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「統計から暮らしを読む」バックナンバー

0012024.10.01UP1世帯が1年間で排出するCO2の量はどのぐらい?

 皆さま、はじめまして。住環境計画研究所の岡本洋明と申します。これからここで、暮らしとエネルギー消費・二酸化炭素(CO2)排出に関するデータを見ながら、皆さんと一緒にエネルギー・環境問題を考えたいと思います。
 一般的に、ちょっと難しいと思われがちなこの分野ではありますが、「へぇ、面白い!」と思えるようになれれば、日常の見え方も少し変わるかもしれません。そうなると、省エネ省CO2に、楽しく関わっていけるようになるのではないかと思っています。これを読んでくださる皆さんが、少しでもそういうふうになれるように頑張りますので、ぜひ、お付き合いください。


家庭のエネルギー消費、家庭からのCO2排出とは?

 これからデータを見ていく前に、このコラムにおいて「エネルギー消費」というものが何を指しているのかについて説明します。私たちは日常生活において、電気、ガス、灯油を使っています。また自動車ではガソリンや軽油も使っています。これらを総称して、ここでは「エネルギー」と言い、またエネルギーを使うことを「エネルギー消費」と言うこととします。
 また同様に「CO2排出」についても説明します。ガス、灯油、ガソリン、軽油といった化石燃料由来のエネルギーは、消費する時に燃焼します。すると、その中に含まれている炭素が空気中の酸素と反応してCO2が大気に排出されます。電気の場合は消費する時点ではCO2は排出されませんが、発電所でガスや石炭等が燃焼されると、そこでCO2が排出されます。このコラムでは、エネルギーの消費に伴うCO2排出(電気の場合は、消費量分の電気の発電に伴うCO2排出)について、主に紹介していきます。


CO2排出

家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)

 ここで、環境省の統計「家庭部門のCO2排出実態統計調査」、略称「家庭CO2統計」(注1)をご紹介します。この調査では、全国13,000世帯を対象に、1か月分の電気、ガス、灯油、ガソリン、軽油の使用量と購入金額、太陽光発電をお持ちの世帯には、発電量と売電量と受領金額を、12か月連続で伺い、あわせて、その世帯の家族構成、家のつくり、生活スタイル、使っている家電・設備およびそれらの使い方などを細かく調査しています。この調査結果を使うと、暮らしとエネルギー消費・CO2排出の関係を、いろんな観点から見ることができます。
 この統計調査は、私の所属する住環境計画研究所が、「このような統計の整備が必要だ」と長年訴えてきたもので、本格的に始まったのが2017年度。そこから2023年度まで毎年実施されてきました(残念ながら2024年度は実施が見送られ、以後2年に1回の実施に変更となりました)。実現までの経緯だけでも面白い話がたくさんあるのですが、ここでは割愛します。弊社のホームページにインタビュー形式でまとめてありますので(注2)、もしご興味がありましたらぜひ読んでみてください。
 もしこのデータの面白さを感じてくださったら、ぜひ、いろんな人と一緒にこのデータを見ながら、色々と考えてみてもらえると嬉しいです。


令和5年度 家庭部門のCO₂排出実態統計調査 調査票

令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 調査票
※画像をクリックすると、調査票のpdfが開きます。


1世帯が1年間で排出するCO2の量はどのぐらい?

 前振りが長くなりましたが、ここから本題に入ります。今回は一番基本的なデータを押さえましょう。
 皆さんは、1世帯が家庭の中で1年間に排出するCO2の量はどのぐらいか知っていますか?

 答えは、2.59トン(2022年度)です。【図1】

 へぇ…って感じですよね。馴染みも無いでしょうし、これが多いのか少ないのかもよくわからないと思います。ですがまずは、日本では2022年度に1世帯あたり2.59トンのCO2が排出された、と覚えてもらえると嬉しいです。それにこんな数字、なかなか知っている人もいないと思いますので、知っているだけでちょっと楽しいと思いませんか?(思わなかったらごめんなさい…)


【図1】世帯当たり年間エネルギー種別CO2排出量(2022年度)

【図1】世帯当たり年間エネルギー種別CO2排出量(2022年度)
※四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。


 2.59トンという量はどのぐらいなのでしょう。もし、2.59トンのCO2が球状だったら、直径は約14メートルになります(注3)。仮にビル1階あたりの階高を3メートルとしますと、14メートルは4階よりも高くなります。また、36~40年生のスギが1年間で吸収するCO2の量は1本あたり約8.8キログラムとのことなので(注4)、2.59トンは294本分の年間吸収量と同程度になります。これが1世帯分です。日本全国では5,000万世帯以上あります。ざっくりですが、直径14メートルの球が5,000万個、スギの木の年間吸収量で換算すると何と150億本分!仮に1ヘクタールあたり1,000本あるとしますと(注4)スギの木150億本に必要な面積は1,500万ヘクタールとなります。2022年3月末時点の日本の森林面積は約2,500万ヘクタール、うち人工林は約1,000万ヘクタールなのだそうです(注5)。1,500万ヘクタール分のスギとなると、今の日本の全人工林の1.5倍もの面積が必要となります。想像できますか?

CO2排出量を減らすカギを、データを見ながら探す

 ところで、この2.59トンは、「2022年度」の1世帯当たりCO2排出量の「全国平均値」です。CO2排出量は年によって変わりますので、これが増加傾向にあるのか減少傾向にあるのかを確認することは、これからの削減対策を考える上で重要なことです。また、日本全国には5,000万世帯以上が存在していますが、その中にはひとつも同じ世帯は存在しません。排出量が平均よりもはるかに多い世帯も、ずっと少ない世帯も存在しています。なので、CO2排出量を減らす方法を、全世帯に同じように適用することはできません。
 次回以降もう少し細かいデータを見ながら、暮らしの中でCO2排出量を減らすカギを一緒に考えてみましょう。

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