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「国立公園Walker」バックナンバー

0112010.03.16UP箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き

失われる草原の景観

(写真1)ススキ草原と仙石原湿原
ススキ草原と仙石原湿原

 箱根仙石原のススキ草原は、台ケ岳の北麓・仙石原湿原に隣接したところにあります。この草原は、地元の住民が茅葺き屋根の茅や霜よけの敷き藁を集める採草地として維持されてきましたが、昭和30年代中頃からは、採草地としての役目を終え、放置されてきました。その結果、灌木(かんぼく)が生えはじめ、草原らしい景観が失われ始めました。また、森林化が進むことで、湿原の植物が追いやられ、仙石原湿原の存続も危ぶまれるようになってきたのです。

野焼きの復活

 仙石原湿原とススキ草原の景観を維持するためには、灌木の除去と以前のような草刈りが必要です。しかし、地元の住民は高齢化が進み、作業は困難。そこで、昔行われていた野焼きでススキ草原を維持するのが一番よい方法ではないかということになりました。この一帯は、国立公園内で自然保護の規制が最も厳しい特別保護地域なので、人の手を入れるには許可が必要です。野焼きは、生物資源調査を行ったうえで、平成元年からスタートしました。仙石原湿原の一部を利用して作られた植物園「箱根湿生花園」では、火入れ区・刈取り区・放置区の3つを設けて、植生の変化の様子を検証しています。

防火帯
防火帯

町長挨拶
町長挨拶

野焼きでよみがえる草原

 ススキ草原の野焼きは、まず防火帯を作ることから始まります。火が一定の範囲をこえて燃え広がらないように草原の周囲の草を刈り取り、幅10メートルの緩衝地帯を作ります。刈り取ったススキは、内側に入れ、野焼きの時に一緒に燃やします。実施日は、予定の2日前から晴天が続き、当日の風が弱い場合に限られます。このように不確定要素の多い野焼きは、観光行事としては成り立ちません。

灯油バーナーと火叩
灯油バーナーと火叩

水鉄砲の親分のようなシューター。消防団員の背負っている黄色いリュックサックに水が入っており、手元のノズル操作でホースから放水する
水鉄砲の親分のようなシューター。消防団員の背負っている黄色いリュックサックに水が入っており、手元のノズル操作でホースから放水する


炎と水幕ホース
炎と水幕ホース

 午前6時、仙石原自治会連合会の会長と消防団長のOBなどで構成される実行委員会のメンバーが実施の決定を下します。作業するのは地域自治会と消防団、消防署員。安全のため消防車も待機し、移動式の水槽に水を張っておきます。建物に近いところでは水幕ホースを噴射して、水の幕をつくり、延焼を防ぐことも怠りません。
 点火は風下側から灯油バーナーで行います。燃えてくる状況を見て、風上側からも迎え火を放ち、両側から燃え進んだ炎をぶつけて鎮火させます。


燃え盛る炎
燃え盛る炎

きれいに炎が広がった
きれいに炎が広がった


 ススキ草原は、地表部が焼かれることで何もなくなりますが、春の日差しを浴びて急激に暖められた地表部からは、コキクザキイチリンソウやジロボウエンゴサクなどの春植物が見る間に白や紫色の愛らしい花を咲かせます。シシウドやナガバノスミレサイシン、キジムシロなどもススキとともに芽を吹きます。

きれいに焼けた草原
きれいに焼けた草原

終了挨拶
終了挨拶


 仙石原のススキ草原は、地域住民が参加する野焼きによって維持されています。国立公園の大切な景観を保全するためには、地元の協力も欠かせないのです。

周辺地図
周辺地図(クリックするとPDFファイルが開きます)


((財)自然公園財団箱根支部 上妻信夫)

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このレポートへの感想

野焼きの予定日ですが、毎年2月になってから箱根町のホームページで何日か分公開されます。
天候の状態によって当日可能かどうか判断がされるのでどうしても観光行事にするのは難しいですね。
例年だと一般の方が見学するスペースが当日開放されます。道標が立つほか、係の人が周辺にいると思いますので聞いて見るとよいでしょう。
(一般財団法人自然公園財団箱根支部)
(2014.09.12)

毎年行きたいと思いながら、日にちが分からずに 又仕事だったりして、見た事がありません。テレビで知るのは悔しいので、是非遠目でも見る方法を教えて下さい。
(2014.09.11)

タイムリーにアップしてもらえたらGOODですね
(2012.03.13)

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