石川県に住んでいる知人から「おすすめのミュージアムグッズがあるの!」と紹介されたグッズがあります。石川県西田幾多郎記念哲学館の開館20周年を記念して開発された「哲学者ふせん」です。
このふせんは西田幾多郎の直筆文字をそのまま使用しており、西田の論文などで頻繁に用いられる表現、「であるのである」と「でなければならない」の2種類がセットになっています。西田幾多郎といえば日本を代表する哲学者の一人であり、その難解ながらも深遠な思想は、今も多くの人々に影響を与え続けています。そんな彼の著作などを読んだことがある方ならきっと見覚えがあるであろう、独特の言い回しがふせんに用いられているのです。
このふせんは単なる文房具としてだけでなく、西田哲学に触れるきっかけや、日々の生活の中で哲学的な思考を促すツールとしても使うことができます。例えば、読書中に気になった箇所に「であるのである」のふせんを貼ったり、重要な ToDo リストに「でなければならない」のふせんを貼ったり。哲学好きの方へのプレゼントにもぴったり。西田哲学に造詣が深い方はもちろんのこと、哲学に興味を持ち始めたばかりの方にとっても、このふせんは哲学という学問への入り口となるかもしれません。
西田哲学には「場所」という概念があります。これは単なる物理的な場所ではなく、あらゆるものが存在し、相互に作用する根源的な場を意味します。これを踏まえると、哲学館の建築がいかに重要であるかが理解できます。建物自体が西田哲学の「場所」を体現するものでなければならず、著名な建築家である安藤忠雄氏が設計に携わったことは、ある種必然といえるのかもしれません。安藤氏の建築は、自然と建築の融合、光と影のコントラストなどを特徴としているので、西田哲学の持つ深遠な世界観を表現するのにふさわしく、訪れる人々にとって思索を深める「場所」となるように設計されているのではないでしょうか。
展示棟2階の展示室2「西田幾多郎の世界」では、西田の遺品、原稿、書簡など、200点以上にも及ぶ豊富な資料を通して、彼の生涯と人となりを紹介しています。偉大な哲学者としての業績はもちろんのこと、一人の人間としての苦悩や葛藤も知ることができるのがこの展示室の魅力。西田は確かに偉大な哲学者でしたが、その人生は決して順風満帆ではありませんでした。学問における苦労や葛藤など様々な困難に直面しながらも、彼は哲学を探求し続けました。展示室では、そのような人間的な側面にも焦点を当て、彼の思想がどのように形成されていったのかを、より深く理解できるようになっています。西田幾多郎という人物が、単なる教科書に載っている哲学者ではなく、血の通った一人の人間であったことを実感できるでしょう。
環境問題と哲学。この2つの関係性を考える上で、西田幾多郎記念哲学館を訪れることは有益かもしれません。哲学館が発行する雑誌『点から線へ』には、西田哲学の研究者が環境問題を絡めて論じた寄稿文や講演録が掲載されています。環境という「場」もまた哲学の舞台となり得ます。人間と環境との関わり方を模索する上で、西田哲学に触れてみるというアプローチは示唆に富むのではないでしょうか。
ではそんな「哲学」をテーマにしたミュージアムにおけるグッズは、どんなものがふさわしいのでしょうか。もちろん単なるお土産ではなく、購入者が思索を深めたり、自身の哲学を追求するきっかけとなるようなものであることが期待されるでしょう。
例えばこのふせんに掲載されている「でなければならない」という言葉。強い必然性や義務、自律……そんなキーワードを連想します。西田の倫理や道徳に関する深い思索の一端が垣間見えるよう。私は習慣として日記をつけたり、ミュージアムにまつわるアイデアを書き留めるノートを使っています。重要なタスクや、忘れてはならない事柄を書き留める際に、このふせんを使えば、西田の言葉が背中をそっと押してくれるかも。
西田哲学のエッセンスを手軽に体験できるだけでなく、日常生活の中で哲学的な思考を実践するきっかけを与えてくれるアイテム。世界的に見ても珍しい哲学のミュージアムだからこそ、このような思索を促すグッズを通して、来館者を哲学へいざなうのが重要なのでしょう。
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