千葉県南部の安房地域では、高校生と市民グループが協働でウガンダ共和国の子どもたちを支援する交流活動が1994年から続いています。きっかけは、県立安房南高校で愛沢伸雄教諭が地域教材を活用した平和学習を実践した際に、生徒たちが自分たちにできる平和活動を考え始めたことでした。そのとき来日していたNGOウガンダ意識向上協会(CUFI)のスチュアート・センパラさんと縁がつながりました。
ウガンダは、「アフリカの真珠」といわれるほど美しく自然豊かな国ですが、紛争が絶えず、政治経済の混乱、教育や医療の崩壊が続いていました。長期間の内戦のうえにエイズが蔓延して、孤児は数百万人ともいわれました。望まない少年兵に仕立てられて心に傷を負った者や、貧困で家もなく食事も満足にとれない者があふれていました。CUFIは子どもたちに生活や教育を与え、自立に向けてサポートしていたのです。
心を動かされた生徒たちは、保護者や同窓会の方々、市内の商店などの協力を得て、バザー売上や募金を送金しました。1994年から毎年送金を続け、2000年には職業自立のために洋裁を学ぶ職業訓練施設が現地に設立されました。この施設は、高校の名前を取って「安房南洋裁学校」と命名されました。
2004年、地域資源を保存活用したまちづくりを進めるため、早期退職した愛沢教諭がNPO法人安房文化遺産フォーラムを立ち上げました。引き続き支援活動の窓口を担当しながら、センパラさんとの信頼と友情を育んできました。
2008年には、安房南高校が統廃合のため閉校となり、統合先の県立安房高校JRC(青少年赤十字)部が継承し、さらに私立安房西高校JRC部にバトンが手渡されています。この間、活動に関わった高校生は延べ400名を超え、なかには母子2代にわたって参加している方もいます。
一方的な支援ではなく、絵画作品を送られたり、手紙の交換をしたり、様々な交流が続きました。ウガンダでの持続可能な農業や社会づくりのあり方を知ることから、私たちは多くの気づきや学びを得ています。
この間、NPOでは安房・平和のための美術展や館山病院健康友の会など、多様な市民ネットワークに呼びかけ、支援の輪は広がっていきました。20周年記念には、安房南高校のセーラー服着用の女生徒像を現地に寄贈しました。
昨年は、孤児の送迎や生活物資の運搬用車両が野生の水牛とぶつかって故障したため、緊急の支援依頼がありました。インターネットを通じたクラウドファンディングや新聞などを通じて募金協力を呼びかけたところ、多くの賛同者から温かい募金が寄せられました。目標額120万円を達成し、現地ではトヨタハイエースの中古車両を購入することができたと、喜びの声が届いています。
2018年夏、NPOメンバー3人(鈴木正博さん、愛沢香苗さん、河辺智美さん)がウガンダを訪問し、これまでの支援成果の視察と今後の可能性を模索し交流を深めてきました。
運搬用車両購入の緊急支援の際、館山市内で珈琲焙煎工房カフェポラリスを経営する鈴木正博さんは、ウガンダのコーヒー豆を仕入れてチャリティ販売を企画し、協力してくださいました。コーヒーベルトと呼ばれる赤道直下に位置し、標高が高く昼夜の温度差が大きいウガンダでは、自然栽培の良質なコーヒー豆を栽培することができ、アフリカ第二位の生産量を誇っています。
これを契機に、ウガンダのコーヒー豆をフェアトレードで取り扱い、継続的な支援につなげられないだろうかと、鈴木さんから提案がありました。フェアトレード(公平貿易)とは、開発途上国に暮らす生産者から公平な価格で商品を購買し、経済的自立を支援する国際協力の方法です。新しい支援のかたちが生まれ、これまで続いてきた交流の輪がさらに広がる可能性が期待できます。
ウガンダコーヒーは風味豊かで、自然にも体にもやさしいといわれています。その魅力を広く知っていただきたいと思い、安房地域内の喫茶店などに呼びかけたところ、22店舗の皆さんが快く賛同してくださいました。そこで、10月を「ウガンダコーヒー月間」と位置づけて、各店舗でウガンダコーヒーの提供やコーヒー豆の販売をおこなうキャンペーンを展開することとしました。
奇しくも、10月1日は「国際コーヒーの日」であり、9日は「ウガンダ独立記念日」にあたります。7日は館山病院感謝祭でおこなうウガンダ支援バザーでもコーヒー豆も販売し、ウガンダ訪問視察報告会も行います。
この機会に、多くの皆さんが美味しいウガンダコーヒーを味わい、地球の裏側の生産者と販売者と私たち愛飲者がつながることを通じて、市民交流がさらに深まり、貧しい子どもたちが笑顔で学校に通い続けられるよう、ささやかな力添えになれば幸いです。
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