“ボランティア”と聞くと、みなさんはどんなイメージをするでしょうか??社会貢献、奉仕活動、いろいろあるのではないでしょうか。中には多くの現場でボランティアをされている方もいることと思います。
ブラインドサッカーの大会では、ボランティアスタッフの方たちが大いに活躍をしています。年齢、職種、性別、他にも様々な点で異なる人たちが集まり、それぞれの“違い”を超えて協力し合い、運営をしていきます。私自身が、ブラインドサッカーを支える人たち、という切り口で思い浮かべるのは、そういったボランティアとして支えてくださる皆さんです。
ブラインドサッカーに関わる以前は私自身がボランティア活動をするという習慣がなかったので、当初は皆さんの熱量に驚いた記憶があります。みなさんは果たして何を求め、ブラインドサッカーの現場でボランティア活動をしてくださるのでしょうか。反面、ボランティアのみなさんを受け入れる側である運営者は、何をお返しできるのでしょうか。すごく本質的な部分で、とても重要な部分に思います。
多くのボランティアさんと話をさせていただく中で、ブラインドサッカーの現場に来てくださる理由が垣間見えてきます。もちろん人それぞれ異なる部分はありますが、私自身がお話を聞いていて感じる部分で言うと、
①力になれているという実感が得られる。
②選手たちが競技する姿に力をもらえる。
③つながりが生まれる。
この3つが特に多いのかなと感じます。私自身も、学びのため複数の競技のボランティアに参加しましたが、ブラインドサッカーは上記の①~③の要素が非常に強いように感じます。言葉が適切ではないかもしれませんが、ボランティアをすることの“付加価値”が存在するということだと思います。
この部分、運営側が考えるべきことは、ボランティアの皆さんを単純なマンパワーとしてだけで捉えず、この場から何を得ていただきたいかを考え、設計する必要があるという意味も持っていると思います。そうすることで、当事者意識を持っていただける人を増やすことができる。その方々が熱源となって、社会の中で一種のエバンジェリストとなり、輪が大きくなっていくと思うのです。
ボランティアとして支えてくださる方々は、実は競技を普及発展させていく意味においても非常に重要な存在として捉えることができ、特にマイナースポーツでは大切に感じます。
実際、ブラインドサッカーには、“おじさんず”という名のコミュニティ(女性もいますが苦笑)があり、イベントごとに活発なフィードバックがあったりと、様々な働きかけがなされています。ひとつのコミュニティであり、仕事や家庭とはまた異なる場所があることは、心の豊かさにもつながることと思いますし、競技運営においても重要な役割を担っていただける。互いにwin-winな関係値を持てているように思います。
一方、支えてくださる企業の目線で言うと、何を期待して競技を支えてくださるのか。逆に言うと、競技としてお返しできるものは一体何なのか。支援を受ける側の立場に立てば、ここが、クリエイティブな部分で、頭と心を使って設計が必要な部分です。
メジャースポーツにおいては広告価値に重きを置かれてきました(現在は各競技、裾野が広がり母数も大きくなってきているので、それだけでは難しい時代にはなってきていますが。)が、特段マイナースポーツで同じ価値を生み出すことは容易ではないはずです。が故に、社会的インパクトをどう共に生み出すのか、競技を通じた社会貢献、社会変革をどう起こしていきたいのか、その実現可能性があるか、このあたりが明確になっていたうえで事業設計ができている必要があるかと思います。ブラインドサッカーは、まさにその部分が障がい者スポーツ競技の中では突出している部分です。
CSR(企業の社会的責任)もそうですが、よりCSV(共有価値の創造)という考え方に価値がおかれる時代になってきているのだと思います。単純に支援や広告価値の中で協賛を得るパターンももちろん大切ですし、継続的な競技運営、経営をしていく上では必要不可欠です。ですが、自分たちの扱う競技、クラブは一体社会に対してどんなことができるのか?どんな価値を創造できるのか?この部分を明確にできることがとても重要ですし、共創していける土台を持つことが、息が長く社会の中に根付いていく上では必要不可欠に感じます。
私自身の生きる上でのVISIONは、『スポーツの力で社会を豊かにする』なのですが、これはつまるところ、スポーツの価値を信じ、スポーツの価値を言語化し、広げること。定着させること。そして、社会を良い方向に変革していくことになります。大それたことを言っていますが、自分一人にできることなんて本当に小さいことしかありません。その中で、今後私自身はブラインドサッカーにどうかかわっていくのか、以前にも触れたような気もしますが、少し触れてみたいと思います。
①ブラインドサッカー協会育成部でのアシスタントコーチとしての活動
②自分にできうる情報発信
③ブラインドサッカー選手との協業
現状上記3点を中心に据えています。
一度、競技から距離を取るべくブラインドサッカー協会を退職したものの、継続したご縁を持たせてもらっていることは、嬉しい限りです。その中で、6月11日に行われた、ブラインドサッカー女子日本代表vsブラインドサッカー男子ユーストレセン選抜の試合で私は、ユーストレセンのガイド(ゴール裏で攻撃する味方選手に声や音でゴールの位置や状況を伝える役割)として参加しました。初めての経験でしたし、自分自身がサッカーをやっていたころ、また運営統括として大会のマネジメントをしていたころとは異なる緊張感を味わうことができました。もちろん、選手の活躍が最優先であり、それを引き出す役割として参加するわけですが、想像以上に緊張感を感じたのです。とても新鮮な感情でした。
結果は4-2でユーストレセンが勝利したわけですが、両チームとも死力を尽くした好ゲームが展開され、限定公開の中でお越しくださっていたパートナー企業の皆様、ご家族の皆様も手に汗握る展開で、試合後は大きな拍手を送ってくださいました。
私自身は、ブラインドサッカーにこれまでかかわってきた中で感じたことがなかった緊張感を含め、目の前のゴール前での攻防に一喜一憂し、ゴールした瞬間の感動、ゴールできなかったときの悔しさ、などたくさんの感情を短時間の中でも感じることができ、また新たなブラインドサッカーの魅力を感じられたことを本当に嬉しく感じました。一つの側面だけで競技に触れるのでなく、多面的に触れることで新たな気付きや、新たな楽しさを感じることができるのだなということを強く感じたのです。
少し周りを見てみると、ブラインドサッカー協会のスタッフや、ボランティアに来てくださっていた方がレフリーの資格を取って試合で笛を吹いていたり、協会スタッフがチームを立ち上げたり、息子さんのお見送りしていたはずのお母さんがクラブチームでガイドをやってみたりなど、実は既にお一人お一人多様に関わるシーンという事例があることに気づきます。それってこの競技の良さかなとも思いますし、関わり方を多面的に用意できることで、このブラインドサッカーという競技に関われる接地面が多くあることはとても大切なことな気がします。
様々な側面で支える方がいらっしゃるのがこのブラインドサッカーです。もちろん、どの競技にも支えてくださる方が存在して成り立っているかと思いますが、ことブラインドサッカーという競技はその意味付けが深く存在しているように思います。それが、なかなか見えにくいものではありますが、関わる方たちの心をつなぎ留め、そしてつなぎ合わせる状態を生んでるのではないかと思います。
私自身、まだまだこの競技の魅力に気づいていない部分がたくさんあるのではないかと感じていて、これからも可能な限り、様々な形でかかわってまいりたいと思います。読んでくださっている皆さんも、ぜひブラインドサッカーに様々な形でかかわってみていただきたいなと思います。
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