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「Eco Value Interchange」バックナンバー

0162016.01.19UP未利用木材を活用した立体パズルの開発で、森林管理&地域活性化をめざす-株式会社トライウッド&株式会社アキ工作社と取り組んだ3社共同の事例-

木材以外の素材でできた製品の“木質化”をめざして

EVIは環境貢献型商品開発に向けてアキ工作社様、トライ・ウッド様を訪問!(2015年5月14日15日大分県国東~日田)
EVIは環境貢献型商品開発に向けてアキ工作社様、トライ・ウッド様を訪問!(2015年5月14日15日大分県国東~日田) (※クリックするとPDFファイルが開きます)

 去る2015年12月17日、九州の大分県国東市で段ボール・クラフト「d-torso(ディー・トルソー)」の製造・販売を行っている株式会社アキ工作社は、株式会社トライ・ウッド(大分県日田市上津江町の総合林業会社)およびカルビー株式会社カルネコ事業部(事業部長加藤孝一)との3社共同で開発した環境貢献型商品『森の木組みシリーズ』の販売についてプレスリリースを行った。
 第1段となった、「もりのたか(鷹)」「きのこのおやこ」「もりのきんぎょ(金魚)」の3作品は、それぞれ、空・地・水を象徴する作品で、“日本の森と水と空気を守る”EVIの活動に合わせたラインナップになっている。しかも、EVIのシステムを使ったカーボンオフセット商品として、商品価格の1%が、森林保全のために活用される。
 「d-torsoシリーズは、もともとデザインを担当するアキ工作社が段ボールの板をレーザーカッターで部品に切り抜いて、組み立てる立体クラフトとして開発したシステムです。そのデザインを生かしつつ、素材を段ボールから、木製の板材に替えて作ろうというのが、d-torso『森の組み木シリーズ』のコンセプトです。つまり、これまで紙などの素材でなければできないとされていた製品を木製素材に替えて商品化するというテーゼなのです。それによって、少しでも国産木材のアピールや利用促進につなげようというわけです」
 EVI推進協議会の加藤孝一は、d-torso『森の組み木シリーズ』の開発のねらいについてそう話す。

 今回は、構想3年・商品化実現までさらに7か月を経てようやく本格販売に漕ぎつけた、この『森の組み木シリーズ』について紹介したい。

Google本社のエントランスにも展示されている「d-torso」シリーズ

 カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogle本社のエントランスには、高さ3mのクマと体長2.5mのヘラジカの実物大模型が飾られている。2012年春に設置されたこれらの作品は、株式会社アキ工作社が設計・試作したデータをもとに、ニューヨークにある木工房で加工したものを陸送し、現地で組み立てたものだという。
 1998年に東京で創業したアキ工作社は、現在は社長の松岡勇樹さんの出身地である大分県国東市の廃校となった小学校を拠点に活動している。主力商品となっているのが、段ボール立体パズル「d-torso」シリーズだ。立体イメージをCTスキャンのように輪切状に切断・分解して、それらを再構築する。細密レーザー加工によって切り出した部品は、接着剤を使わなくても簡単に立体クラフトへと組み立てることができる。国内外の美術館やデザインセレクトショップなどで販売している。
 これまで、市場リクエストに応えながら、ディスプレイやインテリア、特殊パッケージ、キャラクター雑貨、照明器具、ロボットなどへとデザインの領域を広げながら商品を開発してきた。100%植物由来の生分解性プラスチック(バイオプラスチック)を射出成形して作った「d-torso green(ディー・トルソー・グリーン)」や、国東半島の希少野生動物をデザインし売上の一部を国東半島の自然環境保護のため寄付する『国東シリーズ』など、環境保全を意識したシリーズもリリースしてきた。d-torso『森の組み木シリーズ』も、同社のこうした姿勢に合致する新シリーズの一つといえる。

