東京近郊にお住いの皆さんにとってはお馴染みの高尾山は、古くから山岳信仰の場であり、昭和42(1967)年に明治の森高尾国定公園に指定されました。高尾山が冷温帯と暖温帯の境界にあるため、それぞれの気候区の生物を確認することができます。多くの種の動植物が生息しているので、自然観察をたっぷりと楽しめる環境です。
高尾山の山頂にある、明治の森高尾国定公園 東京都高尾ビジターセンター(以下、高尾ビジターセンター)のグッズが素敵です。クリアファイルや手ぬぐい、Tシャツなどは高尾山に生息する生き物の魅力が描かれており、体験の記憶を持ち帰るには最適。日常使いしたくなる素敵なデザインにもグッときます。
おすすめは「山のお宝シリーズ【ピンバッチ】」です。その名の通り、高尾山で見つけられる「宝物」がピンバッチになっています。葉の真ん中を丸く食べるムササビの食痕、目が覚めるような青さのカケスの羽、1年ごとに生え変わるシカの角、移動調査のため翅にマーキングされたアサギマダラ…山中で発見できる生き物の痕跡や気配に目を向けることができるので、とても興味深いですね。服に付けてもかわいいですし、山歩きの記念にカバンに付けてもとっても素敵です。
このピンバッチは台紙にも注目してほしいです。そのお宝の持ち主である生き物の生態などが記載されており、まるで現場でインタープリター(解説員)からお話を聞いているみたい。山歩きの思い出を書き留めるノートを付けている方がいましたら、一緒にページに貼ってみるのもおすすめします。
筆者が個人的に高尾山で見てみたいのが、マーキングされたアサギマダラ。「山のお宝シリーズ【ピンバッチ】」では第4弾として発売されていますね。アサギマダラは長距離の渡りをするチョウとして知られており、タテハチョウ科の仲間の蝶で、ほぼ日本全国に分布しています。成虫になると春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋に南へ移動します。このアサギマダラの渡りについては謎だらけ。何のために長距離を移動するのか、なぜ方角が分かるのか、渡りに使う体力を体内のどこに蓄えているのかなど、まだ解明されていないことが多いのです。
そこで行われているのがマーキング調査です。マーキング調査は、調査対象に印をつけ追跡することで、行動の様子などを探る調査方法のこと。アサギマダラの調査では、翅(はね)に油性ペンで、調査地名、調査日、調査者名などの識別情報を記載し、後日、印のついたアサギマダラを再調査することで、彼らの行動を予測しているのです。この再調査では、マーキングされたアサギマダラの個体を発見した人が、マーキングした地域や調査団体に情報を寄せることで成立しています。多くの人の協力によって成り立つ調査方法なのですね。
高尾山で時折見かけるアサギマダラにも、このマーキングの証が付いていることがあるそうです。福島県や愛知県でマーキングされたと考えられる個体が見られたこともあったそうで、直線距離で考えると200㎞も飛んできたことに!改めてアサギマダラの不思議さに引き込まれます。
このような話を聞いていると、高尾山に生息する生き物たちにだんだん会いたくなってきませんか?より深く高尾山について学びたくなってきませんか?そんなあなたには高尾ビジターセンターの館内にある、高尾山の歴史や自然にまつわる展示や、動植物の名前を検索できるシステムの利用もおすすめです。そして、自然体験プログラムも毎日開催されていますし、そのひとつであるガイドウォークが興味深いんです。インタープリターと山頂周辺を散策し、季節ごとの自然の姿を発見するこのプログラム、天候や担当スタッフによっても内容が異なるので、訪れるたびに参加してみたくなります。
展示、自然体験プログラムなどを通じ、自然に親しむ力を養うことも、ビジターセンターの大切な役割のひとつ。オリジナルグッズがその一助になればいいなと筆者は考えているので、高尾ビジターセンターのオリジナルグッズのラインナップにはいつも勇気をもらっています。ビジターセンターの活動や地域の自然とリンクしたオリジナルグッズがあることで、参加者の学びを定着させる作用があると考えます。博物館活動としてのミュージアムグッズの在り方を考えるとき、筆者は「また高尾山に登らなくちゃな」という気持ちになるのです。
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