1993年にオープンした千葉県松戸市にある松戸市立博物館。旧石器時代から昭和30年代の公団住宅までの歴史が常設展示されています。人気の常設展示は、この公団住宅である常盤平団地を再現したコーナー。1962年当時の一室に郷愁を覚える来館者も多いことでしょう。
その常盤平団地の間取りが、なんとマスキングテープになっています。2DKの間取りが半分ずつ交互に印刷されており、組み合わせると団地の間取りになります。団地で生活し、首都圏で働くサラリーマン家庭の暮らしがグッズになるなんて興奮しますね。私の周囲の若い世代でも「昭和レトロ」が人気で、このマスキングテープを送りたい人が何人も頭に浮かびます。そしてぜひ松戸市立博物館を一緒に訪れたい。近くて遠い昭和の暮らしを一緒に学びに行きたいです。
歴史系の博物館に行くと、近現代の歴史展示コーナーに目を向けてしまいます。「懐かしい」という気持ちがあるのはもちろん、私が生きている「今」も、いつかは展示ケースの中で語られる対象になるのかと思うと不思議な気持ちになります。1962年当時の常盤平団地の一室は私の両親世代には懐かしいかもしれない。そこから連綿と続くものもあれば、今は使われなくなった道具があったりと、時の流れに身を任せるうちに知らず知らずのうちに変化していることが今でもあるよな…と思い知らされます。
私の世代でいえば、スマートフォンを使い始めたのは大学生になってからですし、高校生の頃は二つ折りのガラケー。SNSを使い始めたのも大学生から。でもそれを私の娘に話せば「スマホがないなんて考えられない!」「SNSが無くてどこから情報を仕入れていたの?」とびっくりされてしまいます。
とはいえ、最近では「平成レトロ」という言葉が流行したり、Y2Kファッションとして2000年代のスタイルが復活するなど、今の時代に合わせた当時のリバイバルも盛んです。博物館の歴史展示を見て、若い子たちが「えっ、これ逆に素敵じゃない?」と新鮮に思うかもしれない。そう考えると、歴史展示の面白がり方にもまだまだ可能性がありそうですよね。
個人的なことを言えば、私はこの常盤平団地の再現展示、インテリアの雰囲気がすごく好きなんです。当時のサラリーマンの憧れだった団地暮らし。「新しい暮らし」への羨望と期待がギュッと詰め込まれた室内の再現に、胸が熱くなります。「エモい」という言葉がきっとぴったり。
自分の今を振り返れば、こんなふうに「憧れの未来」ってあるのかな?と考えさせられます。絶え間ない戦争、不景気、災害の中に生まれた私は、世代のせいもあるのかもしれませんが、明るい未来を想像するのがちょっと難しい。これから社会がどんどん良くなっていく希望はどこから生まれるのだろう?松戸市内のほぼ全域が農村だった当時、4,800戸以上を抱えた常盤平団地が誕生したことを思うと、相当なインパクトだったはずです。
20代の夫婦と1歳の子どもがいる家族が住んでいる想定のこの再現展示、確かに何度行っても本当にこのご家族が暮らしていそう。あまりにも緻密な再現に驚かされつつ、ただ「昔はよかった」で終始しない学びにつなげたい。今の私も歴史の中を歩いていて、いつかは博物館の中に入る。その時、世界にはどんな未来が待ち受けているんだろう?そんなことを考えさせられました。
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