未利用木材を活用した立体パズル d-torso『森の木組みシリーズ』

未利用木材を活用した立体パズル d-torso『森の木組みシリーズ』の製品開発秘話

 d-torsoの木質化による『森の木組みシリーズ』の製品開発を担当したのが、同じ北部九州の大分県日田市上津江町にある株式会社トライ・ウッド。有明海に注ぐ一級河川・筑後川の源流域にある山林地帯に立地する林業総合会社だ。主な事業内容は、山の仕事を行う林産事業、山から伐採・搬出した木材を住宅用建材などに加工する木材加工事業、林業機械の販売・メンテナンスなど。これらの事業に加えて、製材端材や未利用間伐材など建材には利用できない端材・未利用材を使った小物やノベルティグッズなどの商品開発を行うエコ事業部がある。経営破綻した地元の会社から経営譲渡を受けて事業継承したこの事業部が、d-torso『森の組み木シリーズ』の製品化を担当した。
 「最初にこのd-torsoという商品を木で製造できないかという話を伺ったときは、“これならすぐにできるだろう”と高を括っていたのですが、結果として数百体もの試作品を作るはめになってしまいました。木に携わったことのある人なら当たり前の話なんですけど、木には、割れる・曲がる・反る・収縮する・節があるといった特性があり、このため立体パズルの生命線となる木組みの接合部分を加工するのが非常に難しかったのです」
 株式会社トライ・ウッドの総務企画部部長の渡邊雄一郎さんは、そんなふうに開発の苦労について話す。
 いっときは、合板やMDFなどより寸法安定性の高い素材を使うことも考えたというが、消費者に木目や肌触り、木の香りなど本来の木が持っている素材としてのよさを伝えていきたいと、なるべく無垢材に近い形で商品化することをめざした。
 結局、最初に話があってから3年、製品化までにはさらに7か月以上をかけて、ようやく完成したd-torso『森の木組みシリーズ』だった。

国産未利用材スギd-torsoの完成までには、試作の繰り返しを要した(出典:株式会社トライ・ウッド)

国産スギd-torsoと森林の物語 ―d-torso『森の木組みシリーズ』と森林管理及び地域活性化との関わり

d-torso『森の組み木シリーズ』について説明する、株式会社トライ・ウッド 総務企画部部長の渡邊雄一郎さん。
d-torso『森の組み木シリーズ』について説明する、株式会社トライ・ウッド 総務企画部部長の渡邊雄一郎さん。

 木材製品の持続可能な製造・販売を実現するためには、素材となる木材の産出にまで遡って、購入者の手元にまで届けられるまでのプロセスについて理解することが重要となる。建設用木材はもちろん、国産未利用スギ「d-torso」の材料も同じような構図にあると渡邊さんは言う。
 「だいぶ端折って説明しますが、まず最初に、木を植えるところから始まります。植林後は、造林作業といって、木をまっすぐに生長させるための下草刈りをします。その後に除伐、つまり切り捨て間伐を行って植林本数を適正な密度に減らしていきます。簡単に話していますが、ここまでで15年以上の年月がかかっているのです。最終的に木を切って搬出するまでには40年から50年がかかる作業ですから、ここまでの作業はわれわれの前の世代の人たちがやってきた仕事です」
 木の伐倒からが、現世代の仕事になる。まずは、バーベスターと呼ばれる高性能林業機械で3メートルから4メートルの丸太材に切っていき、これをフォワーダーという別の機械で山土場まで運んでいく。
 こうして適切な間伐を行った森は、地面まで光が注ぐようになって植生が豊かになる。生物多様性が担保された“環境にやさしい林業”の成果だ。
 「山土場に運搬した丸太材を、製材所に搬入して、製材を行うわけですが、このとき商品として使えるのは大体半分くらいで、残りの半分は端材品として、多くの場合は燃やすか廃棄されているのが現状です。うちの会社の場合、これらの端材を集めて接着剤で大きなブロックにして、それをスライサーという機械で0.20-0.4mmの薄さにスライスしていきます。木は1枚だけだと剛性があってすぐにバリっと割れてしまいますが、このスライス材5枚を貼り合わせることで弾力性を持たせ、長持ちする材料に加工しています」
 貼り合わせただけの段階では、まだ1/100mm単位で凹凸があるため、均一にするためサンダーという機械で平らに磨いていく。このサンダーがけで厚みを均一化する作業に一番苦労したと渡邊さんは言う。
 均一化した板をレーザー加工機で型抜きをして、ピースを切り抜いていく。できた部材が梱包され、顧客のもとに届けられる。
 こうしてできたd-torso『森の組み木シリーズ』を使ってもらうことで、山に資金が還元され、次のサイクルの山づくりが始められるようになるわけだ。
 自宅やオフィスに飾って森に思いをはせたり、大事な人へのプレゼントにしたりと、お一ついかがだろうか。


