「Eco Value Interchange」バックナンバー
2015年4月13日(月)、楽天、Yahoo!、Amazonの3チャネルで、EVIのEコマース・サイトが一斉にオープンした。名付けて、「EVIショップ」。いわゆるネット通販サイトだ。扱う商品は、EVIが預託を受ける全国各地の森林中心のオフセット・クレジットを付与した環境貢献型商品。現在は、「森のめぐみのおとりよせ」【1】で取り扱っている商品を掲載しているが、今後、より幅広い商品を扱っていく予定だ。ここでの取り扱いを検討している商品の一つに、長野県立科町産のお米がある。
「長野県の立科町とは、グリーン&クリーン・リゾートの取り組み【2】でご協力させていただいていますが、去る3月7日には同町主催の『たてしなの農畜産物ブランド推進講演会』の講師の一人として招かれました。講演会自体も参加者の皆さんが盛り上がってくれてよい会になりましたが【3】、終了後の懇親会の時に農業部会の委員長が教えてくださった話がとても印象的でした」
そう話すのは、EVI推進協議会の加藤孝一。
部会長曰く、立科町では、日中と夜の寒暖差が激しいこともあって、特Aランク【4】に認定される最上級のお米が穫れるという。特Aランクとは、新潟県魚沼産のコシヒカリをはじめとする有名ブランド米などと同じ、最高ランクだ。ところが、収穫までにかかるコストは1俵(60kg)当たり1万2-3千円ほどになるが、買取価格は1万800円でしかない。つまり、逆ザヤの状態なわけだ。
「これを聞いたとき、愕然としたんですよ。おかしかろう!って。お米だから、補助金もあるのでそれでもやっていけるのでしょうけど、健全ではないですよね。そこで私が提案したのは、4月から出店するEVIのeコマース・サイトでの販売です。誰もが知っている、楽天、Yahoo!、Amazonの3チャネルで予約販売を受け付けるのです。味は保証付きです。それに、立科のお米の物語をきちんと提示して、適正な値段設定で販売する。秋の収穫期になって、お米が農家の人のお礼状とともに届けば、心がつながります。しかも、食べて“おいしい!”となれば、毎年予約販売をしても買いますよね。そうすると、農家も補助金に頼らずとも十分に経営が成り立ちます」
楽天、Yahoo!、Amazon、の3チャネルで開設したEVIのEコマース・サイト「EVIショップ」。プレスリリース参照。
EVIの取り組みも4年目を迎えて、全国各地とのコラボレーションでいくつもの環境貢献型商品が生まれ、ネットワークも広がってきている。
「現在、EVIでクレジットの預託を受けている森林が全国に78あります。都道府県カバー率では77.3%に達しています。それぞれの森でさまざまな困りごとを抱えている現実に触れてきて、その解決に向けた共同の取り組みを通じて生まれてきた商品がいくつも出てきました。例えば木内農園さんの徳島なるとの金太郎さつまいもや奥三河のカラフルトマトなど複数の事例ができてきています。山梨県南アルプス市のサクランボなんかもそうですよね。どこの地域でも、必ず名産品が一つはあるのです。そうした名産品を活用することで地域興しにつなげていく取り組みは各地でされていますが、EVIではそこに“環境貢献型商品”という付加価値をつけていきます。知られていないからこそ、何か一つフックとなる仕掛けが必要なのです。それとともに大事なのが、ただ単に商品開発をするだけでなく、ちゃんと売りにつなげていくこと。さらにそれを仕入れられるようにしてあげて、できるだけ多くの店に並べられるようにすることです。そのために、まずはこのたび開設するeコマース・サイトの3チャネルを通じて販売していって、徐々に取扱量を増やしていき、流通できるくらいの規模になった時点で商社機能を発揮して、仕入れられる道筋を作っていく。ただし、最初は欠品も当たり前という世界でやっていかないと、作り手は中小ばかりだから大変なんです。でも、品物はよいものを作っていますよね」
カーボン・オフセットは、クレジットを創出することによって二酸化炭素削減のムーブメントを作るとともに、削減主体である森の現場などを支援する仕組みを作った。しかし、その実態は、2013年12月現在、森林吸収系クレジット全体に占める無効化された(使われた)量の割合は、488,020t-CO2の認証量に対して55,146t-CO2とわずか11.3%にとどまる。クレジットを生み出しても、流通しなければ森の現場にお金が還流していかない。“クレジットの出口”が求められるわけだ。
