ブラインドサッカーには、専用のスタジアムがありません。Jリーグのホームゲームのように、同じ会場で行う事が実は非常に困難であり、継続開催するにはいくつものハードルを越える必要があります。それは、国内大会、国際大会と規模は違えど、同じような課題があるわけですが、我々が行っている国際大会は、仮設スタンドや各種ブース設営等の会場環境を整えるところから、大会実施、撤収まで含めるとおよそ2週間ほどの期間を必要とします。2週間も会場をお貸しいただける会場など、日本中探せど、ほぼないわけです。
そんな中、2018年より3年連続という枠組みで、東京都品川区にて国際大会を実施させていただいておりますが、(2020年大会は残念ながらコロナウィルスの影響により中止の判断といたしました。)区内の施設をお貸しいただきながら、一から仮設スタンドを設営しています。2018年大会は1910席、2019大会はテーブル席をつくるなどの工夫をし、1720席を設置しました。また、来場者に楽しんでいただけるような数多くのブース出展、種類豊富なキッチンカーの配置、ピッチさながらにブラインドサッカーの競技用フェンスを設置した体験会ゾーンなど、導線設計含め、まさに手作りの会場設計を行っています。広告代理店に入っていただいたりなどすると、準備や資金調達含め、もう少し楽なのかもしれませんが、そうしないのはあくまで、『ブラインドサッカーらしい、ビジョンを具現化した会場にする』という強い思いがあるからにほかなりません。その代わり、準備には非常に苦労がつきまといます(笑)。
多くの人、多くのお金、多くの組織が動くため、まさに関係者総力戦で挑むのです。
「誰もが楽しめる観戦環境づくり」という観点で、我々の現時点での最大限のバリアフリー設計や、視覚障がい者やブラインドサッカー初心者でも楽しんでいただけるようにと用意している、ラジオ音声実況。障がいのある方の観戦サポートをするスタッフの常駐、そしてブラサカの競技特性に合わせた演出、といった環境づくりをしてきておりますが、あらゆるトライ&エラーを繰り返しながら、今のスタイルになってきています。また毎回、新たな実証実験をしていたりして、次に導入するサービスやアトラクションをつくりこんでいたりもします。『現状維持は退化なり』とはまさしくであり、少しでも成長変化した姿を来場された方に見ていただければと考えています。
その中で私自身意識していることと言えば、まずはやってみる。ということでしょうか。新規の取り組みにおいては、少しでも良い部分があったら、予算と一度はにらめっこしますが、基本GO!します。実施後に振り返りをし、見切ることもありますし、継続導入することもありますし、少し長い目で育てていこうとすることもあります。ブラインドサッカーらしい会場づくりを意識しながらも、良いものはどんどん導入していき、大会のあり方自体を常にアップデートしていく。これは強く意識しているポイントのひとつです。
もうひとつ、これも非常に強く意識しているのですが、関わる人がみな“主役”であるということ。もちろんプレーヤーズファーストではあるのですが、スタッフも、ボランティアの皆さんも、お客様も、関係業者の皆様も、みんなが主役であるという考え方です。非常に綺麗事っぽく聞こえはするのですが、この考え方がブラインドサッカーの大会現場ではとても大切だと考えています。選手やコーチングスタッフがプレーをもって自己やチームを表現し、ボランティアさんは活動を通じた充実感を感じ、スタッフは現場での活動を通じ成長し、お客様はプレーを見ることで明日への活力を感じる。それぞれの立場での楽しみ方、参加の仕方があるなかで、すべて大切にしたいのです。その理想的な空間づくりまでは程遠い感もありますが、『みんなでつくる』がブラインドサッカーの大会で大切にしたい、すべき考え方です。この考え方から、誰もが楽しめる観戦環境づくりをしようという発想にもなっており、そう考えるとやはり『思い』や『考え方』がとても大切で、そこから様々なアイディアが出てくるのだなということを実感します。
私自身、今月に実施予定であった国際大会を中止せざるをえなかったのは非常に苦しい決断でした。パラスポーツの限界突破をということで、全席有料の中で11,000名の来場者目標を高々と掲げ準備を進めていましたので、ある意味心にぽっかりと穴が空いたような感覚です(笑)。今後は、パラリンピック前には国内チームの親善試合が主な機会になり、パラリンピック後には日本選手権を実施する予定でいます。協会HPでも発表していきますので、ぜひご観戦いただければと思います。
また、今回中止せざるをえなかった国際大会に代わるものも何かできないかと思案を始めております。ピンチはチャンスとよく言いますが、こんな時だからこそ、ブラインドサッカーからチャレンジングな発信をしていければと思っています。
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