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  1. 001「豚ふん堆肥燃料でカーボンオフセット? ー削減系クレジットで日本の第一次産業を支える」
  2. 002「さらなるCO2削減につながる事業にJ-VERを活かして」 -南アルプス市のカーボンオフセット付き農産物と市民参加のわくわくエコチャレンジ-
  3. 003「わが身の安全と、被災地支援とをつなげる試み」 -『ともに生きる!』ひろげよう防災の輪!復興支援キャンペーン-
  4. 004「身のまわりで使うあらゆるものを国産木材のものに置き換える」 -木の出口のための“森のめぐみのおとりよせ”のラインアップ-
  5. 005「カーボンオフセットでつながる企業と人 ―森を支える仕組みづくりを育む『EVI環境マッチングイベント2013』」
  6. 006「カーボン・オフセットを付けて、未利用食材や特産品の商品価値を向上」
  7. 007「妖精が棲む湖のリゾート地から、森林保護とCO2削減の取り組みモデルを全国に発信!」 -女神湖グリーン&クリーン・リゾート構想-
  8. 008「小さな一歩を集積して、大きな力をともにつくりあげるための新たな仕組みづくりをめざして」 -環境マッチングイベント2014報告記・その1-
  9. 009「点を線につなげ、線を面に広げる取り組みをめざして」 -環境マッチングイベント2014報告記・その2-
  10. 010「日本の森と水と空気を守りに、EVIは今日も東へ西へ…」
  11. 011「“未来の大人たちは、環境を守る”に向けて、今なすべきこと」 -EVI読み聞かせ絵本シリーズのめざす、環境教育の形-
  12. 012「環境貢献型商品を開発するだけでなく、売りにつなげるための場と仕組みをつくる」
  13. 013「EVI環境マッチングイベント2015へのいざない」
  14. 014「EVIを活用した、水田農業による地域活性化の取り組みと環境貢献」 -エコファームHOSOYAの取り組みより-
  15. 015「地域密着の食材屋だからできる、“地域の台所”としての役割」 -「第5回カーボン・オフセット大賞」の特別賞を受賞したEVIがサポートする環境貢献の事例-
  16. 016「未利用木材を活用した立体パズルの開発で、森林管理&地域活性化をめざす」-株式会社トライウッド&株式会社アキ工作社と取り組んだ3社共同の事例-
  17. 017「環境貢献型商品の開発に向けて、ラベルデザインや資材調達などトータルにサポート」 -信州・松代、真田十万石の歴史を生かすNPO法人杏っ子の里ハーモアグリとの協働事例-
  18. 018「日本初!CO2排出ゼロをめざす道の駅『にちなん日野川の郷(ひのがわのさと)』(鳥取県日南町)がオープン!」
  19. 019「プロモーション活動を通じた環境貢献の取り組みをサポート」 -POP・外装材の製作時CO2排出量を全量カーボン・オフセットするカルネコの “CO2排出ゼロ宣言”-
  20. 020「“もっと身近に”をさらに一歩進めるために、“私たちにできること”をめざして」 -EVI環境マッチングイベント2016実施報告(1)-
  21. 021「これまでのマッチングイベントと一味違う、環境パフォーマンス&環境落語の披露」 -EVI環境マッチングイベント2016実施報告(2)-
  22. 022「高校生たちによるカーボン・オフセットの取り組み(1)」 -愛知県立南陽高等学校 Nanyo Company部の事例-
  23. 023「高校生たちによるカーボン・オフセットの取り組み(2)」 -東京都立つばさ総合高校「ISO委員会」の事例-
  24. 024「いよいよビッグネームがカーボン・オフセットにも参入」 -EVIのコラボで森林支援を組み込んだソフトバンクの『自然でんき』-
  25. 025「EVI環境マッチングイベント2017、開催へ」 -「私たちにできること。」に向けたさまざまなヒントを提示-

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