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「Eco Value Interchange」バックナンバー

0042013.11.05UP身のまわりで使うあらゆるものを国産木材のものに置き換える-木の出口のための“森のめぐみのおとりよせ”のラインアップ-

国産木材が使われないから、日本の林業は活力を失っていく──求められる“木の出口”

“木の出口”構想による森への資金環流の仕組み。商品の購入が森林保護支援のサイクルを回すことにつながる。[1]
“木の出口”構想による森への資金環流の仕組み。商品の購入が森林保護支援のサイクルを回すことにつながる。[2]
“木の出口”構想による森への資金環流の仕組み。商品の購入が森林保護支援のサイクルを回すことにつながる。

 まだ記憶に新しい今夏の猛暑。連日、厳しい真夏日が続き、国内観測史上の最高気温も更新された。各地で相次いだ豪雨や竜巻による被害、季節外れの台風襲来など、まさに近年の異常気象を実感する今日この頃。原因として指摘される地球温暖化の防止対策としては、CO2を中心にした温室効果ガスの排出削減とともに、森林などによる吸収・固定の促進が効果的となる。
 EVI(Eco Value Interchange)【1】の取り組みは、こうした地球温暖化防止対策につなげるため、日本各地の森林を支援しようというものだ。具体的な手法としては、主にカーボンオフセット・クレジットの購入を通じた資金的環流の仕組みをつくること。2012年12月現在、累計で約34万トンが認証されたJ-VERクレジットは、わずか4万トンあまり(12.5%)しか無効化されていない。そのクレジットの流通を進めていくことで、森林整備のための資金を森にまわしていこうというわけだ。EVIでは、これを“クレジットの出口”と呼んで、クレジット保有者である森林関係者と、クレジットを購入して森林支援型プロモーションを実現したい企業、そして森の支援に協力したい消費者の3者を結びつけるためのプラットフォームの提供をめざしている。
 一方で、全国各地の森の現場を訪れていると、もう一つの深刻な問題に直面する。それが、未利用木の問題だ。昭和30年代に9割以上あった日本の木材自給率は、現在は7割以上を海外からの輸入に依存している。それだけ国産木材の利用量が激減していて、適齢伐期になった成木でもコストが合わずに伐り出せないまま放置されることが多くなっているのに加えて、育林整備で伐られる間伐材も搬出費用が出ないから林内に放置されて朽ちるままになっていることが多い。間伐材売却による収入が途絶えることで、森林経営はますます採算が悪化する。
 こうした未利用木材の需要開発を進めることで、成木や間伐材を伐り出して、売ってお金に換えていくという循環を作り出し、山に入る資金を確保しようというのが、EVIのめざす“木の出口”構想だ。

『森のめぐみのおとりよせ』サイトのTOP画面。さまざまな国産木材製品がラインアップされている。
『森のめぐみのおとりよせ』サイトのTOP画面。さまざまな国産木材製品がラインアップされている。

 「山の木は植えられた後、育つ過程でCO2を吸収して、自らの体の中に固定してくれます。この時、育った木と木の間が詰まりすぎないように間引いていくことで、より多くのCO2を吸収するようになります。こうして間引かれた間伐材や、成木を山から運び出し、加工して製品として活用するという連鎖が正しく機能していれば、森は健全に維持されるのですが、残念ながら日本の森の現状はそうはなっていません。伐った木を運び出す費用よりも販売価格の方が安いと言われる今、日本の森には、伐期を迎えても伐り出せない木や、伐ったまま放置されている間伐材がたくさんあります。何十年もかかって育った“森のめぐみ”をそのまま放置はできません。何らかの形で製品化し、命を吹き込んでいって森に資金を環流することができれば、より豊かな森が育っていきます。つまり、今日本の森に必要なのは、“木の出口”なんです」
 EVI推進協議会の加藤孝一は、“木の出口”になることをめざして立ち上げた国産木材製品購入サイト『森のめぐみのおとりよせ』について、そう説明する。

時間と距離の不利を超えるための仕組みをいかに構築するか

 木の出口となる『森のめぐみのおとりよせ』のサイトは、キッチン用品、文具、雑貨、子ども用品、ファッションなどのカテゴリー別にさまざまな国産木材製品を紹介・販売するサイトだ。現在はまだサイトでは紹介されていないものの、加工品だけでなく、テーブル用の天板などに使えるような大きいサイズの無垢の板材などを扱う「素材屋」も同サイトを通じて取り扱っていく予定だ。
 「EVIの『森のめぐみのおとりよせ』を通じて実現したいのは、私たちが身のまわりで使っているあらゆるものをご提供することです。今はまだ、限られた製品しかご提供できていませんが、将来的にはあらゆるものを扱っていきたいのです。環境を変えるには、一番裾野が広く、人数の多い、消費のところにアプローチするのが最も効果的です。われわれ国民一人一人が、自分の身のまわりのものを、プラスチック製や輸入木材製のものから、国産木材製のものに置き換えていければ、国産木材の需要は劇的に変わります。そんなことのお役に立ちたいというのが最大の目的です。このために、木材加工場のネットワークを全国の津々浦々に張り巡らせていこうという構想です。日本の森の多くは山の奥深くに立地しています。物を売るには時間的にも距離的にも非常に不利な条件にあるわけです。何とかして、その不利を補っていく仕組みを作っていかないと、国産木材はなかなか使われません。まさに、今の時代はそういう状態なんですね。この先、需要の開発が進んで供給サイドとそれなりのバランスがとれるようになったときに、必要なものを連鎖的にお届けすることができるような全国的なネットワークを構築できれば、それほど物流費をかけずに物をお届けする仕組みができるんじゃないかと思うのです」
 そんな大風呂敷のような構想も、本業のカルネコ事業部【2】でPOP受注生産を立ち上げて大幅なムダとコストの削減を実現した経験を持つ加藤だけに、満更、絵空事だけでは終わらない予感がしないでもない。

