6月2日、東京都港区のとある公立小学校のグラウンド。小中が同じ敷地内に併設されており、施設はさながら有名私立校のようです。グラウンドはもちろん人工芝。緑が映えるそのグラウンドにて、ある大会の準決勝が行われていました。両チーム前日から連戦を戦っており、体力的にも2日間で一番厳しい状況下の試合です。1対1でPK戦も想定されだした中、1人の選手が状況を打開します。ゴールキーパーからのスローイングを、相手ゴールまで15mの左サイドで倒れこみながら見事なトラップ。素早く立ち上がり、対峙するディフェンダーを、前後に振りながら振り切り、ゴールに迫ります。そして、丁度45度の角度から、ゴールの対角へ向けて地を這うような鋭いシュート。これがネットに突き刺さりゴール!
これが決勝ゴールとなり、見事に決勝進出を決めました。
上記は、第18回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権の東京で行われた予選ラウンド1の様子です。準決勝、「free bird mejirodai」と「buen cambio yokohama」【1】の一戦。勝利した「free bird mejirodai」は近年できたばかりのチームであり、初の決勝進出となりました。敗れた「buen cambio yokohama」は3位決定戦へ進出となります。
6月1日・2日の予選ラウンド1、6月8日・9日に福島で行われた予選ラウンド2の結果を受けて、7月7日に東京都調布市アミノバイタルフィールドで開催されるFINALラウンドとして、決勝戦、3位決定戦が実施されます。
近年はメディアで取り上げられる機会も増えてきており、この視覚障がい者のためのスポーツを一度や二度、目や耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。誤解を招く前に言及しておくと、国際的な大会(パラリンピックや世界選手権など)においては、参加できる選手はいわゆる『全盲』と言われる選手のみとなります(※ゴールキーパーは目が見える選手がやる等のルールはこの後に説明を)。しかしながら、国内では普及や選手確保の観点から、大会によってルールを変えており、上記の日本選手権で言えば、視覚障がい者(全盲でも弱視でもよい)が2名以上必ずピッチにいること、としています。つまり最大2人は健常者も出てよいということになります。ただし、選手は全員、アイパッチとアイマスクを着用して視覚を遮り、光すら感じられない全盲の選手と同条件でプレーします。
1980年代にスペインでルールが統一されたことから、スペイン発祥と言われているこのスポーツ。実はブラインドサッカーという呼び方は日本独自の呼び方なんです。IPC管轄の大会の場合に使用される競技名は、5人制サッカーとなります【2】。日本には2001年頃に入ってきており、少しずつ普及してきました。日本ブラインドサッカー協会自体は2002年の設立発足となっています。
人は視覚から約80%の情報を受け取るといわれていますが、それがない状況ですので、必然的に『音』の情報が重要になり、当然ルールに工夫が必要となります。競技を行う上での大きな特徴は以下になります。
上記が特徴的な部分と言えるでしょうか。
私自身も実際にやったことがありますが、まず自分がどこにいるのか、から始まり、味方や相手がどこにいるか、そしてゴールはどこにあるのか。いろいろな音を聞き分けてゴールを守り、そして攻めるので、とても頭が疲れた記憶があります。レベルの高い選手に聞くと、音の取捨選択を行っているようで、むしろ欲しい情報(音)を、コミュニケーションによって、自ら取りにいっているとのことでした。やはり何事も『できる』人は複雑に絡み合ったもの(情報など)をシンプルにする力があるのだな、と感じたヒトこまでした。
では私も含め、ブラインドサッカー協会自体が実現したいことは何なのか。
競技をたくさんの方に知っていただき、応援してほしい。視覚障がい者が希望を持てる環境をつくりたい。通常の障害者スポーツ団体が持っているような思いは当然のごとく持っています。しかしながら、我々はより『社会にどのようなインパクトを残すのか』『この競技を通じてどのような社会にしていきたいのか』という、より広く、大きく、深く、考えたい。そこで、掲げているビジョンは、以下です。
『ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること』
これを実現させるために、日々我々が行う事業が存在すると思っています。この競技にはそれだけの力や可能性がある。
次回からは、そのビジョンの実現に向けて行っている取り組みや、私自身のブラインドサッカーとの出会い。また、国内で行っている様々な大会などにも触れ、多角的にこのブラインドサッカーについてお話しできればと思っています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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