「Eco Value Interchange」バックナンバー
去る11月18日(火)、東京国際フォーラムB-5ホールを会場に、毎年恒例になった「EVI環境マッチングイベント2014」(「TOKYO地域カーボン・オフセット推進協議会」(EVI推進協議会EVI推進協議会主催))が開催された。2012年11月の第1回以来、第3回目となった今回のマッチングイベント。会場には、森林事業者やオフセット・クレジットを活用したプロモーション活動に期待を寄せる企業の関係者、地方自治体の担当者など、カーボンオフセットに関心を持つ人たちが全国各地から集まってきた。
今回の環境マッチングイベント2014では、前回までに報告された事例のその後の進展とともに、新たに始まった事例の紹介があり、EVIの仕組み活用の質的な進化と面的な広がりが具体的に感じられる一日となった。
会議の冒頭、主催者であるEVI推進協議会を代表して、同会発起人のカルビー株式会社カルネコ事業部の加藤孝一は、次のように述べて挨拶に代えている。
「2011年3月に始まったEVIの取り組みはもうすぐ4年目になりますが、まだまだ緒についたばかりです。地球温暖化防止対策という大きな問題に対して小さな一歩ですが、確実なステップを歩み続けていくことが大事です。ぜひ、皆様とごいっしょに歩んでいけたらと思います」
次回、2015年の第4回はさらに倍の広さとなるB-7ホール(1,400m2)を借りて500名規模での開催を宣言した。開催日は2015年10月19日、すでに会場の予約も済ませている。開催コンセプトは『ともに創ろう!』を予定している。
今年、地球温暖化対策やカーボンオフセットに関して、エポックとなる発表が国内外でいくつか重なった。
この日の会議冒頭で基調講演として登壇した環境省地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室の川上毅室長は、昨年から今年にかけて段階的に発表されてきたIPCCの第5次評価報告書で示された“累積総排出量とそれに対する世界平均地表気温がほぼ比例関係にある”という新見解などを引用しつつ、地球温暖化の影響や国の施策について紹介。現在のカンクン合意に基づくスキームから、2015年のCOP21での新枠組みの採択に向けて待ったなしの状況にある国際交渉。一方で、国内の地球温暖化対策の一つとして、いまだわかりにくいと言われるカーボンオフセットの取り組みを推進していくことの重要性を強調した。正確性を担保しつつ、わかりやすく伝えていくことの両立がキーとなるという話だ。
環境省の新しい気候変動キャンペーン「Fun to Share」も、今年動き始めた新たな展開の一つだ。午後の部では、環境省地球環境局地球温暖化対策課の国民生活対策室・馬場清室長補佐がその趣旨や背景、これまでの国民運動との違いについて説明。曰く、「チームマイナス6%」、「チャレンジ25」と続いてきたこれまでのキャンペーンが政府の数値目標を掲げたものであるのに対して、今回のキャンペーンでは地域からの知恵を生かしたアクション重視型キャンペーンとなる。これまで取り組んできた、クールビズやウォームビズ、smart moveといった個別の活動については引き続き継続していくが、全体を統括するイメージを刷新したものだ。EVI推進協議会は「Fun to Share」と連携して、その普及・推進に向けた取り組みの一端を担う。
国内のカーボンオフセットに関する環境省の指針『我が国のカーボンオフセットのあり方』が改定されたのは、今年3月のことだった。2008年2月の策定から6年が経過して、社会的状況も大きく変化したための改定だ。三菱UFJリース株式会社環境・エネルギー事業部カーボンオフセットサービス室長の牧野佐和子さんの講演では、改定指針に基づくカーボンオフセットの活用方法に関する最新で実務的な解説がなされた。
「環境省指針の改訂の中で、ひとつ私たちEVI推進協議会にとって素晴らしいことがあったのでご紹介します。それが“寄付型カーボンオフセット商品”です。環境貢献型商品として、地球温暖化や森林整備のための少額の寄付を価格に上乗せして購入してもらい、集まった寄付金でもってクレジットを購入するというその仕組みは、まさに環境貢献を目的としたEVIそのものといえます。改定指針が出る前は、『カーボンオフセットとは言い難いのですが…』という枕詞をつけて説明していましたが、今回の改定で認知された寄付型オフセットとしてきちんと位置付けられることになりました。今後は大手をふるって進めていくことができます」
カーボンオフセットは、二酸化炭素排出量の削減を自分事ととらえて参加する、そのための意義ある取り組みだと牧野さんは説明する。環境省の指針では、そのカーボンオフセットの取り組みを、オフセットの対象によって類型化して、クレジットを活用した商品やサービスとして設計する方法について解説している。
例えば、商品の製造や流通・使用・廃棄時のCO2排出量が測定できる場合には、商品そのものに関わるCO2排出量をオフセットの対象にすればよい。もっともオーソドックスなカーボンオフセット商品の設計方法だ。
一方、排出量を測定するのが技術的・コスト的に困難な場合には、商品そのものを対象にするのではなく、購入者の日常生活に伴うCO2排出量(例えば車に乗ったり、ごみを出したり、冷暖房を使ったり…など)の一部を肩代わりする形で排出削減に寄与しようという活用方法もある。これまで「オフセット支援型」といわれたこのタイプは、今回の改定で「クレジット付オフセット商品」として整理された。いわば、オフセット・クレジットをおまけのようにつけて付加価値を高める商品。EVIの取り組みとしては、南アルプス市と共同で開発したカーボンオフセット付きサクランボなどの事例がある(→EVI002)。
さらに手軽な参加を促す取り組みとなる可能性を秘めるのが、寄付型カーボンオフセット商品といえる。商品そのものや購入者の生活や行動に伴うCO2排出量などのように、オフセットの対象が明瞭ならそれらを設定すればよいが、そのためにはある程度まとまった量の排出量をオフセットする必要もあり、その分、消費者の負担も増すことになって、支援や参加へのハードルがあがっていく。2013年現在で488,020トンの森林吸収系クレジットの創出量に対して、無効化された(=使われた)量が55,146トンとわずか11.3%にとどまる理由の一つはこうしたところにあるといえる。
一方で、どうせ買うものなら環境貢献型の商品を選んで社会の役に立ちたいという思いを持つ消費者は少なくない。大きな負担が伴うことはできなくても、わずかな額で貢献できるなら喜んで協力したいという消費者心理だ。午後の部の最初のセクションでは、カルビー株式会社カルネコ事業部が実施してきた3年間の消費者アンケートについて紹介されたが、その結果からもこうした傾向が如実に見えている。
そんな消費者の思いを汲みつつ、初歩的な参加行動を支援する仕組みをカーボンオフセットの取り組みの一つとして整理したのが、「寄付型オフセット」といえる。単なる寄付と違い、クレジットを介した寄付として設計することで、使途の明瞭化が実現するのが、この仕組みの利点といえる。
1トンや2トンではなかなか売れないクレジットも、小さく細分化していくことで購入しやすくなる。そうして一つひとつの小さな思いが結集することで、大きな力を生み出していく。そんな仕組みをEVIでは実現して、実際にいくつかの事例も動き始めていることがこの日の事例報告でも紹介されている。
次回のエコレポでは、マッチングイベント2014で報告された、そうしたクレジット活用の新たな取り組み事例のいくつかについて紹介していきたい。
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