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「Eco Value Interchange」バックナンバー

0122015.05.12UP環境貢献型商品を開発するだけでなく、売りにつなげるための場と仕組みをつくる

楽天、Yahoo!、Amazon、の3チャネルで、EVIのEコマース・サイトが開設

 2015年4月13日(月)、楽天、Yahoo!、Amazonの3チャネルで、EVIのEコマース・サイトが一斉にオープンした。名付けて、「EVIショップ」。いわゆるネット通販サイトだ。扱う商品は、EVIが預託を受ける全国各地の森林中心のオフセット・クレジットを付与した環境貢献型商品。現在は、「森のめぐみのおとりよせ」【1】で取り扱っている商品を掲載しているが、今後、より幅広い商品を扱っていく予定だ。ここでの取り扱いを検討している商品の一つに、長野県立科町産のお米がある。
 「長野県の立科町とは、グリーン&クリーン・リゾートの取り組み【2】でご協力させていただいていますが、去る3月7日には同町主催の『たてしなの農畜産物ブランド推進講演会』の講師の一人として招かれました。講演会自体も参加者の皆さんが盛り上がってくれてよい会になりましたが【3】、終了後の懇親会の時に農業部会の委員長が教えてくださった話がとても印象的でした」
 そう話すのは、EVI推進協議会の加藤孝一。
 部会長曰く、立科町では、日中と夜の寒暖差が激しいこともあって、特Aランク【4】に認定される最上級のお米が穫れるという。特Aランクとは、新潟県魚沼産のコシヒカリをはじめとする有名ブランド米などと同じ、最高ランクだ。ところが、収穫までにかかるコストは1俵(60kg)当たり1万2-3千円ほどになるが、買取価格は1万800円でしかない。つまり、逆ザヤの状態なわけだ。
 「これを聞いたとき、愕然としたんですよ。おかしかろう!って。お米だから、補助金もあるのでそれでもやっていけるのでしょうけど、健全ではないですよね。そこで私が提案したのは、4月から出店するEVIのeコマース・サイトでの販売です。誰もが知っている、楽天、Yahoo!、Amazonの3チャネルで予約販売を受け付けるのです。味は保証付きです。それに、立科のお米の物語をきちんと提示して、適正な値段設定で販売する。秋の収穫期になって、お米が農家の人のお礼状とともに届けば、心がつながります。しかも、食べて“おいしい!”となれば、毎年予約販売をしても買いますよね。そうすると、農家も補助金に頼らずとも十分に経営が成り立ちます」

楽天、Yahoo!、Amazon、の3チャネルで開設したEVIのEコマース・サイト「EVIショップ」。
楽天、Yahoo!、Amazon、の3チャネルで開設したEVIのEコマース・サイト「EVIショップ」。プレスリリース参照。

たてしなの農畜産物ブランド推進講演会で登壇するEVI加藤孝一。
たてしなの農畜産物ブランド推進講演会で登壇するEVI加藤孝一。

>講演会後の懇親会。この席で、実に衝撃的な話を聞くことになる。
講演会後の懇親会。この席で、実に衝撃的な話を聞くことになる。


EVIの取り組みがつながってきつつある

 EVIの取り組みも4年目を迎えて、全国各地とのコラボレーションでいくつもの環境貢献型商品が生まれ、ネットワークも広がってきている。
 「現在、EVIでクレジットの預託を受けている森林が全国に78あります。都道府県カバー率では77.3%に達しています。それぞれの森でさまざまな困りごとを抱えている現実に触れてきて、その解決に向けた共同の取り組みを通じて生まれてきた商品がいくつも出てきました。例えば木内農園さんの徳島なるとの金太郎さつまいもや奥三河のカラフルトマトなど複数の事例ができてきています。山梨県南アルプス市のサクランボなんかもそうですよね。どこの地域でも、必ず名産品が一つはあるのです。そうした名産品を活用することで地域興しにつなげていく取り組みは各地でされていますが、EVIではそこに“環境貢献型商品”という付加価値をつけていきます。知られていないからこそ、何か一つフックとなる仕掛けが必要なのです。それとともに大事なのが、ただ単に商品開発をするだけでなく、ちゃんと売りにつなげていくこと。さらにそれを仕入れられるようにしてあげて、できるだけ多くの店に並べられるようにすることです。そのために、まずはこのたび開設するeコマース・サイトの3チャネルを通じて販売していって、徐々に取扱量を増やしていき、流通できるくらいの規模になった時点で商社機能を発揮して、仕入れられる道筋を作っていく。ただし、最初は欠品も当たり前という世界でやっていかないと、作り手は中小ばかりだから大変なんです。でも、品物はよいものを作っていますよね」

