「Eco Value Interchange」バックナンバー
EVI推進協議会が毎年開催している環境マッチングイベント。2015年は、来る10月19日(月)に、前年のマッチングイベントで約束した通り、東京国際フォーラムのセミナー棟最上階にある大ホール(B7ホール)にて開催を予定している。
このB7ホールは、東京国際フォーラムの中でも劇場形式のホールAを除けば、セミナーホールとして最大面積の1400m2という大きなホールだ。大きく開いた窓からは、皇居が眼下に一望でき、その眺望は一見の価値がある。
当日は、このホールを2分割して、セミナーエリアと展示ブース&商談エリアをレイアウトする(右図参照)。マッチングスペースとなる展示ブース&商談エリアでは自由に話をしてもらう。その声が漏れ聞こえて講演の邪魔をすることのないように仕切りを設けているわけだが、セミナーエリアの講演の様子はスクリーンを通じてライブで確認することができる。さらに、昼にはサンドイッチがふるまわれ、軽食を取りながら昼休みの時間も有効に活用して、歓談・商談等を進めてもらう。
今回のエコレポは、そんな前年までとは一味違った仕掛けを随所に盛り込んだ「EVI環境マッチングイベント2015」へのいざないとして、お送りする。講演内容や一部の登壇者については交渉・調整中の部分もあり、開催当日までの約2か月間でさらに煮詰めていくことになる。現在進行中の企画が当日までに一定の成果をみせた場合、それらについて話してもらうことになる可能性もある。そんな発展の可能性も含めて、マッチングイベントの見どころとプログラム構成のポイントについて、EVI推進協議会の加藤孝一の話をもとに紹介していきたい。
前回、マッチングイベント2014では、まとめのセッションでEVI推進協議会の加藤孝一より『ともに、一歩前へ』と呼びかけ、“今この時点の私たちにできることから着手していこう”と会議を締めくくっている【1】。
それから約半年を経て、ともに一歩前へと踏み出しつつある事例がいくつか積み上がってきた。それらの取り組みについて報告してもらい、EVIを取り巻く現状と可能性について伝えていこうというのが、今年のマッチングイベントのめざすところだ。
午前の部、環境省地球温暖化対策課市場メカニズム室の川上毅室長による基調講演と、筑波大学生命環境系准教授の内海真生さんの講演【温暖化の現状と水資源の重要性】を受けて、加藤からは『ともに、創ろう』をテーマに、そんな話をすることになる。
筑波大学準教授の内海さんとの出会いについて、加藤は次のように話す。
「昨年12月につくば市で開催された北関東カーボン・オフセット推進ネットワーク主催の公開セミナーで水の重要性を説いたのが、内海准教授でした。まさに、私たちが常日頃感じていたことを非常にわかりやすく話していただけた講演内容で、私は終わった瞬間に名刺交換に行って、10月19日のEVIマッチングイベント2015でお話しいただきたいとお願いしたのを鮮明に思い出します。本当にお忙しい方で、その後なかなか連絡が付かなかったのですが、幸いにも10月19日だけぽっかりと予定が空いていました。参加者の皆さんにもぜひ聞いていただきたい内容です」
セッションの合間には、各ブース出展者による15秒-30秒ほどのビデオレターを用意してもらい、セッションの合間に放映することも計画している。数件ずつ流し、一日が終わる頃にはすべてのブース紹介を完了するという仕立てだ。
午後のセッションは、カルビー株式会社カルネコ事業部が実施している消費者の環境貢献意識調査の4年目の結果について報告した後、イオン株式会社環境・社会貢献部の金丸治子部長に登壇いただき、イオングループが取り組む環境貢献活動の報告をお願いしている。
「イオングループの取り組みの詳細はマッチングイベント当日に聞いていただきたいのですが、植林活動では100万本の広葉樹を植えているのだそうです。これは非常によい取り組みなのですが、金丸部長にお話ししたのは、広葉樹の整備もすごく大切ですが、それは日本の森の半分の側面でしかありませんよねということでした。もう半分は、スギやヒノキという商業樹林に代わった森のメンテナンスがうまくできていないところにあるわけです。木材価格も下落している中、なんとか林業経営を持ち直そうと、カーボンオフセット・クレジットを生み出す取り組みが進んできました。森の整備を進めて、CO2の吸収能力を高めた分をクレジットとして売り出す仕組みです。ところが、苦労して生み出したクレジットは、いまだ15%しか売れていない現状があります。私たちEVIは、そのクレジットを売って、森林事業者にお金をまわすことで、スギ・ヒノキ林のメンテナンスをサポートする社会貢献事業を行っています。片や、イオンさんは広葉樹林の整備をお手伝いされている。この2つの取り組みがマッチしたら、日本中の森を救うことになるじゃないですか! そうお話して、ともに取り組んでいきましょうと、がっちり手を握ることになりました」
