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「地球と暮らしについて考えるエコ・マジック」バックナンバー

0172019.07.23UPキャッシュレス社会

 最近、現金を使わなくても買い物ができる場所が少しずつ増えてきている気がします。PASMOやSUICAなどの交通系カードやLINE PayやPayPayといったQRコード決済サービスなどです。
 環境について勉強していると、「持続可能な社会に向けて」というフレーズをよく耳にします。持続可能な社会とは、環境が保護され、経済が活性化し、社会の公正さや公平性が実現する事によって成り立つ質の高い社会を言います。(東京商工会議所「エコ検定公式テキスト第7版」より一部抜粋)
 キャッシュレス化の推進は、実店舗等の無人省力化や、不透明な現金資産の見える化と流動性の向上、不透明な現金流通の抑止による税収向上、不透明な現金資産の向上、支払いデータの利活用による消費の活性化など様々なメリットが期待されます。(経済産業省キャッシュレス・ビジョン H30より一部抜粋)
 つまり、持続可能な社会の要素である、環境の保護、経済の活性化、社会の公正さや公平さの実現などがキャッシュレス化によって推進されるのではないでしょうか。

 しかしながら、日本では現金への信頼性が高く、キャッシュレス化が遅れていると言われています。そこで、一人一人がキャッシュレス社会についての理解を深め、興味・関心を高めてもらうことを目的に、今回のエコ・ジックを考えました。

エコ・マジック動画017

解説

 世界各国のキャッシュレス決済比率は、2015年現在で韓国89.1%、中国60.0%、カナダ55.4%、イギリス54.9%などの結果が示されている一方で、日本は18.4%にとどまります(平成30年4月経済産業省策定「キャッシュレス・ビジョン」より)。ただ、日常生活を振り返ると、すでに口座振り込みや引き落とし、クレジットカードによる支払いなど、少なくはない場面でキャッシュレス化が進んでいることにも気づかされます。
 日本政府は、平成29年6月に「未来投資戦略2017―Society 5.0の実現に向けた改革」を閣議決定しており、オールジャパンの取組として「今後10年間(2027年6月まで)に、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」という目標を掲げています。さらに「キャッシュレス・ビジョン」では、4割達成の目標を前倒しするとともに、将来的には80%をめざすとしています。
 キャッシュレス化の推進によって、ミヤモさんが引用しているようなメリットへの期待もされる一方で、個人情報の取り扱い、支払いに対する現実感の希薄化などといった課題も指摘されています。

 さて、キャッシュレス社会の実現と環境とのかかわりについては、必ずしも直接的な関連があるとはいえませんが、いくつか環境負荷の軽減について考察する例も見られます。
 例えば、日本国内で流通している紙幣(銀行券)は、2018年末時点で110.4兆円、枚数にすると169.8億枚と公表されています。これを積みあげると、その厚みは富士山の約450倍に達する約1,698km、横に並べた長さでは地球から月までの距離の約7倍に相当する264万kmにもなります。これだけの流通量を維持するため、日本銀行では毎年約30億枚の紙幣、また約11億枚の硬貨を製造しています。その製造過程では原料の紙や金属の調達はもちろん、加工等に薬品などが大量に使用されますし、輸送・配送に使われるトラック等からのCO2排出、また古くなって廃棄処分する際の環境負荷もかかります。キャッシュレス化が進んでも電気などのエネルギーは必要ですが、大量の現金を製造・流通・回収・廃棄等するための環境負荷に較べると、小さくはない削減効果が見込まれます。
 また、レジで印字されるレシートを電子化することによる削減効果の試算結果もあります。東芝テック株式会社によると、レシートの年間発行枚数は約135億枚、年間で消費されるレシート用紙は2.4億ロールで、1ロール当たり63mとすると、総量で地球378周に相当する約1,512万kmにもなります。電子レシート化によって、紙レシートの削減率が5%・10%・30%になれば、それぞれ1,953kWh、3,906kWh、11,717 kWhの電力が削減できるとしています。

 スマート社会に向けた世界的な流れの中で、キャッシュレス化は今後ますます進展していくことと思われます。そのメリット・デメリットをきちんと評価しつつ、十分な配慮のもとで進めていく必要がありますし、結果として環境負荷をはじめとする社会コストを削減していくことで持続可能な社会の実現につなげていくことが求められます。

(一般財団法人環境イノベーション情報機構)

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