環境貢献型商品開発事例の紹介
環境貢献型商品開発事例の紹介

 カーボン・オフセットは、クレジットを創出することによって二酸化炭素削減のムーブメントを作るとともに、削減主体である森の現場などを支援する仕組みを作った。しかし、その実態は、2013年12月現在、森林吸収系クレジット全体に占める無効化された(使われた)量の割合は、488,020t-CO2の認証量に対して55,146t-CO2とわずか11.3%にとどまる。クレジットを生み出しても、流通しなければ森の現場にお金が還流していかない。“クレジットの出口”が求められるわけだ。
 同様に、環境貢献型の商品を開発しても、その売り先ができなければ、問題の解決にはつながらない。商品開発だけでなく、その先の道筋をつけていくことこそが大事といえ、そのための取り組みの一つとなるのが、3チャネルのeコマース・サイトの開設。いわば“商品の出口”を開くわけだ。

環境貢献型商品で構成した売り場を提案

 2月10日-12日にかけて東京ビッグサイトで開催された第49回スーパーマーケットトレードショーでは、カーボン・オフセットフォーラム(J-COF)のブースの一角で、EVIがこれまでに出逢った日本各地(福岡、徳島、信州、木曽、蓼科、宮城、秋田ほか)の名産品や未利用食品を活用してつくりあげてきた環境貢献型商品の数々を売り場仕立てで一堂に並べるブース出展を展開した。
 「立派な売り場ができました。徳島特産フェアや信州・木曽フェア、防災の日復興支援キャンペーン【5】など、私たちがこれまで実際に展開してきたキャンペーンの棚割で展示したのです。長野県佐久市の規格外リンゴなどを加工したやわらかフルーツドライ【6】や、うきは市の色の悪くなったナシからつくったスムージーなどの試食・試飲も好評でした。ブースを訪れるバイヤーの皆さんにコンセプトを説明すると、関心を持っていただける方が何人もいらっしゃいました。従来の商品開発では、なるべく安く仕入れて儲けを出すような売り方をしてきましたが、もはやそういう時代じゃないでしょうというアンチテーゼとしての売り場提案です。そうした“日本の環境を守る”ことと結びついた商品がこんなにも世の中に出回ってきているということを具体的な形で示すことで、なんでもっとこうした売り場が作れないのかっていうことを多くの方々に見ていただいたわけです」
 実際の売り場づくりでは、無駄のないメッセージ・ツールの調達で、カルネコシステム【7】がサポートする。

