京都水族館の入り口を入ってすぐの水槽で存在感を示しているのが、今回のテーマ、オオサンショウウオです。いつ訪れても、「こんなに大きいなんて知らなかった」「京都に住んでるけど初めて見たな」などと、来館者が驚きと興奮の表情でその姿を見つめています。
ミュージアムショップで人気なのはぬいぐるみ。S~XXLサイズまで大きさも豊富で、筆者はLLサイズを持っています。天敵の鳥から身を守るために岩場と同化している皮膚の色や、口を閉じてにっこり笑ったような表情が印象的です。
リアルな存在感を示すこのぬいぐるみで、お家に帰ってもオオサンショウウオの姿を観察してみましょう。つぶらな瞳はすでに退化しており、自分が明るい場所にいるのか暗い場所にいるのかわかるほどの視力しかないといわれています(2018, 京都水族館)。筆者が特に興味を引いたのは、オオサンショウウオの手。前足と後ろ足で指の本数が異なり、前足は4本、後ろ足は5本。もちろんその本数もぬいぐるみで正確に表現されています。
京都水族館のホームページを見てみると、そのコンセプトに「水と共につながる、いのち。」と掲げられています。京都の川が育んできた豊かな生態系を、来館者が見つめ直すために、展示やイベントを通じて積極的な啓蒙活動を行っています。
また、京都水族館は「総合エデュメント型施設」を目指しています。「エデュメント」とは、エデュケーション(教育)とエンターテインメント(娯楽)をかけ合わせた造語。来館者が主体的に積極的に生き物に関わり、学んでいく仕組みづくりに奮闘しているとのことです。
前述したオオサンショウウオのぬいぐるみも、そのリアルさを細部にまで再現することで、展示での驚きを失わず、「オオサンショウウオって結構かわいいんだね」と、購入者自らが親しみやすいポイントを発見できるようになっています。
親しみながら学ぶ。それを実現させるために、展示やイベントだけではなく、ミュージアムグッズに至るまで表現に気を配る。その大切さを、このオオサンショウウオのぬいぐるみから学ぶことができました。
そんなオオサンショウウオですが、かつて中国から持ち込まれ野生化したチュウゴクオオサンショウウオとの交雑が進み、在来種の数が減少しています。在来種のオオサンショウウオは1952年に特別天然記念物に指定され、文化財保護法の対象になっています。食用に輸入されたチュウゴクオオサンショウウオも実は絶滅危惧種。また、鴨川水系に生息するオオサンショウウオの90%以上が交雑種と判明しており、他にも岡山県鏡野町では2017年度からこれまでに捕獲した117匹のうち、27匹が交雑種だと判明しています(2020, 朝日新聞)。これ以上、交雑種の数を増やさないようにするためにも、生息域を広げないことが重要になっています。
京都水族館では、京都市や京都大学が中心となって行うオオサンショウウオの生息調査にも参加。捕獲した個体の一部を飼育し、この現状を広く知ってもらうための活動も行っています。オオサンショウウオの生き物としての特徴や魅力を知るだけではなく、生息の現状を親しみながら学ぶ。その舞台としての京都水族館の役割が、今後も重要になってくるでしょう。
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.