今回は視点を変えて、日本国内各地に存在するブラインドサッカークラブ(以下、「ブラサカクラブ」)に触れていこうと思います。
私自身、この約7年の間、全国各地に足を運び、クラブチームのみなさんと地域リーグを開催したり、体験会を開催したりしていました。現在、日本国内のブラサカクラブ数は30を超えており、年々増え続けています(弱視者で構成するロービジョンフットサルのチームも含んでいる数です)。北は北海道から南は沖縄まで、各地にブラサカクラブチームが存在し、かつ、それぞれがそれぞれの在り方で活動しています。その多様性こそがブラインドサッカーらしさであるのかなと感じる部分と、反面、現実的に継続していくことの難しさを感じる場面も目の当たりにしてきました。特に地方クラブの運営に関しては。
では、継続的に活動していく上で必要になることは何なのか、そして、そういった中、各地ではどのような運営をしているのか、というポイントを意識しながら、ブラサカクラブのチーム事情に触れていきたいと思います。
現状、ブラサカクラブチームの中には、年間10日~20日ほどの活動レベルのクラブもあれば、週に2~3回ほどトレーニングを積み技術向上に励んでいるクラブもありと、様々な在り方が混在している状況です(コロナ禍で制限が大きくかかっているのが実情ではありますが)。法人格を有しているクラブもあれば、草サッカー的にやっているクラブもあります。行政と関係性を構築しながら、様々なサポートを受けているクラブもあれば、すべて(グラウンド確保、サポート人員、そこにかかる費用等)を自分たちで毎回賄っているクラブもあります。当たり前ですが、どの形が良い悪いということはありません。ブラインドサッカーを“どう捉えているか”でチームの在り方が変わってくるのだな、という印象です。
ブラインドサッカーを、自分たちの人生の+αにと捉えているクラブ、より社会性を持たせて社会資産に育てていくことを志すクラブとでは活動内容や必要となるリソースも変わってくるわけです。
そういった中で、ブラサカクラブチームを運営するうえで最低限必要なものと言えば、サッカーやフットサルとあまり変わりません。
グラウンド、ボール、必要人数、各種用具、が基本的なものでしょうか。加えて必要になるのが、"サポーター"の存在です。視覚障がい者の移動や練習(ボール拾い、ガイド、様々な環境情報の伝達など)には、実は多くのサポートが必要です。この、”サポーターの確保”は最初の課題かもしれません。グラウンドや用具があっても、サポートしてくれる人材がいなければ、練習は成り立たないのです。
すべて自前で揃えるとなると、やはりそれなりの労力やコストもかかりますので、継続した活動には、ハード面とともに、ブラインドサッカーに魅力を感じて、協力したい!といった心を持ってくれている、そんな”サポーター”が必要不可欠なのです。
しかしながら、先ほども触れたように、ブラインドサッカーの国内クラブチームの在り方は本当に多様であり、営利ではないものの、収入を確保しながら活動しているクラブも出てきています。私の生まれ故郷である宮城県仙台市を中心に活動する「コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ」はまさにその代表格と言えます。行政との連携、企業との協業、教育現場への価値提供を行いながら、マネタイズをし、ハード面、ソフト面ともにこれまでのブラサカクラブの活動規模から頭一つ抜けたクラブとなっていますし、今後継続運営していく上でのモデルケースとなっていくのではないかと思っています。
接していて感じるのは、かかわる方々が純粋にブラインドサッカーの魅力を心から感じているという点と、役割分担が明確であるということです。クラブ関係者をAメンバーとするのならば、そこまでコアではないけれど、コルジャ仙台のことを知っている、応援している、何かイベントがあれば現場へ駆けつける、というBメンバーといえるような方々が非常に多いことが特徴的です。これも、地道に仙台市内、宮城県内で体験会などの活動をし、人脈を通して認知を獲得するために行動されてきた賜物なのだと感じています。ブラインドサッカーを心から素晴らしいと感じ、多くの方々に届けたいという、純粋な”想い”がすべてのはじまり。まさに、”想いに勝るものなし”ということを感じます。
最後になりますが、東京パラリンピック後の国内のブラインドサッカーはどのようになっていくのだろうという点について、この国内のクラブチームという単位で考えてみたいと思います。
このコロナ禍において、当たり前が当たり前ではなくなってしまった今、ブラサカクラブも例にもれず活動の自粛をはじめ、大きなダメージを受けています。もしかしたら今回を機に、クラブとしての活動が縮小してしまうクラブがあっても不思議ではありません。練習ができない、試合がないこの状況ではモチベーションを保つのは容易なことではないからです。
反面、共生社会が謳われている現代では、地域社会と密接に関わることで、競技以外の側面で価値を発揮していける余地は十分にあると思っています。逆に言えば、より継続的に、持続可能な運営を志向するのであれば、地域社会との密接な関係が不可欠だとも言えます。
もちろん、冒頭に述べたように、クラブの在り方はクラブのみなさんが決めることであり、正解はクラブの数だけあります。
いまだ先が見通しにくい世の中ではありますが、東京パラリンピック、ブラインドサッカーが、日本社会にもっともっと根付いていくことを願ってやみません。
私自身、微力ながらでも貢献していければと思います。
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.