。去る6月12日には長野県小海町の県有林を訪問し、6月22日には秋田県横手市にある横手市の森林組合、7月6日には新潟県津南町の森林施業地を訪ねている。現地の森の様子や現場の人たちの取り組みを知ることが、心のこもった支援につながる。
2017年6月12日、長野県林務部の加藤係長と小山技師の案内で、佐久平から車で約1時間、標高1200mから1700mに位置する小海県有林を訪ねる。間伐によって吸収されたCO2量を環境省のJ-クレジット制度によりクレジット化し、環境貢献に取り組む県内外の企業等へ販売する等、多面的な活動を展開。EVIでも女神湖グリーン&クリーンリゾート、たてしなっプル、やわらかフルーツドライ、あんずジャム等、数多くの事例を積み上げてきた。
6月22日には、秋田県横手市を訪問し、支援先である横手市の森林組合の施業を視察。昼には、忙しい執務の中、高橋市長とサービスの普及に関する様々なアイデアや取り組みに関して、歓談した。
森林組合の施業の現地視察では、横手FMかまくら(77.4mhz)の取材も入った。その様子は、7月6日と20日朝7時半から2回、「みんなで横手の森を守ろう!」という番組で放送された。
同じく第2部の事例報告の一つとして登壇する、足立区環境部環境政策課計画推進係長の小山秀一さんには、足立区とEVIの連携によって進めてきた環境への取り組みについてご紹介いただく。
同区が毎年春先に開催している「足立地球環境フェア」には、EVIでも毎年ブース出展をしてきた。4年連続の参加となった「足立地球環境フェア2017」(2017年5月20日・21日の土日開催)は、主催者発表によると、両日で1万8千人が集まったという。
EVIブースでは、森林支援につながる木製品の販売や、間伐材のうちわを使ったワークショップなどを実施。通路壁面約4mのスペースでは、足立区環境部とのこれまでの関わりを含む、“日本の森と水と空気を守る”活動の紹介や環境貢献型商品の展示を行なった。
同イベントは、カーボン・オフセットのしくみを活用して、二酸化炭素(CO2)排出量がゼロのイベントとして実施された。会場の電気使用量、出展団体の自動車及び飛行機移動、会場設営業者の自動車移動によって排出する約8トンをオフセットしたわけだ。
同区のカーボン・オフセットの取り組みとしては、CO2ゼロの清掃車の運行を行ったこともある。青い車体に「CO2ゼロ」の文字を表示したごみ清掃車が街中を走り回り、森林保全とカーボン・オフセットの取り組みをPRした。
夏休みの期間の7月21日-8月31日には、足立区役所からほど近い弥生町にある「足立区リサイクルセンター あだち再生館」で小学生向けの環境スタンプラリーが開催された。同イベントの企画・実施にはEVIが全面的な協力をした。展示パネルをEVIから貸与し、小学生でもわかる身近な環境について解説。3つの質問に答えスタンプを押してゴールした子にプレゼントした、間伐材から作った動物のクリップは、EVIのECサイト「森のめぐみのおとりよせ」でも紹介している定番商品の一つだ。
あだち再生館の久木崎館長は、2017年1月11日にEVI・加藤が講師に招かれた「あだち環境ゼミナール」での講義内容や、「足立地球環境フェア」におけるEVIの活動や展示に触発されて、EVIのパネルを利用した環境スタンプラリーの企画を思い付いたという。
その「あだち環境ゼミナール」は、足立区環境政策課が区民向けに開催している環境講座。地球環境の現状や地球温暖化の影響と対策、ごみ問題、生物多様性など、環境について幅広く学び、「将来のために、私たちは、どうすればよいのか」を考えることを目的に、7月から翌年3月まで月1回、第3土曜日の午後に開講している。修了者は「あだち環境マイスター」に認定され、区が実施する環境イベントの運営に協力している他、環境に関する自主的な活動に対する区からの支援も受けられる。
加藤が講師を務めた2017年1月11日の講座には、区内の事業者、建築家、DJ、大学生など環境に高い関心を持つ区民13名と、修了生であるマイスター2名が出席し、熱心な話し合いが行われた。
後日担当者から送られてきたコメントシートに対して、加藤は下記のような総評コメントを寄せている。
