皆さま、こんにちは。今年の東京の6月は曇りや雨の日が続き、「梅雨らしい梅雨」になりましたが、もうすぐ夏休みシーズン、夏本番が近づいてきました。体調にはお気を付けください。
さて、この連載「統計から暮らしを読む」も、今回で第10回を迎えました。とても嬉しく思っています。そんな記念すべき第10回のテーマは「冷房」です。第4回では暖房について取り上げましたが(注1)、今回はその対となる夏の主役、エアコンの実態に、毎度お馴染みの環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査」(家庭CO2統計)(注2)を見ながら迫ってみようと思います。
連日の猛暑や酷暑が当たり前となった近年、エアコンは私たちの健康と命を守るインフラです。そんなエアコンについて、今回は少し深掘りしてみましょう。
図1は、1世帯が1年間で排出するCO2の量を、暖房、冷房、給湯、台所用コンロ、照明・家電製品等という5つの用途に分けて、それぞれがどのぐらいの割合を占めているのかをみたもので、第6回(注3)の図1と全く同じです。ここで、冷房がどのくらいの割合を占めているかに注目してみてください。
【図1:2023年度の世帯当たり年間CO2排出量の内訳(用途別)(注4)】
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。
実は、冷房が占める割合は全体の5~6%程度なのです。「夏にあれだけエアコンを稼働させているのに?」と驚かれる方も多いでしょう。真夏の節電と言えば、真っ先にエアコンの使い方を思い浮かべる方も多いと思います。だから5~6%程度と言われると、意外に感じますよね。
これにはいくつか理由がありますが、ここでは3つの理由を紹介します。
1つ目は、冷房の使用期間です。照明、家電、給湯といったものは、年間を通じて使用するものですが、冷房は通常、夏のみに使うものです。最近は非常に暑い日が増えてきたため、冷房の使用期間も長くなってきているとは思いますが、それでも本格的に使用するのは3ヶ月、長くても4ヶ月というのが一般的ではないでしょうか。ですから、真夏のみにフォーカスして図1を作り替えたら、当然、冷房の占める割合は大きくなります。
2つ目は「温度差」です。冬場は外気(例えば5℃)を室内温度(20℃)までの、15℃の差を引き上げる必要がありますが、夏場は外気(35℃)を室内温度(27℃)まで下げるので、8℃の差で済みます。物理的に必要なエネルギーが冬より少ないのです。
3つ目はエアコンの効率の良さです。エアコンは「ヒートポンプ」と言われる仕組みを用いた機械で、空気中の熱を効率よく移動させることができ、少ない電力で非常に大きな冷暖房効果を生み出すことができます(注5)。暖房にはヒートポンプ機器以外にも様々な種類のものがあり、中にはエネルギー効率の低いものもあるのですが、冷房は、ヒートポンプ機器以外のものは存在しません。そのため冷房のエネルギー消費量は、全体として暖房のエネルギー消費量よりも低く抑えられ、それが省CO2に大きく貢献しているのです。
次に、エアコンの普及率を見てみましょう。図2は、左側のグラフがエアコンを使用している世帯の割合を地方別にみたもので、右側のグラフは1世帯あたりのエアコンの平均使用台数です。これを見ますと、北海道と東北を除く全ての地域で、エアコンを使用している世帯は95%を超えており、エアコンは既に「当たり前」の家電になっていると言えます。そのような中で北海道では、エアコンを使用している世帯は半数にも満たない状況です。北海道は夏でも比較的寒冷であるために真夏でも冷房の必要性が他地域よりは小さく、冬も灯油暖房が主に使われているため、エアコンの普及は他地域と比べるとまだまだ少ない状況です。しかし近年の真夏の暑さは北海道でも猛烈です。図3を見ますと、2020年度頃から、エアコン使用世帯が北海道でも増加してきていることが窺えます。
冷房の省エネといえば、「設定温度」がよく話題になります。「室温28℃」が環境負荷低減の目安として推奨されていますが(あくまで「室温」が28℃であって、「設定温度」が28℃ではないことにご注意ください)、実際のところ各家庭では何度に設定されているのでしょうか。
図4は、エアコンが冷房運転時に何度で設定されているのかの割合を示したものです。これより、エアコン設定温度を「28℃」としている世帯が最も多く、全体の3割を占めており、これに「27℃」と「29℃以上」の世帯を加えると、全体の約2/3の世帯が「27℃以上」で運転していることが分かります。
【図4:エアコン(冷房)1台目の設定温度(2023年度)(注4)】
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。
もちろん、実際の室温は建物の性能によって変わってくるので、この結果だけでは室温の状況までは想像できないのですが、多くの家庭で省エネを意識した設定温度が定着してきているようには感じられます。
最後に、室温に関するちょっと興味深いデータをご紹介します。図5は、冷房の設定温度を地方別に見たものです。
【図5:エアコン(冷房)1台目の設定温度(2023年度・地方別)(注4)】
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。
これを見ると、設定温度にも地域性がありそうだということに気づきます。特に、北海道で設定温度が低くなっていることは興味深いです。なぜこのような結果になるのかはもっと調べる必要があるので、全く断定できるものではありませんが、私は、以下のようなことが理由になっているのではないかと思っております。
1. 北海道の人々の暑さへの耐性・体感温度
2. 北海道の住宅の高気密・高断熱構造による熱ごもり
3. 北海道における冷房使用期間の短さゆえの「非常事態」としての使用
読者の中に北海道の方がいらっしゃるようでしたら、ぜひともご意見をお聞かせいただけると幸いです。
いかがでしたでしょうか。統計データをみると、冷房によるエネルギー消費量は冬の暖房などに比べて少なく、かつ多くの家庭が設定温度を工夫しながら賢く使っている実態が見えてきました。
「電気代がかかるから」「CO2が出るから」とエアコンの使用を我慢して、熱中症になってしまっては元も子もありません。エアコンの省エネ性能は年々上昇し続けており、一昔前の機種と比較すると、そのエネルギー消費性能は非常に高くなっています。古い機器をお使いの場合は最新の省エネエアコンへの買い替えを検討しつつ、定期的なフィルター掃除や、扇風機・サーキュレーターとの併用など、ちょっとした「賢い使い方」を実践することで、健康を守りながら無理なく今年の夏を乗り越えていただきたいと思います。
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