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「統計から暮らしを読む」バックナンバー

0032025.02.25UP1世帯が排出するCO2の量を住宅の建て方別にみてみると?

 皆さま、こんにちは。2025年になってあっという間に2ヶ月が過ぎようとしています。随分と遅くなりましたが、今年も家庭のCO2排出実態について、皆さまと一緒に楽しく考えてゆきたいと思います。
 さて前回は、環境省の「家庭部門のCO2排出実態統計調査」(家庭CO2統計)(注1)を用いて2022年に1世帯から排出されるCO2の量を地方別にみてみました(注2)。今回はまたちょっと違った観点でみてみましょう。


住宅の建て方別にみてみると?

 今回は、一戸建て住宅に住む世帯と集合住宅に住む世帯に分けてみてみましょう(図1)。「集合住宅」というのは聞きなれないかもしれませんが、マンションやアパートのように、ひとつの建物を複数の世帯で共有している住宅を指しています。長屋やテラスハウスも集合住宅に分類されます。
 なお、ちょっとややこしい話になりますが、家庭CO2統計の調査対象世帯は、自分たちが使っている毎月のエネルギー消費量を答える必要がありますので、学生寮に住んでいる人や、間借りしている人などのように、自分が使った分が把握できない人たちは調査の対象外になっています。また、自宅と会社が引っ付いていたり、自宅でお店を開いていたりするような場合は、家庭生活のエネルギー消費と業務のエネルギー消費が混ざってしまうので、そういった世帯も調査の対象外になっています。


【図1】2022年度の世帯当たり年間CO<sub>2</sub>排出量の建て方別内訳

【図1】2022年度の世帯当たり年間CO2排出量の建て方別内訳
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。


 この図を見ますと、集合住宅に住む世帯が1年間に排出するCO2の量(1.82トン)は、一戸建て住宅に住む世帯の排出量(3.25トン)と比べると、4割以上小さくなっています。
 なぜだと思いますか?

 この図は、日本中の世帯を、一戸建て住宅に住む世帯のグループと、集合住宅に住む世帯のグループに分けて、それぞれの平均を見比べたものです。一戸建てに住んでいる世帯が、そのまま集合住宅に引っ越しても、CO2排出量が4割以上減る、というわけではありません。この差の裏には、様々な要因が潜んでいるのです。
 これ以降、その両者の特徴を比べることで、なぜ両者のCO2排出量に大きな差があるのか、そもそも、エネルギー消費量やCO2排出量に影響を与える要因はどのようなところにあるのかを考えてみましょう。


延床面積の違い

 まず、一戸建て住宅の方が広いですね。2022年度の家庭CO2統計の結果では、一戸建て住宅の延床面積は平均で127m2である一方、集合住宅は56.1m2となっていて、かなり大きな差があります。さらに、図2(注3)をみますと、集合住宅の約4割は50m2未満となっていて、単身世帯(一人暮らし)が多いことが想像できます。


【図2】住宅の建て方別にみた延べ床面積(2022年度)

【図2】住宅の建て方別にみた延べ床面積(2022年度)
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。


世帯人数の違い

 家が広いと、住んでいる人の数も多い傾向があります。図3(注3)をみますと、一戸建て住宅に住む世帯の約8割は、世帯人数が2人以上である一方、集合住宅に住む世帯の半分以上は単身世帯であることが分かります。平均的な世帯人数は、一戸建て住宅に住む世帯で約2.60人である一方、集合住宅に住む世帯では1.72人です。


【図3】住宅の建て方別にみた世帯人数(2022年度)

【図3】住宅の建て方別にみた世帯人数(2022年度)
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。


 世帯人数が多いと、エネルギーを使う機会や量が増えます。部屋の数が多く、それぞれの部屋で照明や暖冷房を使うことが多くなります。家電製品の数や、設備のサイズも大きくなりがちです。お風呂や洗面などで使うお湯の量も増えます。半分冗談ですが、省エネの秘訣は家族仲が良いこと、という話を聞いたことがあります。仲が良いと、集まって過ごす時間が増え、暖冷房をする空間を小さくできます。

