今回ご紹介するのは、北海道にある知床羅臼ビジターセンター。環境省が知床半島の羅臼町に設置し、地域の自然や文化などを今に伝え、知床国立公園を楽しむために必要な情報を発信しています。
知床羅臼ビジターセンターを運営している、公益財団法人 知床財団が販売しているグッズがとても素敵なんです。中でもお気に入りはこの「シレトコ野帳」。研究分野や興味の対象を問わず、フィールドワーカーにはお馴染みの測量野帳、実は様々な博物館でミュージアムグッズとして販売されています。他と一味違うのが、緑色の厚手のカバーでおなじみの測量野帳の表紙に、金色に輝く野生動物の姿が箔押しされていることです。
この精緻な動物の絵は、動物画家である田中豊美さんの手によるもの。図鑑の絵も手掛けることの多い田中さんの絵からは、動物を正確に生き生きと描く筆力だけでなく、その確かな観察眼も垣間見ることができます。その絵が箔押しになっているのですから、素敵なこと間違いありません。
描かれているのは、2022年2月末現在で5種類の動物たち。ヒグマ、クロテン、エゾシカ、エゾリス、キタキツネがおり、どの動物も知床ではおなじみです。筆者のお気に入りはエゾシカ。大きな角、引き締まった体、鋭く遠くを見つめる目つき……厳しい自然環境の中で時折見せる一瞬の表情が、この表紙に収められています。全部集めたくなる、まさに宝物のような美しいミュージアムグッズです。
知床財団のグッズは他にも、拙著『ミュージアムグッズのチカラ』でも紹介させていただいた、「エコ軍手・エコ手袋」などがあり、豊富なオリジナルグッズやコラボレーショングッズがあります。これらはネットショップ「コムヌプリ」での購入も可能で、売上の一部は知床財団による知床の自然を研究し、守り、人々に伝える活動へと役立てられます。遠方にお住まいの方も、これらの素敵なグッズを購入することで、知床の自然を舞台に活動する支援へとつなげることができます。
とはいえ、落ち着いたらぜひ現地に足を運んでもらいたいです。知床は山や海、川、湖に恵まれ、その雄大な絶景は一度見たら一生忘れられません。そしてそこに生息する生き物の命の姿に感動することでしょう。その際にぜひこの「シレトコ野帳」を使って、発見したこと、観察したこと、思い出を絵や文章で書き留めてみてほしいです。
知床羅臼ビジターセンター内の展示では、知床の成り立ちや文化などが紹介されており、展示室中心部にあるシャチの骨格標本はド迫力!筆者も「一度でいいから生で見てみたい…」と感動してしまいました。
そんな知床財団は、知床の生態系を保存するために、研究者などと協力して現地調査を日々重ねています。そして、その研究成果を来館した観光客に伝えるための活動にも取り組んでいます。知床は多くの野生動植物の生息地であり、それを楽しみに観光客も多く訪れます。そのため、知床の魅力の発信に加え、自然を楽しむ際のマナーの啓発も重要な活動のひとつです。
例えば、知床は人が住む場所に隣接した雄大な自然があるため、しばしばヒグマによる農作物などの被害が多発します。さらに、観光客が野生動物との距離を取らずに接近したり、人間の食べ物を与えるなどの「事件」も発生しています。これらの行為はいずれ、野生動物と自動車との接触事故や、餌をもらうために野生動物の方から積極的に人間に近づいてしまうなどの被害につながります。特にヒグマは人間の食べ物の味を覚えてしまうと、より積極的に人間の方へやってくることがあります。大切なのは人間が意識を変えること。野生動物のためにもマナーを守り、安全に知床の自然を楽しむことが求められるのです。
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