『森のめぐみのおとりよせ』のカタログで紹介している国産木材製品の一例[1] 『森のめぐみのおとりよせ』のカタログで紹介している国産木材製品の一例[2] 『森のめぐみのおとりよせ』のカタログで紹介している国産木材製品の一例[3]

『森のめぐみのおとりよせ』のカタログで紹介している国産木材製品の一例。木製家具(左図)や台所用品などの実用品から、子ども用品(中央図)やペット用品などさまざまな国産木材製品をラインナップ。無垢の板などを扱う“素材屋”(右図)など、取り扱う範囲や種数も今後順次拡大していく予定だ。

 今はまだできあいのものを販売するネットショップでしかないが、より多くの木材加工場が集まるようになっていけば、いろんなことができるようになると期待を寄せる。
 「ある人が、こんなコップを作りたいと絵に描いて『森のめぐみのおとりよせ』に寄せてくれたとしたときに、国産木材を使って製作してくれるような加工場さんとつながって、ちゃんと木で彫った世界に一つだけのオリジナルのコップができる、そんなことを構想しています。すべての加工の方法がこのネットワークの中に入ってくれば、ほしいと思ったものがちゃんと手に入る仕組みを提供することができますよね。それを知った人たちが、『1つくらい買ってもいいね』と思ってくれたとします。しかも、子どもや孫が小学校にあがるときには机を注文してくれたりと、いろんなタイミングで家具や日用品、贈答品を注文してくれたりすれば、1つの注文が2つ、10、100…と増えていく可能性は大いにあります。それとともに、全国の木材加工場に参加してもらって、自分の生まれた場所の木材で自分の気に入った加工をしてもらうという自然な流れを、ぜひとも実現していきたいと考えています。ともかく、まずはわれわれのできるところから始めて、それに共感してくれる人たちが集まってきて、今ようやくここまで漕ぎつけています。やったらできるかも知れないなっていう人が、できそうだという人と出会っていったら、本当にできることがある。それが、この2年半のできごとです」

森の現場で、木材加工場を訪れるEVI推進協議会の加藤孝一。[1] 森の現場で、木材加工場を訪れるEVI推進協議会の加藤孝一。[2] 森の現場で、木材加工場を訪れるEVI推進協議会の加藤孝一。[3]

森の現場で、木材加工場を訪れるEVI推進協議会の加藤孝一。

買い物のついでに、思い入れの持てる森に対する支援のできる機能を実装

商品詳細ページ。商品情報の直下に、『みんなで日本の森を守ろう』というバナーが設置されている。
商品詳細ページ。商品情報の直下に、『みんなで日本の森を守ろう』というバナーが設置されている。

 国産木材製品の販売とともに今回のサイトで力を入れたのが、全国各地の森に対して、支援の気持ちを送る機能を実装すること。ちょうどお店のレジ脇に置かれた募金箱のように、買い物に合わせて日本の森を守るための寄付が気軽にできる仕組みをつくろうというわけだ。  各商品の詳細画面を開くと、『みんなで日本の森を守ろう』という鮮やかな緑色のバナーが表示される。このバナーをクリックすると、日本地図上に支援対象の森がプロットされた支援先一覧のページが別画面で立ち上がるようになっている。地図上の木のアイコンにマウスを乗せると、その森の詳細情報が表示され、森の特徴や取り組みの概要を確認することができる。

森の支援先一覧のページ各地の森の詳細情報
バナーをクリックすると表示される、森の支援先一覧のページ(左図)。日本地図は拡大・縮小やドラッグで移動して、詳しい位置情報を確認することができる。地図上の木のアイコンの上にマウスを乗せると、左側エリアに各地の森の詳細情報が表示される(右図)。

 支援金額は、1口10円から選べるから、買い物ついでにお釣りを寄付する感覚で、故郷の森や思い入れの持てる森を選んで支援することができる仕組みになっている。森は複数選んでそれぞれに任意の口数の寄付を送ることができるし、買い物をするごとに別の森を選択することもできる。

