「Eco Value Interchange」バックナンバー
2015年3月10日、高知県朝倉東町の「朝倉くすのき保育園」の年中・年長の子どもたち約40人を前に、『EVI読み聞かせ絵本』シリーズ(2014年環境省発行、企画:カルビー株式会社カルネコ事業部、EVI推進協議会)の贈呈式が行われた。
「みんな、カルビーって知っている?」「そう、かっぱえびせんを作っている会社です」「今日は、そのカルビーの加藤さんが、東京からはるばる海を越えて来てくださいました。元気にご挨拶しましょう!」
保育士さんからそんな紹介を受け、EVI推進協議会の加藤孝一(カルビー株式会社カルネコ事業部 事業部長)が子どもたちの前に立つ。
「今、ご紹介いただきました、加藤でございます。皆さんに会いたくて、海の上を歩いてきました!」
「え?! すげえ! ぼくも歩けるようになれるかな?」「歩きた~い!」
ジョークのつもりで何気なく発した一言が、意外な反響を呼ぶ。子どもたちの真剣な反応にどぎまぎする加藤だ。
気を取り直して、「こんにちは!」
子どもたちからも、「こ~んにちは~っ!!」と元気で大きな声が響いた。
「子どもたち40人から響くその声は、もう吹き飛ばされるくらいの音圧として届きました。本当、音圧です。ば~んという感じで。それだけでも、来てよかったなあと心から思いましたね」
加藤は、当日の様子をそう振り返る。
この日の“贈呈式”は、高知県環境部林業環境政策課が仕掛けたもの。『EVI読み聞かせ絵本』4冊組セットを、県内の全幼稚園・保育所・認定こども園350施設に無償提供するのに当たって、セレモニーとして子どもたちに直接届ける機会を設定してくれたわけだ。
きっかけは、2014年12月に四国圏カーボン・オフセット推進協議会が開催した「カーボンオフセット マッチングイベント in Kochi」で、EVI読み聞かせ絵本の紹介とブース展示を行ったこと。県内で配りたいとの申し入れがあり、とんとん拍子に、今回の贈呈式へとつながった。
四万十ヒノキをふんだんに使った保育室で、加藤から子どもたちに向けて、日本の森林の現状や木がいろいろなところに使われていることを話した後、子どもたちの手に直接絵本を渡す贈呈式。さらに、保育士さんによる絵本の読み聞かせの時間を取った。その後は、2階の大広間に場を移して、子どもたちと先生方、加藤が全員揃っての写真撮影で、この日の会は幕を閉じた。
EVI読み聞かせ絵本のお披露目は、2014年11月に開催した「EVIマッチングイベント2014」でのこと。EVI推進協議会のデザイナー・菅谷健夫がEVI読み聞かせ絵本について紹介し、制作を担当したクリエイティブオフィス エジソンの津久井香乃古さんが、出席者200名を前に、実際に絵本の読み聞かせを実演してみせた。
「私たちはたぶん、小さいときは絵本を見て育ったはずです。こういう環境のイベントで絵本を紹介するのはなかなかないかと思うんですけれども、
私たちEVIは、未来の子どもたちのために、子どもたちの未来のために、環境教育の重要さを以前から感じていました。本日、4冊の絵本が発行されました。ぜひ、皆様に広めていただきたいと思います。絵本の中には、たくさんの動物たちが登場してきます。これは、私たちが知り合った木工所さんに、間伐材を使って製作していただいたものです。他の絵本には、全国の森の写真も入っています。人をつないで、環境を守っていくことが私たちの使命と思っています。どうぞ、子どもに立ち返った想いで、読み聞かせ絵本の世界にごゆっくり浸かっていただければと思います」
なお、著者のそうまこうへいさんからは、制作に当たって次のようなメッセージが寄せられた。
「子どもたちだけでなく、子どもたちといっしょにお父さんやお母さんも見てほしい、そういう気持ちで絵本作りをしています。いっしょに見て、話して、一人でも多くの子どもたちが『木っていいなぁ』『森っていいなぁ』という気持ちになって、その気持ちが日本の森のことを考えるきっかけになればと思います。木が太陽の光を浴びて大きく育っていくように、子どもたちの心の中の“日本の森と水と空気を守る小さな芽”もすくすく育っていくように願っています」
大人たち向けにEVIの活動を理解してもらおうとすると、相当ていねいに説明してようやく少しわかってもらえるというのが実情だ。子どもたちに向けて、読み聞かせ絵本などの体験を通じて、森のすばらしさや大変な状況を伝えていくと、素直に吸収してくれる。と同時に大人たちにとっても、そんな子どもたちのピュアな感性から気づき、感じることがあるはずだ。絵本の読み聞かせを通じて、そんな効果が期待できると加藤は言う。
「子どもたちに伝えるときに、一番苦労したのが、森林面積が国土に占める割合。『日本の国土の7割が森です』ということも、大人には簡単に言えますが、保育園児はまだ割合を習っていないから、通じないわけです。『10人いるうちの7人が森みたいなもので…』とか、『う~んっ、いっぱいが森!!』なんて言って…。難しいことはわからなくても、感じてもらえるものはあったんじゃないでしょうか」
今回の高知県の事例で一つのプロトタイプができ、他自治体等での活用へとつながっていければ、絵本を通じた森や木への理解の広がりが期待できる。
再び2014年11月のEVIマッチングイベント2014の初お披露目の場面に戻ろう。この日、最後のセッションで加藤が話したのは、“未来の大人たち”に託し、伝えていく今の大人たちの思いと行動の大切さだ。
「未来は、私たちじゃないんですね、本当は。今生まれたばかりの子どもたちから、幼稚園や小学校の子どもたちの中に、どういうふうにこの思いをつないでいくのかということだろうと思います。“未来の大人たちは、きっと環境を守る”、そんな社会にしたいと思います。すでに地球温暖化は身近な困りごとを数多く引き起こしています。今、この時点から私たちにできることから着手しなくてはなりません。ともに、一歩前へ」
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