イオン株式会社の事例は、EVIとこれからコラボの方向性を探っていこうとするものだが、すでにEVIの仕組みを活用した取り組みを始めているのが、株式会社やまだ商店(入船市場)代表取締役の山田雄久さんによる事例報告だ。
熊本県で生鮮食品・酒類・惣菜などを扱うやまだ商店の直営店「入船市場」では、小国町産の生鮮食材などを使った商品にEVIを通じて購入した小国町のクレジットを付けた環境貢献型商品として販売する取り組みを進めている。店内には、EVIによる森の支援の仕組みを紹介するPOPやタペストリーなどを掲示するEVIコーナーを設けている。山田社長には、小売りができる環境貢献のあり方について、その取り組みの内容、山田社長の想いや社員の反応・反響などについて話していただく予定だ。
鳥取県日南町は、県南西部の内陸部にある人口5,132人(2015.6.30現在)の小さな町。鳥取・島根・岡山・広島の4県の水源エリアのど真ん中にあり、清冽な水資源に恵まれるとともに、高台にあるため寒暖差も激しく、農作物はすこぶるおいしくできる。
はるばる日南町からご登壇いただくのは、エコファームHOSOYAの三上惇二代表。同社が生産・販売する特別栽培米は、知名度こそ高くはないものの、米の食味検査では、100点満点中93点を叩きだす抜群の食味を誇る。それまで魚沼産のコシヒカリしか使っていなかったという大阪にある三ツ星レストランのシェフが、味見をしたその場で、仕入れ先として切り替えたという逸話があるほどの美味なお米だ。
そんな、エコファームHOSOYAの扱う特別栽培米をEVIでも高付加価値商品として販売協力しようという取り組みが動き始めている。品質に見合った適正な価格で販売することで、収益を地元の農家に還元して、地域活性化を図ろうというEVIとのコラボによる取り組みについて、三上さんに話してもらう。
一方、三上社長に続いて登壇する、JTBコーポレートセールスの黒岩隆之プロデューサーからは、また違った形の地域活性化の取り組みについて事例報告してもらう予定だ。とある県で進んでいる鉄道を利用した地域活性化プロジェクトの中で、森のクレジットを購入して森の整備を助ける仕組みを入れていこうというものだ。
「もともと、JTBの黒岩さんとの出会いは2年ほど前に遡ります。当時、JTBがある自動車メーカーとコラボして進める電気自動車の普及キャンペーンについて耳にしたのが最初のきっかけでした。そのプロジェクトでは、全国で7000台の電気自動車を貸し出すとともに、観光地を中心に全国1800カ所に給電施設を整備するというものです。だったら、その枠組みの中に、EVIを通じた森のクレジット購入の仕組みを導入できないかとお話したのです。当時はEVIもまだそれほど多くの森とのお付き合いがなかった頃でしたが、今や全国76カ所の森からクレジットの預託を受けて、全国カバー率でいうと79.5%にまできています。そろそろ本格的な話をさせてもらえるだろうと、改めてお会いして、具体的な方策について話しをしてきました。ただ、この話はまだもう少し時間がかかりそうだということで、今動かせそうな案件として代わりにご提案いただいたのが、今回報告してもらう予定にしている、ある県で進んでいる鉄道を利用した地域活性化プロジェクトです。ここでも電気自動車を運用して、駅間の補助交通に使うとともに、鉄道のブレーキ時に発生する回生エネルギーを蓄電池に貯めて、電気自動車の動力源を自給しようというもの。その枠組みの中に森のクレジットを購入する仕組みを取り入れようという計画です。まだ本決まりではありませんから、この先うまく話がまとまって動き始めたらという条件付きの登壇なのです。黒岩さんも、その場で参加をOKしてくださって、是が非でも形にしていこうと話をしているところです」
休憩をはさんで、「もっと身近に環境貢献」というセッションでは、5つの報告・発表を予定している。
商品開発で環境貢献をする仕組みについて事例報告してもらうのは、長野県松代の「杏っ子の里ハーモアグリ」の相澤晴雄さん。松代産の杏を使って、シロップ漬けやジャムなどの商品開発をEVIと共同で進めている事例だが、いっしょに取り組んでいく中で、求められる役割が一つ見えてきたと加藤は言う。
