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「地域の健康診断」バックナンバー

0402020.09.01UPMaaSがもたらす未来

MaaSは住民の足となれるか

紫雲出山から詫間奉免を望む

紫雲出山から詫間奉免を望む

 MaaS(Mobility as a Service)とは、あらゆる交通手段を統合し、ワンストップで予約・決済・利用できるようにする移動サービスの概念です。
 国土交通省の「新モビリティサービス推進事業」がスタートしたこともあり、大都市から中山間地など様々な地域で実証実験が花盛りです。いずれは電車やバスなどの公共交通機関から、タクシーやライドシェア、シェアサイクルほか大都市だろうと山間地だろうと全ての移動手段がスマホアプリ一つで行うことができ、しかも駐車場やガソリンスタンド(その頃はガソリンスタンドでなくEVスタンドかもしれません)ともアプリ一つで連携するシステムを想定しています。


日本のウユニ塩湖と呼ばれる人気スポット父母ヶ浜

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 現在、都市部ではタクシーの配車や、カーシェア、サイクルシェアなどで単独の予約・決済システムが稼働していますが、これが全ての移動手段に統合されるというイメージでしょう。
 ただし国交省が定義するMaaSは、5G通信やキャッスレスなどの環境整備が不可欠であり、中山間地域にはとてもハードルが高いといえます。もちろんそうしたハード整備を行う国の支援事業は存在しますし、大手の通信会社や自動車メーカー、運輸・交通事業者も提案してくれます。
 過疎地では赤字が常態化している路線バスのデマンド化が進んでいますが、自治体が運営補填を現在のように続けて、存続させて行くには限界があります。
 苦しい運営を強いられている第三セクター鉄道や廃線が囁かれるローカル鉄道もMaaSの取り組みに入れ、地域の足を守ることも重要です。公共交通そのものを維持することは、移動の足を持たない住民の命の守る大切なインフラです。
 現在はコロナ禍ということもあり、MaaS促進のスピードが緩んでいますが、Withコロナでは観光や産業、暮らしの再生で不可欠な要素となると見ています。


香川県三豊市のMaaSの取り組み

MITOYO MaaS PROJECT

MITOYO MaaS PROJECT

 昨年、香川県三豊市の山下市長に、三豊市MaaS構想の取り組みの一端を伺う機会をいただきました。
 全国でも珍しい7町の対等合併により誕生した三豊市は、瀬戸内海に突き出た荘内半島や島嶼部と三豊平野が拡がる山・海・川・島で構成されています。
 コンパクトな市ですが、観光では2次3次交通や移動手段のない高齢者の課題、既存交通の活性化など全国の地方と同様の課題を有していました。三豊市ではこの旧7町の歴史を大事にしながら、「多極分散型ネットワークのまちづくり」をビジョンとして掲げ、「MITOYO MaaS PROJECT」構想のもと、様々な形でMaaSの取り組みが進められています。


 一つは隣接する琴平町と連携し、モネ・テクノロジーズが開発した次世代移動サービスを活用して、観光地や市役所、商業施設などを経由する観光客を対象とした「うどん空港シャトル」を運行しています。スマートフォンやパソコンで車両の位置情報やダイヤなどが確認できるなど広域で進めています。さらに観光客向けのサービスとして、将来的には病院などの乗降地点の追加やオンデマンドバスの運行を見据え、日常生活の中で便利な交通手段として活用できるよう検討しています。
 市長は昨年、「キャッシュレスで市民が乗降することで、移動データを取得し、次の一手に活用でき、地域交通システムの改善に繋がると考えています」と話します。
 もう一つが「福祉介護型MaaS」です。昨年10月にダイハツ工業と連携協定を締結し、福祉介護事業が持続できる環境の構築を目指しています。
 この事業では、福祉事業者のバス運行が朝晩に多く日中は空いている(市長)として、その遊んでいるバスを高齢者の生活移動支援などの新たなサービスに使用することで、事業者負担を減らし、地域の移動需要を最適化しようとするものです。
 さらに「グリーンスローモビリティ」では、ヤマハ発動機と組んで、半島や島嶼部の移動に「超小型モビリティ」(自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人?2人乗り程度の車両)を導入し、観光客誘致や狭いエリアでの買い物難民対策として、住民の足に活用しようとするものです。
 このように観光だけの狭い領域でなく、地域交通の総合戦略にMaaSを据えることで、住民生活を向上させ、豊かな暮らしを維持する大切な施策になると感じました。

