「関西でおすすめのミュージアムはどこですか?」と聞かれたら、必ずその名を挙げるのが竹中大工道具館。日本で唯一の大工道具のミュージアムで、1984年に神戸市に設立されました。
おすすめのミュージアムグッズはこの大工道具のミニチュアキーホルダー!初めてその存在を知った瞬間、あまりのかわいらしさに目がハートになりました。鋸、木槌、鉋の3種類が木製キーホルダーになっており、ミュージアムにご縁のある家具職人さんが、本業の傍らで制作し販売してくださっているとのこと。だからこんなに細部まで精巧な作りになっているのですね。
他にも、パリを拠点にするアーティストである、フィリップ・ワイズベッカーが描いた大工道具が掲載された一筆箋なども展開されています。「普段は美術館しか行かないんだよね」という方も、ミュージアムグッズにワイズベッカーの作品が載っているとなれば、興味がわいてきませんか?異なるジャンルのミュージアムに足を運ぶのには勇気がいるもの。その壁を超えさせてくれるのがミュージアムグッズです。竹中大工道具館のミュージアムグッズは、そんなことに気づかせてくれます。
竹中大工道具館が所蔵している収蔵品は35,000点以上。そのうち選りすぐった約1,000点の資料が歴史や種類など展示で紹介されています。展示室は7つのコーナーで構成されています。一部をご紹介すると、「歴史の旅へ」では先史時代から近代までの道具の歴史が紹介され、人間のものづくりの歩みを学ぶことができます。「名工の輝き」では大工道具を作る鍛冶職人の技術を知ることができ、明治から昭和にかけて活躍した名工・千代鶴是秀の工房を再現した展示もあります。
筆者が大好きなコーナーは「和の伝統美」。こちらに展示されている「茶室スケルトン模型」を体感するのがいつも楽しみなのです。重要文化財である大徳寺玉林院の茶室「蓑庵」が実物大の模型として展示室内に設置されており、実際に中に入ることができます。土壁の下地などがむき出しになっているので、職人の竹組みの精緻さをじっくり観察することができるんです。茶室内の畳に正座して、室内に差し込む光が竹組みの隙間を縫って畳に落ちるのを眺める瞬間が最高に幸せです。
他にも「木を生かす」コーナーで木材の匂いを堪能するのも面白い。映像や音声ガイドもあるので、五感で大工道具や日本の建築について楽しみながら学べるのも竹中大工道具館の魅力です。
「でもどうして大工道具専門のミュージアムがあるんだろう?」とお思いのかたもいらっしゃるかもしれません。それは、良い道具ほど大事に使われるため摩耗し、使い切られてしまうから。そして近年では電動の大工道具の台頭で、手道具としての大工道具は減少傾向にあります。実用と美を併せ持つ品質の良い大工道具を後世に残すことで、鍛冶職人や大工の技術や美意識、日本建築の真髄を届けるミュージアムなのです。
私たちの身の回りでも、時代の移り変わりとともに消えつつある文化や風習がたくさんあるでしょう。建築の現場もおそらく同様で、道具が変われば仕事の仕方も変わる。けれど、作り手の住居に対する考え方は変わるものも変わらないものもきっとある。竹中大工道具館は大工道具を中心に資料を収集、保存、研究することで建築の現場の時代性を捉え続けているといえるのかもしれません。
私たち人間の一番近くにある「環境」である住居、その変化を大工道具から考える。ぜひ竹中大工道具館で体験しながら学んでみてほしいです。
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