環境貢献型商品を並べた売り場を提案(第49回スーパーマーケットトレードショーにて)。

商品リストは、スーパーのチラシ風にレイアウト。
商品リストは、スーパーのチラシ風にレイアウト。

“森の恵み”を出発点に、“大地の恵み”や“海の恵み”を含む一次産品の総合的な取り扱いをめざす

 冒頭でも触れた「森のめぐみのおとりよせ」は、第4回記事で紹介したように、国産材製品を販売するネット通販サイトとして2013年10月にオープンしている。
 全国各地の森のクレジットの預託を受けるためにEVIが森の現場を訪問した際、国土の7割を森林が占めるにもかかわらず国産木材が使われないがゆえに森の整備が進まない現状に直面したのが直接的なきっかけだった。問題解決の一つの方策として、“木の出口”を設けようというコンセプト。
 今回、3チャネルで開設するeコマース・サイトは、このコンセプトのさらなる拡大をめざす。内容的には「森のめぐみ」に加えて、「大地のめぐみ(農産物)」、「海のめぐみ(海産物)」を含めた一次産品を総合的に取り扱っていく。とともに、EVIサイトからだけでなく、多くの人が知って、利用している3チャネルのブランド力を生かして、露出拡大を図る。
 「EVIの仕組みを使った環境貢献型商品のモデルがいくつも生まれてきて、次のステップは、こうした事例を全国的に展開して、商品を増やしていくことをめざします。商品が増えて取扱量が増えていけば、3チャネルを通じた販売量の増加や実店舗での売り場づくりにつなげていくことも期待できます。この3月からは、環境貢献型の商品開発説明会を全国的に展開しています【8】。環境省が今年度(2015年度)実施する環境貢献型商品開発・販売促進支援のための補助事業【9】に向けて、補助申請から実際のカーボン・オフセット商品の作り方まで、EVIの商品開発事例をもとにご説明しています」
 3月19日に札幌で開催した北海道エリア説明会を皮切りに、24日は北陸エリア説明会(富山市)、25日はキックオフ説明会in東京、4月20日には九州エリア説明会を福岡で、また24日には沖縄エリア説明会を那覇で開催する。
 商品開発の意味や具体的な進め方の説明とともに、できた商品の売り場として活用可能な3チャネルの“商品の出口”を開いて提案していく。その枠組みをぜひ活用して、ともに日本の森と水と空気を守るための一歩を踏み出していこう、そう加藤は力を込めて訴える。

3月25日に開催した、カーボン・オフセット商品開発キックオフ説明会in東京。
3月25日に開催した、カーボン・オフセット商品開発キックオフ説明会in東京。

同説明会で質問に答える加藤。
同説明会で質問に答える加藤。


脚注

【1】森のめぐみのおとりよせ
Eco Value Interchange004「身のまわりで使うあらゆるものを国産木材のものに置き換える」
【2】グリーン&クリーン・リゾートの取り組み
Eco Value Interchange007「妖精が棲む湖のリゾート地から、森林保護とCO2削減の取り組みモデルを全国に発信!」 -女神湖グリーン&クリーン・リゾート構想-
【3】たてしなの農畜産物ブランド推進講演会開催! ―2015年3月7日(土)立科町農畜産物ブランド推進協議会主催
http://www.evic.jp/evi/top/images/info/file_581.pdf
【4】特Aランクのお米(米の食味ランキング)
 財団法人日本穀物検定協会が食味評価試験を実施して公開する、米の食味ランキング。炊飯した白米を実際に試食して評価している。
 昭和46年産の米から毎年全国規模の産地品種について実施し、複数産地コシヒカリのブレンド米を基準にして、良好なものを「A」、特に良好なものを「特A」などとランク付けしている。
【5】防災の日復興支援キャンペーン
Eco Value Interchange003「わが身の安全と、被災地支援とをつなげる試み ─『ともに生きる!』ひろげよう防災の輪!復興支援キャンペーン─」
【6】やわらかフルーツドライによる未利用食品の活用事例
Eco Value Interchange006「カーボン・オフセットを付けて、未利用食材や特産品の商品価値を向上」
【7】カルネコシステム
 カルビー株式会社カルネコ事業部が提供する、無駄のないメッセージ・ツールの調達システム。
 POP(店頭販促)などの販促ツールを、店舗へ一方的に送り付けるのではなく、店側のニーズに応じてオンデマンドで受注を受け付け、生産・配送するシステム。もともと同社の商品を小売店で販売する際、値引き競争に代わる手段として、商品の価値を伝えるメッセージ型のプロモーション(販売戦略)を展開しようと立ち上げたもの。現在は、自社のみならず、他企業にもサービスを提供している。
【8】EVI推進協議会主催「カーボン・オフセット商品開発説明会」
http://www.evic.jp/evi/cof/index.html
【9】環境省の補助事業
 環境省では、「平成27年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(環境貢献型商品開発・販売促進支援事業)」に係る補助事業者(執行団体)の募集を実施。クレジットを活用した個別商品の開発や販売促進に要する経費を間接的に補助する。http://www.env.go.jp/press/100311.html

