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「統計から暮らしを読む」バックナンバー

0112026.09.29UP家庭の中で使われているエネルギーの種類は?

 皆さま、こんにちは。お元気でしょうか。今年の夏は痛ましい災害がとても多かったですね。熊本の地震、千葉をはじめ全国各地で発生した豪雨、さらにはネパールでの信じられないような大規模土石流…。私は家族が福井や熊本に住んでいるため、ニュース速報を見るたびに、居ても立ってもいられない不安な気持ちになりました。気候変動の影響を少しでも抑える努力はもちろん必要ですが、それと同時に、このような時代に適応していくための備えも欠かせないことを強く実感しました。

 さて、今回は皆さんが使用しているエネルギーの種類に注目したいと思います。皆さんのご家庭ではどのようなエネルギーを使っているでしょうか。また、それらは何のために使われているでしょうか。ガスを使用している場合、それは都市ガスでしょうか、それともLPガス(プロパンガス)でしょうか。皆さんは答えられますか。
 改めて考えてみると、私たちの暮らしはさまざまなエネルギーによって支えられています。今回は、そんなエネルギーの使われ方について、データを見ながら考えてみたいと思います。

家庭用エネルギー消費量のエネルギー種別内訳の変遷

 現代の日本の家庭で使われている主なエネルギーには、電気、ガス(都市ガス・LPガス)、灯油があります。まずは、これらの使われ方がどのように変化してきたのかを見てみましょう。
 図1は、一般家庭におけるエネルギー消費量の内訳を1970年度から2024年度まで並べたものです。なお、このデータは毎度おなじみの環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査」(家庭CO2統計)(注1)ではなく、弊社が長年、総務省家計調査を分析して作成している『家庭用エネルギー統計年報』から引用しています。


【図1】家庭用エネルギー消費量のエネルギー種別内訳の変遷

【図1】家庭用エネルギー消費量のエネルギー種別内訳の変遷
(全国平均・1970年~2024年 ※2人以上の世帯に限定) (注2)


 まず意外に思うのは、1970年度には全体の16%を石炭が占めていたことです。現在、一般家庭で石炭を見ることはほとんどありません。私自身も一度も家庭で石炭を使う場面を見たことがありませんが、当時は特に寒冷地の暖房で利用されていたようです。北海道の企業では「越冬手当」として石炭購入費が支給されていた例もあったそうです。しかし、石炭は1980年代に入るとほとんど使われなくなります。
 一方で、1970年代から現在に至るまで一貫して割合を増やしてきたのが電気です。それに伴い、灯油やLPガスの割合は小さくなっています。電気の割合は1970年度には19%でしたが、2024年度には全体の半分を占めるまでに増加しました。暖房、お風呂、コンロなどの分野で電化が進み、さらに家電製品や電子機器の普及によって電気を使う機会も大幅に増えました。家庭で使われるエネルギーの姿は、電化製品の進歩とともに大きく変化してきたのです。

家庭用エネルギー消費量のエネルギー種別内訳の変遷

 今度は、現在の家庭でエネルギーがどのように使われているのかを家庭CO2統計から見てみましょう。図2は、家庭で使用されているエネルギーの種類を地方別(注3)に示したものです。なお、ここではエネルギーの種類を以下の6区分に整理しています。

<ガス無し>
・電気のみ
・電気+灯油
<ガスあり・灯油なし>
・電気+都市ガス
・電気+LPガス
<ガスあり・灯油あり>
・電気+都市ガス+灯油
・電気+LPガス+灯油


【図2】家庭で使用されているエネルギーの種類(地方別・2023年度)

【図2】家庭で使用されているエネルギーの種類(地方別・2023年度)(注4)


 この図から、地域によって使われているエネルギーの組み合わせが大きく異なることが分かります。
 まず、関東甲信、東海、近畿などの大都市圏では、都市ガスを使用する世帯の割合が非常に高くなっています。都市ガスは道路下のガス管を通じて供給されるガスで、その名のとおり都市部で普及が進んでいます。特に大都市圏では料金も比較的安価です(注5)。一方、ガスを使用しない世帯の割合は比較的小さく、例えば関東甲信地方では「電気のみ」の世帯は全体の7%にとどまり、10地方の中で最も低い割合となっています。大都市圏では集合住宅に住む世帯が多い一方、マンションでは建設コストや設置スペース、配電設備などの制約からオール電化が採用されにくい傾向があります。そのため、「電気のみ」世帯の割合が低くなっていると考えられます。実際、「電気のみ」の割合は北陸、中国、四国などで比較的大きくなっています。

