「Eco Value Interchange」バックナンバー
前回からお送りしているEVI環境マッチングイベント2016報告記。今回は後編として、前回からの続きについて紹介したい。
セミナーエリアは壁を隔てて、ブース展示エリアなどが設けられ、商談・談笑の場となった。もちろん、2つの会場は自由に行き来することができるとともに、ブース展示エリアに設置されたモニターには、ステージの様子が映し出された。
今回のマッチングイベントのある意味で目玉のセッションといえるのが、ボルカホンラインダンスユニット『Cheeky』による環境パフォーマンスと、春風亭柏枝師匠による環境落語「改作落語 和尚(おしょう)とちん念」だ。前号で紹介した基調講演等が国内外の最新の動向を知る“ためになる”内容として一極を成すのに対して、真逆のアプローチをとりながらぐっと引き付ける役割を担ったセッションだ。こうしたバリエーションを通じて、もっともっと生活の中で身近になっていくということを体験してもらいたいというのが主催する加藤の想いだった。
ボルカホンというダンボール製打楽器を使ったライブパフォーマンスを披露したのは、ボルカホンラインダンスユニット『Cheeky』の面々。ボルカホンは、ペルー発祥の打楽器「カホン」をダンボール製にしたもので、前年のマッチングイベントでもブースを出展。
「どうせなら叩く姿を見てもらいたいので、今年は叩き手を連れてきました」
そう話すのは、プロデューサーの糸賀徹さん。ボルカホンを手掛けるようになって2年半になる。現在リーダーを務める鶴田まこさんのアイデアで結成した『Cheeky』は、打楽器演奏とラインダンスを融合させたパフォーマンスやワークショップを始めてもうすぐ丸2年を迎える。この日は欠席の2人を加えた7人ユニットとして活動しており、振付などはメンバー自身が考えている。1ステージ当たり500円のクレジット購入によって森の支援をする、カーボン・オフセットパフォーマーでもある。
箱型のボルカホンは、座面に座りながら叩いて音を鳴らす。叩く場所によって少しずつ違う音が響くように設計され、ロー(打面の中心部)とハイ(打面の上部)を叩き分けてリズムを作る。裏面には丸い穴が開いていて、中に仕込んだスナッピーというバネが共鳴して音を震わせる。オリジナルの木製カホンと同じ作りだ。ライブパフォーマンスのほか、子ども向けのワークショップなども企画して、まずは広める活動をしていると糸賀さんは言う。
Cheekyのメンバーも、「ワークショップでは、ダイレクトな反応が返ってきて、目に見えて楽しんでくれているのがわかってとても楽しいです」と笑顔を見せる。子ども用のボルカホンは組み立て式で、表面に絵付けしたりとオリジナルなものが作れるのが人気を呼んでいるという(EVI商品として販売)。
落語の世界では休憩後に出てくる役目を“喰い付き”というらしい。休憩時間中にトイレに立ったり所要を済ませたりと注意力が散漫になったお客を振り向かせて、寄席に集中してもらう、つまり喰い付かせる役割を担うことから呼ばれている。
Cheekyによる環境パフォーマンスの後、休憩を挟んで再開した初っ端の“喰いつき”役を担ったのが、春風亭柏枝師匠による環境落語『改作落語 和尚(おしょう)とちん念』だった。古典的な落語の演目『転失気(てんしき)』をもとにアレンジしたもので、もとの演目では医学用語の「てんしき」がキーワードになるが、ここでは「カーボン・オフセット」に置き換えて話が進む。
“あるお寺の和尚さんのお話し。環境省のお役人から「カーボン・オフセットをお願いできないか」と頼まれる和尚さん。知らないとは言いたくない性分のだから、知ったかぶりをして承知するものの、あとになって気になって気になって仕方がない。今まで見たことも聞いたこともない『カーボン・オフセット』について、何とか自然に知れる方法がないものかと頭を悩ませ、寺の小僧・ちん念を使いっ走りに出して、街の人たちに聞きに行かせることを思いつく。一言教えてくれればいいのにと不満げに言うちん念に、そんなことではいかんとお為ごかしの和尚さん…。”
そんな設定と和尚と小僧の対話で話を進めていく、柏枝師匠。この後に登場してくる街の人たちも、それぞれにその場しのぎの作り話で知ったかぶりをし、翻弄されるちん念は、総合司会の磯谷さんと米森さんに助け舟を求める。
カーボン・オフセットの意味と和尚の無知を知ったちん念は、うその情報で和尚に仕返しをする。ちん念の策略によって、カーボン・オフセットを「お布施→オフセット」で建てるお寺(盆の一種の「かあ盆→カーボン」)の倒置と勝手に解釈する和尚が、お寺を訪ねてきた環境省の役人に、自慢げに寺の建て替えについて話し始める。ボタンの掛け違ったような対話を面白おかしく真面目に披露する噺家ならではの話術と、最後にポンと膝を叩きたくなるオチが決まって、会場内は笑いに包まれる。
ちょっとした考えのきっかけにしてもらうため、いろいろな機会で披露していると話す柏枝師匠。1高座当たり150円をEVIの仕組みを通じて森に還元する取り組みも行う、日本初のカーボン・オフセット落語家を宣言。
生活のあちこちに、クレジット利用による森の支援がしみ込んできた、そんな事例の一つにもなっているわけだ。
このセッションの最後には、シリーズ5冊目となるEVI読み聞かせ環境絵本の最新刊の紹介もあった。この日が初披露となった新刊絵本は、過去2回と同様、制作に携わった株式会社クリエイティブオフィスエジソンのアートディレクター・無量小路香乃古さんによる読み聞かせの実演がされ、観客を絵本の世界へといざなった。
『ポッツリとマルン』と題したこの絵本は、水滴のポッツリが大の仲良しのマルンと旅をしながら水資源の循環について知る冒険譚。ちょっと切なく、でも最後にはほっこりとする心癒されるストーリーを、柔らかなタッチの絵が彩っている。
来場者には、この日のイベント全体のアンケートと引き換えに、新刊本1冊ずつが贈呈された。
この日が発お披露目となった、EVI読み聞かせ環境絵本のシリーズ最新刊『ポッツリとマルン』。制作に携わった株式会社クリエイティブオフィスエジソンのアートディレクター・無量小路香乃古さんが読み聞かせ実演をする。
この日の最終セッションは再び加藤が登壇し、一日のプログラムをふりかえるとともに、来年10月24日(火)に同会場で開催を予定しているEVI環境マッチングイベント2017に向けてのキックオフともなった。
加藤からは、“時は今! 「私たちにできること」から始めませんか?”との投げかけがされた。
CO2の排出量を2010年比で、2050年までに40-70%削減、さらに21世紀末までにはゼロ排出にすることが求められている。こうした目標は、できたらいいなではなく、やらなきゃならないことになっているものだ。
“環境を守ること”は、すなわち“命を守ること”。私たちは今すぐにでも、できることから始めるとき、なのだと加藤は言う。
その輪を広げるための提案として、“あなたの街でこのイベントをやってみませんか”という投げかけがされた。
EVIでは、2017年にかけ全国10か所でこの日の環境マッチングイベントのような会合の開催を目標に掲げている。
これまで積み上げてきた環境貢献型商品やサービスの先駆事例の紹介はもちろん、環境パフォーマンスや環境落語など硬軟取り揃えた内容のイベントを、開催地に合わせてアレンジしていくこともできる。
「ぜひ、EVIにお声かけください!」と力強く締めくくった。
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