「信州松代で、農家が高齢化して草ぼうぼうに荒れ果てた杏畑を何とかしなくてはと立ち上がったのが相澤さんたちです。畑の内外の草を刈り、あんずの木の手入れをして、あんずの里を再生しました。相澤さんは、木を甦らせ、今年収穫した実のうち形のよいものはシロップ漬けに、そうじゃないものはジャムにして、さらにあまるものをドライフルーツにしようと設備を導入して工場まで造ってしまいました。そこまでやりきる人なんですが、シロップ漬けやジャムの容器は、地元のホームセンターから買ってくるしかなかったのです。実はこれは、相澤さんたちだけの課題ではないんですよね。多くの地域で、地域活性化をめざして、地域の名産品を作ろうと、加工食品やフルーツなど素材そのものを売り出そうとしています。一生懸命よい作物を育てて、気持ちもあるし、設備投資も厭わない。でも、いざ商品化しようというときに、容器など資材の調達先が整えきれないということがわかったのです」
各地の地域活性化を実現するために、必要となるさまざまな資材の調達。よりリーズナブルな資材調達をEVIがサポートすることで、きちんと利益を生み出す構図ができる。相澤さんの事例報告を通じて、そんな「地域活性化プラットフォーム」としての機能が徐々にできてきていることを感じさせるセッションにしてもらおうというわけだ。
もう一つ違った形の商品開発を進める事例について、株式会社トライウッド企画営業部の渡邊雄一郎さんに報告をお願いしている。
EVIでは今年5月、九州の大分県にあるアキ工作社および株式会社トライウッドを訪ねて、かねてより構想してきた、森の未利用資源の有効活用をめざした商品開発の取り組みについて、試作品評価や今後の販路、パッケージ等について打ち合わせをしてきた。アキ工作社は、ディスプレイやアパレル関連商品の企画・設計・製造・販売を行う会社で、デザイナーの松岡さんは、世界最高レベルのデザイン製品を発表している。中でも、細密レーザーを使って段ボールシートを切断加工して製作されるペーパークラフト・シリーズは、同社の看板商品だ。一方、株式会社トライウッドは、日本でも屈指の極薄積層合板技術を持つ。
これまでダンボールを使って作っていた商品を、トライウッドの極薄積層合板を使った、間伐材商品として開発しようというのが、今回の取り組みだ。構想のねらいについて、加藤は次のように話す。
「その商品が、ようやく形になりました。鷹(TAKA)とキノコの親子(KINOKO)と金魚(KINGYO)の3種類をいっぺんにリリースします。これはダンボールから木に替えた事例ですが、要するに、それまである素材でしかできなかったものを木に替えたらどうなるかというテーゼなんですね。こうした取り組みが増えていけば、使われずに森の中に放置されている木材の有効活用が進むことも期待できます」
スポーツ振興にも森のクレジットを活用できるという事例は、石岡市カーボン・オフセット推進協議会の池田寛さんからご報告いただく。8月30日に開催を予定している「いしおかトレイルラン大会」では、参加費の一部を森のクレジット購入に充てようという構想だ。
「トレイルランというのは、舗装路以外の山道を走る競技のことです。実は今、山を踏み荒らして大きな負荷をかけるとか、観客も含めて多くの人が山の中に入ることでゴミが捨てられるとか言って、バッシングされたりします。この大会を主催する石岡トレイルランクラブでは、マナーを守った大会運営をすることで、理解を得ようと尽力しています。その人たちが、さらに森のクレジットを購入して山の環境を守っていこうという取り組みは感動的でもあります。ぜひ広く知っていただきたい事例です」
さらに、環境教育の広がりを通じて、身近な環境貢献について感じてもらう取り組みの事例報告として、豊島区の教育長に話をしてもらう予定だ。豊島区では、区内の中高生が冬季に長野県立科町でスキー教室を実施している。昨年度から、人数×泊数のクレジットを購入して、カーボン・オフセットする取り組みを始めている。コーディネートしたのは、女神湖リゾートプラニングの土屋えりかさん。こうした取り組みを知って、学生たちもとても喜んでいるという。
このセッションの最後には、クリエイティブオフィスエジソンの津久井香乃子さんによるEVI環境絵本の読み聞かせを予定している。昨年のマッチングイベント2014でも行った絵本の読み聞かせを、今回は新たに当日に間に合わせて発行を予定している新作のお披露目の場とするわけだ。今後も毎年1冊ずつ新刊をリリースして、マッチングイベントの場で発表していく計画だと加藤は意気込む。
この新刊絵本は、会場アンケートと引き換えで来場者全員に持ち帰ってもらう予定だ。
最後に、この日の報告を総括して、加藤よりこれからの取り組みに向けたメッセージが提示される。メッセージに込める加藤の想いは、ぜひ当日会場で直接聞いていただきたいが、そのメッセージを踏まえて、マッチングイベント2015の翌日からさっそく、次回のマッチングイベント2016を次のマイルストーンにする新たな船出の朝を迎えることになる。
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