 「木が困ってきた、山が困ってきたというのは、ここ何十年もかかって困ってきていることです。それを解決するためには、この先何十年も支援をしていかないと、多分元には戻らないんです」
 そんな覚悟を持ちつつ、森の支援に取り組んでいきたいと話す加藤だ。


注釈

【1】EVI(Eco Value Interchange)
 2010年2月にカルビー株式会社カルネコ事業部が開発したウェブ・プラットフォームシステム。EVIとは、Eco Value Interchangeの頭文字を取ったもので、文字通り“エコの価値”を交換するためのプラットフォームとして、日本の森と水と空気の保全を目的に立ち上げたもの。取り扱う“エコの価値”はJ-VERなどがあり、使途の明瞭性を担保した支援を実現する。
 公式サイト:http://www.evic.jp/evi/top.jsp
【2】カルビー株式会社カルネコ事業部
 POP(店頭販促)などの販促ツールをオンデマンドで受注生産・配送するシステムを運用。もともと同社の商品を小売店で販売する際、値引き競争に代わる手段として、商品の価値を伝えるメッセージ型のプロモーション(販売戦略)を展開しようと立ち上げたもの。現在は、自社のみならず、顧客企業にもサービスを提供している。

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バックナンバー

  1. 001「豚ふん堆肥燃料でカーボンオフセット? ー削減系クレジットで日本の第一次産業を支える」
  2. 002「さらなるCO2削減につながる事業にJ-VERを活かして」 -南アルプス市のカーボンオフセット付き農産物と市民参加のわくわくエコチャレンジ-
  3. 003「わが身の安全と、被災地支援とをつなげる試み」 -『ともに生きる!』ひろげよう防災の輪!復興支援キャンペーン-
  4. 004「身のまわりで使うあらゆるものを国産木材のものに置き換える」-木の出口のための“森のめぐみのおとりよせ”のラインアップ-
  5. 005「カーボンオフセットでつながる企業と人 ―森を支える仕組みづくりを育む『EVI環境マッチングイベント2013』」
  6. 006「カーボン・オフセットを付けて、未利用食材や特産品の商品価値を向上」
  7. 007「妖精が棲む湖のリゾート地から、森林保護とCO2削減の取り組みモデルを全国に発信!」 -女神湖グリーン&クリーン・リゾート構想-
  8. 008「小さな一歩を集積して、大きな力をともにつくりあげるための新たな仕組みづくりをめざして」 -環境マッチングイベント2014報告記・その1-
  9. 009「点を線につなげ、線を面に広げる取り組みをめざして」 -環境マッチングイベント2014報告記・その2-
  10. 010「日本の森と水と空気を守りに、EVIは今日も東へ西へ…」
  11. 011「“未来の大人たちは、環境を守る”に向けて、今なすべきこと」 -EVI読み聞かせ絵本シリーズのめざす、環境教育の形-
  12. 012「環境貢献型商品を開発するだけでなく、売りにつなげるための場と仕組みをつくる」
  13. 013「EVI環境マッチングイベント2015へのいざない」
  14. 014「EVIを活用した、水田農業による地域活性化の取り組みと環境貢献」 -エコファームHOSOYAの取り組みより-
  15. 015「地域密着の食材屋だからできる、“地域の台所”としての役割」 -「第5回カーボン・オフセット大賞」の特別賞を受賞したEVIがサポートする環境貢献の事例-
  16. 016「未利用木材を活用した立体パズルの開発で、森林管理&地域活性化をめざす」 -株式会社トライウッド&株式会社アキ工作社と取り組んだ3社共同の事例-
  17. 017「環境貢献型商品の開発に向けて、ラベルデザインや資材調達などトータルにサポート」 -信州・松代、真田十万石の歴史を生かすNPO法人杏っ子の里ハーモアグリとの協働事例-
  18. 018「日本初!CO2排出ゼロをめざす道の駅『にちなん日野川の郷(ひのがわのさと)』(鳥取県日南町)がオープン!」
  19. 019「プロモーション活動を通じた環境貢献の取り組みをサポート」 -POP・外装材の製作時CO2排出量を全量カーボン・オフセットするカルネコの “CO2排出ゼロ宣言”-
  20. 020「“もっと身近に”をさらに一歩進めるために、“私たちにできること”をめざして」 -EVI環境マッチングイベント2016実施報告(1)-
  21. 021「これまでのマッチングイベントと一味違う、環境パフォーマンス&環境落語の披露」 -EVI環境マッチングイベント2016実施報告(2)-
  22. 022「高校生たちによるカーボン・オフセットの取り組み(1)」 -愛知県立南陽高等学校 Nanyo Company部の事例-
  23. 023「高校生たちによるカーボン・オフセットの取り組み(2)」 -東京都立つばさ総合高校「ISO委員会」の事例-
  24. 024「いよいよビッグネームがカーボン・オフセットにも参入」 -EVIのコラボで森林支援を組み込んだソフトバンクの『自然でんき』-
  25. 025「EVI環境マッチングイベント2017、開催へ」 -「私たちにできること。」に向けたさまざまなヒントを提示-

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