同様に、環境貢献型の商品を開発しても、その売り先ができなければ、問題の解決にはつながらない。商品開発だけでなく、その先の道筋をつけていくことこそが大事といえ、そのための取り組みの一つとなるのが、3チャネルのeコマース・サイトの開設。いわば“商品の出口”を開くわけだ。
2月10日-12日にかけて東京ビッグサイトで開催された第49回スーパーマーケットトレードショーでは、カーボン・オフセットフォーラム(J-COF)のブースの一角で、EVIがこれまでに出逢った日本各地(福岡、徳島、信州、木曽、蓼科、宮城、秋田ほか)の名産品や未利用食品を活用してつくりあげてきた環境貢献型商品の数々を売り場仕立てで一堂に並べるブース出展を展開した。
「立派な売り場ができました。徳島特産フェアや信州・木曽フェア、防災の日復興支援キャンペーン【5】など、私たちがこれまで実際に展開してきたキャンペーンの棚割で展示したのです。長野県佐久市の規格外リンゴなどを加工したやわらかフルーツドライ【6】や、うきは市の色の悪くなったナシからつくったスムージーなどの試食・試飲も好評でした。ブースを訪れるバイヤーの皆さんにコンセプトを説明すると、関心を持っていただける方が何人もいらっしゃいました。従来の商品開発では、なるべく安く仕入れて儲けを出すような売り方をしてきましたが、もはやそういう時代じゃないでしょうというアンチテーゼとしての売り場提案です。そうした“日本の環境を守る”ことと結びついた商品がこんなにも世の中に出回ってきているということを具体的な形で示すことで、なんでもっとこうした売り場が作れないのかっていうことを多くの方々に見ていただいたわけです」
実際の売り場づくりでは、無駄のないメッセージ・ツールの調達で、カルネコシステム【7】がサポートする。
冒頭でも触れた「森のめぐみのおとりよせ」は、第4回記事で紹介したように、国産材製品を販売するネット通販サイトとして2013年10月にオープンしている。
全国各地の森のクレジットの預託を受けるためにEVIが森の現場を訪問した際、国土の7割を森林が占めるにもかかわらず国産木材が使われないがゆえに森の整備が進まない現状に直面したのが直接的なきっかけだった。問題解決の一つの方策として、“木の出口”を設けようというコンセプト。
今回、3チャネルで開設するeコマース・サイトは、このコンセプトのさらなる拡大をめざす。内容的には「森のめぐみ」に加えて、「大地のめぐみ(農産物)」、「海のめぐみ(海産物)」を含めた一次産品を総合的に取り扱っていく。とともに、EVIサイトからだけでなく、多くの人が知って、利用している3チャネルのブランド力を生かして、露出拡大を図る。
「EVIの仕組みを使った環境貢献型商品のモデルがいくつも生まれてきて、次のステップは、こうした事例を全国的に展開して、商品を増やしていくことをめざします。商品が増えて取扱量が増えていけば、3チャネルを通じた販売量の増加や実店舗での売り場づくりにつなげていくことも期待できます。この3月からは、環境貢献型の商品開発説明会を全国的に展開しています【8】。環境省が今年度(2015年度)実施する環境貢献型商品開発・販売促進支援のための補助事業【9】に向けて、補助申請から実際のカーボン・オフセット商品の作り方まで、EVIの商品開発事例をもとにご説明しています」
3月19日に札幌で開催した北海道エリア説明会を皮切りに、24日は北陸エリア説明会(富山市)、25日はキックオフ説明会in東京、4月20日には九州エリア説明会を福岡で、また24日には沖縄エリア説明会を那覇で開催する。
商品開発の意味や具体的な進め方の説明とともに、できた商品の売り場として活用可能な3チャネルの“商品の出口”を開いて提案していく。その枠組みをぜひ活用して、ともに日本の森と水と空気を守るための一歩を踏み出していこう、そう加藤は力を込めて訴える。
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