皆さんは海女という職業のことを、どこまでご存じでしょうか。素潜りでアワビやサザエ、海藻などをとる漁をする女性たちで、鳥羽市立海の博物館がある三重県鳥羽志摩地方でも活躍しています。
この博物館のオリジナルグッズ、「海女さんメモロール」は、そんな海女の皆さんがどんな風に日々お仕事をしているのか、その生活を3コマ漫画で表現したメモです。
30メートルのロール紙に、6つのテーマが描かれています。「50秒の勝負」「海女の獲物」「魔除けの印」「海の幸は海藻から」「海女小屋」「海女漁の決まり事」と、どれも気になるものばかり。メモの裏面にはコラムもついていて、海女の生活や仕事について学ぶことができます。
デザインを手がけたのは(株)デザインメイト。かわいらしい海女のイラスト、美しい鳥羽志摩の海が表現され、このメモでお手紙をもらったら、必ずや鳥羽志摩に足を運びたくなるでしょう。
前回の記事で、ミュージアムグッズをきっかけに、博物館が「大切にしているもの・こと」「守っているもの」へと関心をむけることを本連載の趣旨とすると書きました。それでは、鳥羽市立海の博物館は何を大切にし、何を守っているのでしょうか。ホームページを見るとこのような記載があります。
「まず資料ありき」を海の博物館は、博物館活動の基本においています。2018年3月現在、実物資料の所蔵点数は61,840点(件)。資料分類目録で見られるように、民俗資料が大半を占めており、うち6,879点の国指定重要有形民俗文化財を含んでいます。資料収集範囲は原則として、三重県の海に面した市町村、中でも漁村に重点をおいていますが、「船」「海女」などに関しては、国内はもとより海外にも資料を求めています。海の博物館では、資料収集にあたって資料に対する偏見を最小限にするよう「どんなモノでも集める」ことを心がけています。
主な所蔵資料として、実物資料では海女が使用していた県内外の潜水道具や、海の生きる人々の生活を支えた衣類や調理具などの生活用具、お札やお守りなどの信仰儀礼用具などが、ホームページに掲載されています。映像や写真などの記録資料では、絵葉書も資料として収められています。まさに、「どんなモノでも集める」という博物館の姿勢が見えてきますね。
海に生きる人々の生き方を、物を収め次世代へ残すことで伝えていく。ミュージアムのそんな姿は、展示室からも伝わってきます。展示B棟の「伊勢湾の漁 ~そこは豊かな漁場だった~」というゾーンを見てみると、伊勢湾がかつて豊かな漁場であったことがわかります。しかし現在、海女など海を舞台に生計を立ててきた人々の暮らしが脅かされています。
高齢化や後継者不足により、海女を仕事にする人々は年々減少しています。昭和40年代、海女数のピーク時に、志摩半島には3,000人近い海女がいましたが、今は700人ほどといわれています(石原 2017)。海女の担い手減少の理由のひとつとして、海女が漁獲の対象としているアワビ、サザエ、ウニや海藻類などの資源が、環境問題等の影響により獲れにくくなっていることにあります(石原 2014)。つまり、海女というひとつの伝統文化の消滅の危機に、環境問題等による資源の減少が影響しているのです。
私たちひとりひとりが地球環境について考え、資源の保護に取り組むこと。これにより、守ることができる「地域の伝統文化」があります。「海女さんはどんな暮らしをしているんだろう」「本物の資料を見てみたい!」、ミュージアムグッズを手に取ってそう思ったあなたは、鳥羽市立 海の博物館へ行ってみましょう。私たちと、海に生きる人々の「つながり」が見えてきます。
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