「Eco Value Interchange」バックナンバー
2015年12月11日(金)のエコプロダクツ2015特設イベントステージで開催された、「第5回カーボン・オフセット大賞」表彰式で特別賞の表彰を受ける、カルビー株式会社カルネコ事業部(EVI推進協議会)の加藤孝一。
日本最大級の環境展示会として知られるエコプロダクツ2015の中日に当たる2015年12月11日(金)。会場内に特設されたイベントステージでは、「第5回カーボン・オフセット大賞」(主催:カーボン・オフセット推進ネットワーク(CO-Net)、後援:環境省・経産省・農水省)の表彰式が開催された。このコンテストは、低炭素社会の実現に向けて、優れたカーボン・オフセットの取組を行う団体を表彰し、奨励するとともに、具体的な取組事例の紹介を通じて、カーボン・オフセットの意義と取組への理解が社会全体に広く浸透することを目的に毎年実施しているもの。
今年、その特別賞を受賞した2団体の一つに、EVI推進協議会事務局のカルビー株式会社カルネコ事業部が選ばれた。
同社が進める、環境事業者・企業・消費者の三位一体の取り組みを支援する環境貢献型プラットフォーム「EVI(Eco Value Interchange)」の活用による地域活性化への取り組み「普段のお買い物を通した環境貢献!もっと身近にカーボン・オフセット!」が評価されたわけだ。
今回は、そうした地域支援の一つの事例として、熊本県植木町で小売店舗「入船市場」を経営する株式会社やまだ商店による、小売りができる環境貢献のあり方について紹介する。
熊本県の県北に位置する全国一のスイカの名産地・植木町で一般食品を中心に扱う小売店舗「入船市場」は、今年創立23年目を迎えた。ルーツは福岡の造り酒屋で、屋号「入船」は、日本酒醸造一筋から命名したという。経営母体は、青果卸をはじめ全酒類及び業務用食材を扱う、株式会社やまだ商店。
去る10月19日(月)に開催されたEVI環境マッチングイベントでは、代表取締役の山田雄久さんが登壇し、EVIを活用した環境貢献の取り組みについて報告した。冒頭、山田社長は、普段店で着用しているエプロンを締めて、気合を入れる。
「私たちは、『自分づくり(自己実現・成長)』『のれんづくり(事業永続・継承)』『喜びづくり(感謝・感動・幸福)』を経営理念に、お客様をはじめ、生産・加工関係各社やスタッフなど関わる人たち皆の幸せ感を実現し、共同体の繁栄に少しでもお役に立てる存在をめざして、地域密着で地道に取り組んでおります。これまでの活動の成果をシンプルに3つに分けてご説明・ご報告いたします」
以下に示す3つの取り組みについて、山田社長が報告した。
(1)地域密着型、ご縁をつなぐ『入船わくわくマーケット』
(2)使用済みてんぷら油の回収と活用を行う、『熊本わくわく油田プロジェクト』
(3)日本の森と水と空気を守る、『EVI活動』
『入船わくわくマーケット』は、やまだ商店が扱う地元産品の生産者や加工業者が集まって、地域の消費者との交流をする、毎月第4日曜日に開催している恒例のイベント。3年前にスタートして、2015年10月で第28回目を迎えた。毎回、10数件のわくわく仲間が参加するコミュニティが形成されている。
小さな生産者たちだから、大量生産はできない。その分、地元に向けて、地道によいものを送り届けたいと、それぞれこだわりの品々が発信されている。
「このワクワクマーケットは、販売が主体なのではなく、あくまでも発信が趣旨です。毎回、多くの新たな出会いと再会がつながっていく。
出店費用はゼロ、販売手数料はいただきません。コンセプトは、“つながろう、つなげよう”です。ここで出会った人たち同士のクラブが、点と点から線と線につながり、新たな価値に拡がっています」
お楽しみのイベントも併催している。ゆるキャラが盛り上げるイベントや、味噌づくりや地元飴細工職人さんの実演と金太郎飴のプレゼントなど、地域に密着した活動が喜ばれていると話す山田社長だ。
『熊本わくわく油田プロジェクト』も、『入船わくわくマーケット』と同時期にスタートし、今年(2015年)で3年目を迎えている。地域の子どもたちを巻き込んで実施しているプロジェクトで、わくわく仲間である地元の廃油精製会社とのコラボで実施しているものだ。
入船の店頭に使用済み油の回収ステーションを設置して、廃食用油のリサイクルによる有効活用をめざす活動。“熊本に油田を!”というスローガンを掲げている。
「現時点での実績はご覧の通りです。お客さまが持ち込んでくださった使用済み油は、200リットルのドラム缶にして35本分。7,000リットルを超える量が集まっています。並べてみたら圧巻でしょう! 私たちにできること、またつながった仲間と力を合わせることで実現できること…。環境への意識と行動が、地域の方々はもちろん、社内スタッフにも自然と、そして次第に高まっています」
皆でつながり、広がっていくことで、環境貢献型スタイルの店舗としてメディアにも取り上げられるようになった。
チェーン店ではなく、一店舗だからこそできる、地域密着の取り組みが交流の輪を広げている。
ワクワクマーケットでも、回収した廃食用油を活用した廃油キャンドルづくりなどのお楽しみ企画に活用している。
入船市場店内のEVI展示コーナー。『身体にやさしい!人にやさしい!環境にやさしい!』、こだわりの食品を陳列している。
こうした取り組みをしていく中で、さらに地域とのつながりを深め、自然循環型の取り組みを深めていきたいと思っていた頃に出会ったのが、EVIだったと山田社長は言う。
「私たちは熊本の地で、地域を守り、環境を守る活動をしていきたいと思っているものですから、EVIの“森と水と空気を守る”というコンセプトに大変共感しました。さっそく、これまでつながってきた生産者・業者の皆さんから預かる地元九州熊本産の商品の中から、EVIの提唱する環境貢献型商品に合致する商品を集めて、それらにEVIを通じて購入した阿蘇・小国町のクレジットをつけて、店内に設置している『こだわりコーナー』での販売をはじめました。さらにクレジットの購入資金には、入船店頭でのマイバッグ推進によるレジ袋代金や廃油回収手数料などを充てることで、循環型の取り組みとして設計しました」
“誰でも手軽にできる、お買い物を通じた環境貢献”をキーワードに、新しいモデルとなる地域を巻き込んだ商品開発も計画中だという。EVI環境マッチングイベントのブース展示にも持ち込んでいた新商品「キクイモ乾燥チップ」は、ワクワク仲間とのつながりをさらに深く、強くするための企画商品第一段として進めているものの一つだという。
「菊芋はあまりポピュラーな食材ではないんですよ。地元でもそれほど食べてはいません。知る人ぞ知る商品といえます。ただ、食べることで血糖値を下げる効果があると、ほしがる人も結構います。そんな商品の特徴を、私たちが発信していければと考えています」
やまだ商店では、こうした商品開発や販売促進の活動に力を入れている。その本質は“つなぎ役”と、山田社長は話す。
「私たちは生産者にはなれませんから、逆に生産者の皆さんと消費者の皆さんをつないでいく役割を果たしていきたいんです。地元には、大手の流通さんとは手を組めないような小さな生産者さんがたくさんあります。大量には作れないけれど、自分たちの生活の範疇でいいものを作っていくという人たちが結構いらっしゃるのです。そういう人たちと、いろいろと時間はかかるんですけど、やっている活動です」
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