メインコンテンツ ここから

「国立公園Walker」バックナンバー

0682015.02.10UP高千穂河原からの便り

霧島山(手前から中岳、新燃岳、獅子戸岳、韓国岳)
霧島山(手前から中岳、新燃岳、獅子戸岳、韓国岳)

 当財団の中でいちばん南にある高千穂河原支部にも水道は凍り、雪が降る冬がやってきました。新燃岳の噴火後4年が過ぎようとしています。何もかも火山灰に埋もれ、枯れた赤松や緑のない風景、中岳に近い「中岳中腹路」はまるで砂浜のような景色が広がり、あちこちに枯れたミヤマキリシマがサンゴのように立っていました。
 時が経つにつれ、その枝や埋もれた地面の横から新しい枝が生まれ、昨年の春はピンク色に染まった御鉢や中岳中腹路が帰ってきました。1959年の噴火の後、植生が見事に復活しているのを考えると今回も自然の力に期待するしかないのかもしれません。
 高千穂峰、御鉢の山肌は新燃岳噴火前に戻りつつあり、赤茶けた斜面や緑がみえる景色が帰ってきています。登山は登りやすくなった半面、下りが難しくなってきたようです。頂上から見る景色も変わってきましたが、新燃岳、中岳は今も灰色のまま噴火後とあまり変わっていません。枯れた常緑木が今も立っています。紅葉の季節に赤色や黄色の中に混ざって見えます。緑がないのにふと気づきました。

周辺の植生の変化

ウリハダカエデ
ウリハダカエデ

 ミヤマキリシマの酸性質の土壌への相性の良さは今の状態をみれば歴然とわかりますが、もう一種おもしろいのがウリハダカエデです。噴火後1年目から幼木があちこちに確認できました。今年もウリハダカエデのプロペラをたくさんつけた種子を観察できるのをみると、この先少し楽しみになります。温暖化がすすむ中、南国の地で紅葉を楽しめる所である高千穂河原としてはこのまま大きく育ってほしいと思います。
 この秋に落ち葉と火山灰の入り混じった土からツルニンジン、ツクシコウモリ、リンドウ等の植物たちも確認できるようになりました。大木が枯れて、場所によっては太陽の光があたるようになりました。自然の変化で植物たちがどんな植生を形成していくのか夢が広がります。

ミヤマキリシマ

 この4年間でミヤマキリシマの群生地にも変化がみえてきました。高千穂河原は例年5月中旬あたりからミヤマキリシマの見頃になります。群生地として人気があるのは中岳中腹路、神宮の森の東屋付近、あとは御鉢の斜面全体から高千穂峰までつづきます。
 日当たりを好むミヤマキリシマにしたら、灌木等のない御鉢や高千穂峰は聖地であるのかもしれません。御鉢の南斜面からピンク色に山肌が染まっていくのは実に圧巻です。
 御鉢と中岳の鞍部にあたる鹿ヶ原と呼んでいる場所があります。昔から知る人ぞ知る群生地。そこもたくさんの火山灰が堆積し、ミヤマキリシマを含めほとんどの植物が埋もれました。その一帯にまたミヤマキリシマが咲きほこる群生地が戻りつつあります。これらの群生地をどう守っていくか、手助けが少しは必要なのかもしれません。
 ミヤマキリシマには、キシタエダシャクという蛾の幼虫(毛虫)がつきます。春先芽吹いた葉を食べ、新芽を食い尽くすと花の蕾も食べつくします。そうなると花はまったくみられなくなってしまいます。

枯れたミヤマキリシマ
枯れたミヤマキリシマ

 ススキがこの秋から目立つようになってきました。まだ小さいミヤマキリシマをすっぽり包んでしまいました。まだ虫の確認はしていませんが、その環境に卵を産み付けます。虫の数が少ないときは問題ありませんが、多量に発生すると厄介です。ましてや今のミヤマキリシマの株の大きさではまったく花が見られなくなる可能性もあります。
 そこで私たちはこの毛虫を撲滅するのではなく、必要以上に多量に発生させないようにする対策を講じることにしました。
 例年、高千穂河原支部では中岳中腹路の刈払い作業をしています。約16ヘクタールの敷地を11月中旬あたりから3月の初め頃まで実施します。今年は噴火後初めての刈払い作業の最中です。ミヤマキリシマに少しだけ手助けをしているつもりですが、なかなか私たちの人員では大変なお手伝いです。先はまだ長いようです。
 中岳中腹路のミヤマキリシマは1年で1ミリ太くなるそうです。20年株、30年株ぐらいになると、その剪定作業を行う庭師がついています。ホソキリンゴカミキリという長い名前のカミキリ虫の仲間です。古い幹を穴だらけにして枯らしてしまいます。茂り過ぎて根元の循環が悪くならないようにする働きがあるのです。また根元から新しい幹が伸び始めるので心配ありません。彼らが私たちの仲間になるにはまだまだ先の話です。
 中岳、新燃岳にはまだ登山規制がかかっています。新燃岳のキリシマミツバツツジを確認をすることはできませんが、壊滅的な状況と聞きました。