「今後、皆さんは様々な取り組みを始められると思います。始めたら、知っていただき、共感していただけるか、さらに行動を始めていただけるかが重要ですが、この3段階には大きな差があります。その差を乗り越えられる人だけが成果に辿り着きます。そうだ、そのとおり、と感じたら何かを始めましょう。Let's Begin! このとき、頑張っている人たちを見て、改善の糸口をみつけたら、遠慮なく伝えてあげてください。採用されるかそうでないかは相手次第ですし、伝える人のコミュニケーション能力にも依存しますが、はっきりしていることは、批判せず、一生懸命に伝えようとすれば必ず伝わるということです。情熱はモチベーションの源。モチベーションは批判よりも共感に支えられます。知恵を出し、励まし合いながら、より良い結果を生み出していってください」
今回のマッチングイベントでは、足立区がEVIとともに取り組んできた日本の森と水と空気を守るための3年間の活動について振り返るとともに、今後のさらなる展開について考えていくという。
第2部最後の事例報告は、鳥取県日南町がEVIの協力で2016年4月22日にグランドオープンした、日本初のCO2排出ゼロの道の駅「にちなん日野川の郷(ひのがわのさと)」の一年間の活動実績を踏まえた事例の紹介と、同道の駅を中心とした全国の道の駅による連携構想について、日南町担当者からお話いただく予定だ。
第6回カーボン・オフセット大賞で農林水産大臣賞を受賞した「にちなん日野川の郷」に対して、カルネコ株式会社ではオープン前の企画やデザイン提案のみならず、オープン後の運営も含めた総合的かつ継続的なサポートを行ってきた。
年度末の3月12日に日南町で開催された月例の経営会議では、月間の実績報告や一周年を迎える4月及び5月のイベントプランなどの議題とともに、1年間の道の駅運営で見えてきたこと、これから必要になることについて加藤が総括した。
「ようやくひとまわりしたところで、これまでの経験を生かした施策が可能になります。はじめての試みでうまくいかなかったこともありましたが、大切なのは同じ失敗を繰り返さないことです」
そう話す加藤は、近隣との関係性の強化と広報計画の重要性、商品開発や調達の仕組み等をシートにまとめて説明した。課題の一つに挙げたのは、冬季の商品の充実。農産物中心の品揃えでは、冬季の商品配列はどうしても品薄になる。そこで打ち出したのが、全国の志を同じくする道の駅との連携構想。同じ“日南”を冠する宮崎県日南市の完熟マンゴーや秋田県横手市のB級グルメ「横手焼きそば」、岡山県津山市の名物料理「津山ホルモンうどん」などのご当地食材やグルメが、にちなん日野川の郷で入手できるようになれば、来場者を呼び込む目玉商品になりえる。
「日南町の課題は全国共通の課題でもあります。困っている道の駅同士が互いに助け合う連携体制を組むことで、ウィン-ウィンの関係を築くことがねらいです」
EVIでは、6月23日には秋田県横手市の「道の駅さんない」、7月28日には岡山県津山市の「道の駅久米の里」、7月20日・21日と8月25日には来春のオープンをめざす北海道石狩市の道の駅「あいろーど厚田」、9月7日には宮崎県日南市「道の駅なんごう」と全国の道の駅を訪問して、商品交流を中心とした道の駅連携構想について説明してきた。
にちなん日野川の郷のようなCO2排出ゼロの道の駅をすぐに実現するのは難しいかもしれないが、クレジットの視点を持って環境貢献の輪を広げるとともに、地元産の商品開発を進めながら、足りない分を連携先との商品交流によって補う。さらに、観光紹介や商品交流を通じた文化交流が進むことも期待できる。
北海道石狩市で来春オープンを迎える道の駅「あいろーど厚田」の担当課長及び管理運営会社社長と、クレジット活用と道の駅連携構想による商品交流について説明をする加藤。
岡山県津山市の「道の駅久米の里」で、EVIの活動事例やカーボン・オフセットと森林支援の仕組み、道の駅連携構想について説明する加藤。道の駅では、津山ホルモンうどんがご当地グルメとして売り出され、地域活性化に一役買っている。
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.