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  1. 001「豚ふん堆肥燃料でカーボンオフセット? ー削減系クレジットで日本の第一次産業を支える」
  2. 002「さらなるCO2削減につながる事業にJ-VERを活かして」 -南アルプス市のカーボンオフセット付き農産物と市民参加のわくわくエコチャレンジ-
  3. 003「わが身の安全と、被災地支援とをつなげる試み」 -『ともに生きる!』ひろげよう防災の輪!復興支援キャンペーン-
  4. 004「身のまわりで使うあらゆるものを国産木材のものに置き換える」 -木の出口のための“森のめぐみのおとりよせ”のラインアップ-
  5. 005「カーボンオフセットでつながる企業と人 ―森を支える仕組みづくりを育む『EVI環境マッチングイベント2013』」
  6. 006「カーボン・オフセットを付けて、未利用食材や特産品の商品価値を向上」
  7. 007「妖精が棲む湖のリゾート地から、森林保護とCO2削減の取り組みモデルを全国に発信!」 -女神湖グリーン&クリーン・リゾート構想-
  8. 008「小さな一歩を集積して、大きな力をともにつくりあげるための新たな仕組みづくりをめざして」 -環境マッチングイベント2014報告記・その1-
  9. 009「点を線につなげ、線を面に広げる取り組みをめざして」 -環境マッチングイベント2014報告記・その2-
  10. 010「日本の森と水と空気を守りに、EVIは今日も東へ西へ…」
  11. 011「“未来の大人たちは、環境を守る”に向けて、今なすべきこと」 -EVI読み聞かせ絵本シリーズのめざす、環境教育の形-
  12. 012「環境貢献型商品を開発するだけでなく、売りにつなげるための場と仕組みをつくる」
  13. 013「EVI環境マッチングイベント2015へのいざない」
  14. 014「EVIを活用した、水田農業による地域活性化の取り組みと環境貢献」 -エコファームHOSOYAの取り組みより-
  15. 015「地域密着の食材屋だからできる、“地域の台所”としての役割」 -「第5回カーボン・オフセット大賞」の特別賞を受賞したEVIがサポートする環境貢献の事例-
  16. 016「未利用木材を活用した立体パズルの開発で、森林管理&地域活性化をめざす」 -株式会社トライウッド&株式会社アキ工作社と取り組んだ3社共同の事例-
  17. 017「環境貢献型商品の開発に向けて、ラベルデザインや資材調達などトータルにサポート」 -信州・松代、真田十万石の歴史を生かすNPO法人杏っ子の里ハーモアグリとの協働事例-
  18. 018「日本初!CO2排出ゼロをめざす道の駅『にちなん日野川の郷(ひのがわのさと)』(鳥取県日南町)がオープン!」
  19. 019「プロモーション活動を通じた環境貢献の取り組みをサポート」 -POP・外装材の製作時CO2排出量を全量カーボン・オフセットするカルネコの “CO2排出ゼロ宣言”-
  20. 020「“もっと身近に”をさらに一歩進めるために、“私たちにできること”をめざして」 -EVI環境マッチングイベント2016実施報告(1)-
  21. 021「これまでのマッチングイベントと一味違う、環境パフォーマンス&環境落語の披露」 -EVI環境マッチングイベント2016実施報告(2)-
  22. 022「高校生たちによるカーボン・オフセットの取り組み(1)」 -愛知県立南陽高等学校 Nanyo Company部の事例-
  23. 023「高校生たちによるカーボン・オフセットの取り組み(2)」 -東京都立つばさ総合高校「ISO委員会」の事例-
  24. 024「いよいよビッグネームがカーボン・オフセットにも参入」 -EVIのコラボで森林支援を組み込んだソフトバンクの『自然でんき』-
  25. 025「EVI環境マッチングイベント2017、開催へ」 -「私たちにできること。」に向けたさまざまなヒントを提示-

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