 また、北海道や東北といった寒冷地では、灯油を使用している世帯の割合が高いことにも気づきます。本コラム第4回(注6)でも紹介したように、寒冷地では灯油ストーブが今なお広く利用されています。灯油は地域差を象徴するエネルギーといえるでしょう。
 先ほどの図1では、灯油消費量が長期的に減少していることを示しました。都市部に住む若い世代の中には、灯油を使った経験がない方もいるかもしれません。しかし、この図からは、灯油が現在でも特に寒冷地の暮らしを支える重要なエネルギーであることがよく分かります。
 なお、図3は図2と同じ内容を都市階級(注7)(都市の人口規模を示す指標)別に示したものです。こちらを見ても、人口規模の大きい都市では都市ガスの利用割合が高く、人口規模が小さくなるにつれて、電気や灯油の割合が大きくなることが分かります。


【図3】家庭で使用されているエネルギーの種類(都市階級別・2023年度)

【図3】家庭で使用されているエネルギーの種類(都市階級別・2023年度)(注4)


使用しているエネルギーの種類と用途

 最後に、それぞれのエネルギーがどのような用途で使われているのかを見てみましょう。図4は、エネルギーの用途を都市階級別に示したものです。少し複雑な図ですが、お付き合いください。なお、図中にガスの用途として「発電」がありますが、これは家庭用燃料電池(エネファーム)、ガスエンジン発電・給湯器(エコウィル)、ガスエンジン発電・暖房器(コレモ)といった、ガスを使って発電する設備の有無を意味しています(注8)。


【図4】使用しているエネルギーの種類とその用途(都市階級別・2023年度)

【図4】使用しているエネルギーの種類とその用途(都市階級別・2023年度)(注4)


 まず電気に注目すると、暖房や冷房に利用している世帯の割合が非常に高いことが分かります。これはエアコンの普及によるものと考えられます。一方、給湯やコンロに電気を使用している割合は人口の少ない都市階級3で高くなっています。これは図2や図3で見られたオール電化の傾向と一致しています。
 次に都市ガスとLPガスを見ると、都市圏である都市階級1では、都市ガスを給湯やコンロに利用している世帯の割合が非常に高い一方、LPガスは都市ガスが普及していない都市階級3で多く利用されています。両者では普及している地域が大きく異なることが分かります。また、暖房用途に目を向けると、都市ガスやLPガスを利用している世帯の割合は比較的小さく、特にLPガスはごく少数です。ガスの主な用途は、給湯とコンロだといえそうです。灯油については、人口の少ない地域で使用世帯の割合が高い点はLPガスと共通していますが、用途の中心は暖房です。
 エアコンは他の暖房機器と比べるとエネルギー消費効率が非常に高く(本コラム第10回(注9)でもこの点に触れています)、また電気で動くので、太陽光発電のような再生可能エネルギーも使えます。そのため、脱炭素に向けた対策として、ガスや灯油を燃やして使用する、燃焼系ストーブからエアコン暖房への転換が求められています。確かにエネルギー効率の面ではエアコンに優位性があります。しかし、ガスストーブや灯油ストーブとエアコンでは暖まり方が大きく異なります。灯油ストーブに慣れ親しんだ人にとって、エアコン暖房への切り替えは決して簡単ではありません。

 エネルギーにはさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴と役割があります。エネルギーの使われ方を見ていくと、地域性や生活スタイルの違いも浮かび上がってきます。私たちはつい「家庭のエネルギー」とひとくくりに考えがちですが、その実態は実に多様です。ぜひ一度、ご自宅でどのようなエネルギーを使っているのか調べてみてください。普段は意識していない「わが家のエネルギーの個性」が見えてくるかもしれません。

注釈

(注1)
環境省 家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)
(注2)
家計調査年報を基に住環境計画研究所推計。
出典)住環境計画研究所, 家庭用エネルギー統計年報
(注3)
家庭CO2統計における地方と都道府県の対応は以下の通り。
北海道:北海道
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東甲信:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県
北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県
東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
沖縄:沖縄県
(注4)
令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査(確報値)を用いて、住環境計画研究所が作成
(注5)
一方LPガスは、事業者によりそれぞれの家までガスボンベで配送されるもので、地方部では根強く利用されています。LPガスは利用料金が割高ですが、災害時に強いというメリットもあります。
(注6)
エコレポ「統計から暮らしを読む」第4回:家庭の中でよく使われている暖房機器は?
(注7)
家庭CO2統計における都市階級の意味は以下の通り。
都市階級1:県庁所在市および政令指定都市
都市階級2:人口5万人以上の市
都市階級3:人口5万人未満の市および町村
(注8)
これら3つは、ガスを使って電気を作り、その時に出る熱で給湯や暖房を行うものです。なお、コレモは北海道(と一部の寒冷地)のみで販売されており、エコウィルは既に生産が終了しています。それぞれの詳細は以下のサイトをご覧ください。
エネファーム
エコウィル
コレモ
(注9)
エコレポ「統計から暮らしを読む」第10回:家庭で冷房はどのように使われている?

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