一人黙々とカヤ刈り中
一人黙々とカヤ刈り中

 自然保護の難しさは現場にいると時々感じることがあります。どこまでやったらいいのかわからないことだらけです。ただ彼らからみれば「ほっといてくれ」と思っているのかもしれません。

文・写真:一般財団法人自然公園財団 高千穂河原支部 中之薗 勝信

このレポートは役に立ちましたか?→

役に立った

役に立った:3

このレポートへの感想をお送りください。
投稿いただいた感想は事務局チェック後に掲載されます。

ニックネーム
感想
 
送信する入力内容クリア
国立公園Walker

「国立公園Walker」トップページ

エコレポ「国立公園Walker」へリンクの際はぜひこちらのバナーをご利用ください。

リンクURL:
http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/go/series/8

バックナンバー

  1. 001「新緑の上高地」 -花々との競演-
  2. 002「白色に染まる栂平(つがだいら)」
  3. 003「釧路川をカヌーで下る」
  4. 004「美笛の滝を訪ねる」
  5. 005「小田代原の草紅葉」
  6. 006「草津白根の秋」
  7. 007「みちのくのリゾートで湯治」
  8. 008「高千穂峰のご来光」
  9. 009「冬の瞰湖台(かんこだい)を歩く」
  10. 010「知床の流氷」
  11. 011「箱根仙石原 ススキ草原を守る野焼き」
  12. 012「迫力満点の鳴門の渦潮を見る」
  13. 013「宮崎・えびの高原のミヤマキリシマ」
  14. 014「新緑の中で足湯」
  15. 015「大山の高山植物群落を訪ねる」
  16. 016「洞爺湖有珠山ジオパークの魅力」
  17. 017「秋の砂丘をゆく」
  18. 018「秋の雲仙」
  19. 019「川湯のハイマツ」
  20. 020「冬の大沼国定公園」
  21. 021「阿寒湖氷上のスノーシュー散策」
  22. 022「阿蘇の野焼き」
  23. 023「吾妻の春を告げる雪うさぎ」
  24. 024「青い水がめ・支笏湖(しこつこ)」
  25. 025「奥日光ののんびりスポット」
  26. 026「仙石原湿原の初夏」
  27. 027「雲海と夕景と朝日・夏の十和田湖」
  28. 028「知床五湖・転換期のメッセージ」
  29. 029「秋の鳴門」
  30. 030「高千穂河原周辺情報」
  31. 031「上高地の野鳥」
  32. 032「草津の森をスノーシューで歩く」
  33. 033「新燃岳噴火を乗り越えて…冬のえびの高原」
  34. 034「冬の登別観光」
  35. 035「歩いて楽しむ雪の八幡平」
  36. 036「春遠し 摩周湖」
  37. 037「鳥取砂丘の地形・地質を楽しもう!」
  38. 038「カルデラ地形を望む 阿寒岳の登山!」
  39. 039「大沼国定公園のもう一つの魅力」
  40. 040「浄土平でスターウォッチング」
  41. 041「ジオパークを目指す箱根」
  42. 042「大山(だいせん)のお楽しみ」
  43. 043「秋の阿蘇草原」
  44. 044「支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」」
  45. 045「奥日光で「雪」を楽しむ!」
  46. 046「冬のTOYA(洞爺)」
  47. 047「雲仙の春」
  48. 048「春の大沼国定公園の楽しみ方」
  49. 049「阿蘇の草原とあか牛」
  50. 050「火山×ミヤマキリシマ in 高千穂河原」
  51. 051「阿寒カルデラで楽しいのって、いつなの?  今でし…!? いいえ通年です」
  52. 052「白根山でリンドウを楽しもう。」
  53. 053「上高地、色彩の秋から初冬へ」
  54. 054「見どころ溢れる秋の十和田湖」
  55. 055「知床五湖の原生林と開拓の歴史~自然保護の歩み」
  56. 056「八幡平 雪の世界」
  57. 057「冬こそ!砂丘へ行こう!」
  58. 058「雄大な鳴門海峡の自然現象」
  59. 059「大山の森を巡って」
  60. 060「「南北海道国立・国定公園巡りスタンプラリー」にご参加を。」
  61. 061「箱根は隠れた鳥の楽園!?」
  62. 062「『今だけ』がいっぱい!戦場ヶ原ハイキングのススメ」
  63. 063「霧降高原は今…」
  64. 064「晩夏の普賢岳新登山道を歩く」
  65. 065「洞爺湖有珠山ジオパークのサイト維持活動」 -旧とうやこ幼稚園の価値を、自分たちで守ろう!-
  66. 066「秋の浄土平」
  67. 067「阿寒国立公園指定80周年」
  68. 068「高千穂河原からの便り」
  69. 069「上高地の開山準備」

前のページへ戻る

【PR】

 

ログイン

ゲストさん、

[新規登録] [パスワードを確認]

エコナビアクションメニュー

【PR】

  • 東京環境工科専門学校 コラム連載中!

ご意見・ご感想はこちら

【PR】