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バックナンバー

  1. 001「地域を元気にする=観光地化ではない」
  2. 002「地域を元気にする=一村一品開発すればいいわけではない」
  3. 003「地域を元気にする=自ら考え行動する」
  4. 004「縦割りに横串を差す」
  5. 005「集落の元気を生産する「萩の会」」
  6. 006「小学生が地域を育んだ」 -広島県庄原市比和町三河内地区-
  7. 007「山古志に帰ろう!」
  8. 008「暮らしと産業から思考する軍艦島」
  9. 009「休校・廃校を活用する(1)」
  10. 010「休校・廃校を活用する(2)」
  11. 011「アートで地域を元気にする」
  12. 012「3.11被災地のまちではじまった協働の復興プロジェクト」
  13. 013「上勝町と馬路村を足して2で割った古座川町」
  14. 014「儲かる農業に変えることは大切だが、儲けのために農家が犠牲になるのは本末転倒」
  15. 015「持続する過疎山村」
  16. 016「したたかに生きる漁村」
  17. 017「飯田城下に地域人力車が走る」 -リニア沿線の人力車ネットワークをめざして-
  18. 018「コミュニティカフェの重要性」
  19. 019「伝統野菜の復興で地域づくり」 -プロジェクト粟の挑戦-
  20. 020「地元学から地域経営へ 浜田市弥栄町の農村経営」
  21. 021「持続する『ふるさと』をめざした地域の創出に向けて」
  22. 022「伊勢木綿は産業として残す」
  23. 023「北海道最古のリンゴ「緋の衣」」
  24. 024「風土(フード)ツーリズム」
  25. 025「ゆきわり草ヒストリー」
  26. 026「活かして守ろう 日本の伝統技術」
  27. 027「若い世代の帰島や移住が進む南北約160kmの長い村」 -東シナ海に浮かぶ吐喝喇(トカラ)列島(鹿児島県鹿児島郡十島村)-
  28. 028「徹底した子どもへの教育・子育て支援で過疎化の危機的状況を回避(高知県土佐町)」
  29. 029「農泊を再考する」
  30. 030「真鯛養殖日本一の愛媛県の中核を担う、宇和島の鯛(愛媛県宇和島市遊子水荷浦)」
  31. 031「一人の覚悟で村が変わる」 -京都府唯一の村、南山城村-
  32. 032「遊休資産が素敵に生まれ変わる」
  33. 033「福祉分野が雇用と関連ビジネスの宝庫になる」 -飯田市千代地区の自治会による保育園運営の取組-
  34. 034「日本のアマルフィの石垣景観を守る取り組み」 -愛媛県伊予町-
  35. 035「アニメ・ツーリズム」
  36. 036「おいしい田舎「のどか牧場」」
  37. 037「インバウンドの苦悩」
  38. 038「コロナ禍後の未来(1)」
  39. 039「コロナ禍後の未来(2)」
  40. 040「MaaSがもたらす未来」
  41. 041「二人の未来は続いてゆく」 -今治市大三島-
  42. 042「ワーケーションは地域を救えるか」
  43. 043「アフター・コロナの処方箋は地域のダイエット」
  44. 044「ヒトを呼ぶパワー(前編)」
  45. 045「ヒトを呼ぶパワー(後編)」
  46. 046「地域の価値創造」 -サスティナブル・ツーリズム-
  47. 047「廃校活用の未来」
  48. 048「小田原なりわいツーリズム」
  49. 049「地産地消エネルギーで地域自立する」
  50. 050「地域丸ごと地球の学び舎」
  51. 051「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(1)」
  52. 052「廃校活用の可能性と持続可能な社会への貢献(2)」
  53. 053「夢にチャレンジできるまち、実現できるまち」
  54. 054「新たな福祉コミュニティ」

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