「Eco Value Interchange」バックナンバー
4月22日にグランドオープンを迎えた、道の駅「にちなん 日野川の郷」。多くの来客で賑わった。
道の駅構内は、FSC(R)認証を取得している地元・日南町産の木材をふんだんに使った森をイメージするインテリアに日南町の四季折々の魅力を表すバナーを吊り下げ、来客を迎えている。
世界アースデイに当たる4月22日(金)から週末23日(土)・24日(日)にかけての3日間、鳥取県日南町生山でグランドオープンを迎えた道の駅「にちなん 日野川の郷(ひのがわのさと)」【1】のオープニングフェアが大々的に開催された。
中国山地のほぼ中央に位置する鳥取県日南町は、県の約1割の面積を有し、その約9割を森林が占める。西は島根、南は岡山、南西部は広島と3県に接する人口約5千人の中山間地域にあって、高齢化率は47.5%にもなる(2016年2月末時点)。県3大河川の一つである日野川の源流は町内から発し、この流域を中心に標高280-600mの間に大部分の集落と耕地が広がっている。
今回オープンした道の駅「にちなん 日野川の郷」は、その日野川に沿って走る国道183号線の沿線にあって、町役場やJR生山駅、高齢者住宅やショッピングセンター、町の総合文化センターなどが集中する町の中心部に位置する。
国土交通省が地方創生の拠点施設として位置づける全国35か所の「重点道の駅」の1つに選定されたこの道の駅は、同町が掲げる「コンパクト・ヴィレッジ構想」【2】の中核施設の一つに当たる、商業・福祉ゾーンの拠点としての機能も持っている。特産品の集出荷・加工販売を集約して地場産業の振興(6次産業化)を図るとともに、定住促進住宅と高齢者住宅を配置して多世代交流を図ることで社会福祉効果を期待する。平日には、道の駅と、町役場や生山駅、ショッピングセンターなどの商業施設や高齢者住宅などの間をつないで巡回・送迎する電気自動車も運行し、国道を走行するドライバーのための“道の駅”としてだけでなく、町民にとっても暮らしや楽しみの中心施設としての役割を担う。
この道の駅で、もう一つ大々的に掲げているのが、環境への取り組みだ。
道の駅構内に開設する農林産物集出荷場や加工場には、毎朝、地域の農家から届く新鮮な野菜が配送され、その場で加工・販売したり、レストランの食材にも用いられたりする。そして、これら道の駅で扱うすべての商品は、1点につき1円が寄付型オフセットとして、地元の森林を支援する原資に充てられる。さらに、構内で使用される電気やボイラー燃料などから排出されるCO2も、その全量が地元森林産のオフセットクレジットによりオフセットされ、実質的なCO2排出量をゼロにする試みにも挑戦する。
施設の木造部分には、FSC(R)認証を取得する地元・日南町産の木材をふんだんに使用し、道の駅としては全国初となるFSC(R)認証【3】施設として運用するのも注目される点だ。
道の駅に設置された「EVIショップ」の陳列棚の前で環境貢献型商品について説明する加藤孝一。
デザインイメージを統一するためのロゴマニュアル。道の駅で使われる各種ツール類はすべて、ロゴマークのデザインと色づかいを反映させ、ブランディング構築をめざす。
鳥取県日南町におけるEVIとの連携事例については、本連載の第14回『EVIを活用した、水田農業による地域活性化の取り組みと環境貢献』でも、農事組合法人エコファームHOSOYAの事例報告を通じても紹介している。そのきっかけになったのが、今回取り上げた同町の道の駅構想とそこで展開する環境貢献型商品の開発へのサポートにあった。
「この道の駅にある目に見えるものの設えは、基本的にすべて私どもで手がけさせていただきました。ロゴマークのデザインをもとに“にちなんブランド”としてイメージの統一を図るため、色の定義などを定めたロゴマニュアルも作成しています。このマニュアルは、店内のサイン(誘導サインや案内図)から商品の販売棚、ショッピングバッグやエコバックのデザイン、POSシステムのラベルデザインやパンフレットなどの印刷物など、さまざまな制作物に適応していくのです。そうして訪れる人たちの目に入るところのメッセージをすべて統一したデザインで表現していくことのインパクトは、現地で初めて実際に目の当たりにした際に、提案した私たち自身もびっくりするくらいのものになりました」
カルビー株式会社カルネコ事業部・事業部長の加藤孝一は、日南町の道の駅オープンに向けたEVIの関わりと効果についてそんなふうに話す。
なお、“にちなんブランド”のイメージ統一の一環として、農産物等の出荷者を対象に「POP制作セミナー」をこれまで2回にわたって開催してきた。2016年1月21日の午前中に実施した第1回、またオープン直前の4月12日には施設現地で取り付けサインやPOPの最終調整に合せて第2回セミナーを開催。
50名ほどが受講したPOP制作セミナーでは、売り場における効果的なPOPづくりを目的に、前半は加藤が購買につながるメッセージツールとしてのPOPの役割について解説し、後半はカルネコのクリエイティブスタッフが講師になって、文字の書き方からレイアウトの仕方までの実技実習を行った。
すでに紹介したように、道の駅で販売している商品は、すべて1点当たり1円の寄付型カーボン・オフセットをつけた環境貢献型商品として販売される。
「ここの道の駅の売り場で販売するものは、全商品、価格に上乗せして1円分のクレジット代金をいただきます。それによって、お買い求めいただくお客様にも買い物を通じた環境貢献に参加してもらい、日本の森を守っていくための主人公としての役割を担ってもらおうというコンセプトです」
その仕組みと目的等については、店内掲示やパンフレットで説明するとともに、値札やレシートにも明記して、理解の促進を図る。
日本初のCO2排出ゼロの道の駅と合せてアピールすることで、より効果は高まる。
環境配慮に向けてできることはそれだけではないから、例えば空きダンボールを自由に持って行ってもらうためのスペースを設置して、「ダンボールはご自由にご利用ください。リデュース&リサイクル」の案内標識を設置したりする。
来る5月の連休には、木材の利用促進を目的とした間伐材のマイ箸つくりや、うちわ、パズル、葉書などのワークショップの企画運営も予定している。
道の駅による集客や地域の拠点づくりなど日南町による本事例は、全国の中山間地の自治体が共通に抱えている問題ともいえる。道の駅「にちなん 日野川の郷」におけるこれらの取り組みは、これまでEVIが携わってきたカーボン・オフセット普及促進のための多様な試みと実績を集約した事例といえるだろう。
※写真はすべてEVI推進協議会提供。
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