 一方で、集合住宅世帯に多い単身世帯はどうでしょうか。複数人で住んでいると、色んなものを誰かと共有することができますが、単身世帯は全てを一人で使うことになります。そのため、例えばお風呂に湯を張ることを考えると、複数人世帯では一回の湯張りで複数人が入浴しますが、単身世帯では一人だけが入浴するので、一人当たりのエネルギー消費量で比べると、単身世帯の方が多くなることもあると思います。今の日本では単身世帯の割合がどんどん増えてきていますが、単身世帯では誰かとエネルギーの使用を共有する機会も少ないので、「一人で使うには過剰かな」と思うものを見つけて減らせるかどうかが重要です。


高齢者の割合と平日日中の在宅状況の違い

 また一戸建て住宅に住む世帯は年齢層が全体的に高めで、高齢者が住んでいる割合が高めです。そして高齢者の多くは、退職して家にいる時間が長い傾向があります。図4(注3)をみますと、戸建住宅に住む世帯では高齢者のいる世帯が全体の半数以上を占めていますが、集合住宅に住む世帯で高齢者がいる割合は全体の約1/3です。また、図5(注3)をみますと、一戸建て住宅に住む世帯の約2/3で、平日日中のほぼ毎日、誰かが在宅している一方、集合住宅に住む世帯では、その割合は半分弱となっています。家にいる時間が長くなると、エネルギーを使う時間も増えます。夏の冷房や冬の暖房は特に影響が大きくなります。


【図4】住宅の建て方別にみた高齢者有無(2022年度)

【図4】住宅の建て方別にみた高齢者有無(2022年度)
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。


【図5】住宅の建て方別にみた平日日中の在宅者有無(2022年度)

【図5】住宅の建て方別にみた平日日中の在宅者有無(2022年度)
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。


 ただし、だからと言って、暖冷房を使うことは決して悪いことではありません。近年は、夏場の猛暑で体調を崩すことも珍しくなく、熱中症に罹る恐れもあります。健康のためには、適切に暖冷房を使うべきなのです。大事なのは、なるべく無駄を減らすための工夫をすることです。複数人で集まって暖冷房する空間を小さくすること、過剰な設定温度は控えること等を心がけてみましょう。


その他の違い

 最後に、一戸建て住宅に住む世帯と集合住宅に住む世帯のエネルギー消費量の違いの要因を、ちょっと違った視点でみてみます。
 集合住宅の住戸の壁、天井、床は、基本的に他の世帯の住む住戸と引っ付いていて、夏暑く冬寒い外気と直接接触する面積が狭めです(もちろん、角部屋住戸、最上階住戸、ピロティの上の住戸等、例外もあります)。一方、一戸建て住宅は壁も屋根も外気と接触していて、夏は熱が家の中に入りやすく、冬は外に熱が逃げやすくなっています。このことも、暖冷房のエネルギー消費量に影響を与えています。熱が簡単に出入りしないような構造にすることも、省エネにおいては重要になります。

 戸建住宅に住む世帯と集合住宅に住む世帯では、色々と違いがあることが分かったかと思いますが、もちろん、それだけではありません。エネルギー消費は生活の足あとです。生活の数だけエネルギー消費のパターンがあります。ぜひ、皆さまの生活とエネルギー消費の関係を考えてみてください。


注釈

(注1)
環境省 家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)
(注2)
エコレポ「統計から暮らしを読む」第2回:1世帯が1年間で排出するCO2の量を地方別にみると?
(注3)
令和4年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査(確報値)を用いて、住環境計画研究所が作成

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  1. 001「1世帯が1年間で排出するCO2の量はどのぐらい?」
  2. 002「1世帯が排出するCO2の量を地域別にみると?」
  3. 003「1世帯が排出するCO2の量を住宅の建て方別にみてみると?」

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