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「国立公園Walker」バックナンバー

0262011.06.14UP仙石原湿原の初夏

関東に残る数少ない湿原

 神奈川県の箱根にある仙石原は海抜650メートル、まわりを1000メートル級の山々に囲まれた、舟底状の盆地です。その南側、ほとんど平坦に見える傾斜地に仙石原湿原はあります。ここは神奈川県唯一の湿原で、関東近県でも残り少ない貴重な湿原です。一見、ススキやヨシだけが茂る単調な草地のようですが、一歩足を踏み入れると、乾いた所や少し湿った所、水がかぶっている所、小さな水の流れなどさまざまな環境に恵まれ、それぞれに違った草や木が生えています。あまり広くないわりには多様な植物が集まっていて、その草木を食糧やすみかにして、いろいろな小動物が生息しています。
 仙石原湿原は、箱根火山の末期の活動で早川の上流が小塚付近(台ヶ岳の東側)でせき止められてできた湖や沼のなごりです。これまで火山活動や地震により、何度も破壊されてきましたが、仙石原の地理や地形が湿原の回復に都合のよい気象条件を生み出すため、急速に復元してきました。
 一方で、昭和のはじめから仙石原の観光開発がすすみ、埋め立て、排水などによって湿原は次第に狭められていきました。現在残された湿原10haあまりは特別保護地区として、また一部(0.9ha)は国指定の天然記念物として、昭和9年から保護されています。

初夏に赤紫色の花を咲かせるノハナショウブ
初夏に赤紫色の花を咲かせるノハナショウブ

秋、ススキの白い穂が一面になびく光景は、「かながわの景勝50選」にも指定され、一年中で最も多くの人出で賑わいます。
秋、ススキの白い穂が一面になびく光景は、「かながわの景勝50選」にも指定され、一年中で最も多くの人出で賑わいます。

1年で一番美しい6月

 6月の仙石原は3日に2日は雨。でも、この雨が湿原植物の生長を助けます。雨に濡れて一層鮮やかさを増した緑の中で、仙石原湿原の代表花、ノハナショウブやトキソウ、カキランなどの美しい花々が咲き競い、一年で一番美しい時をむかえます。
 ススキがまだ腰の高さの明るい草原では、ノアザミ、オカトラノオなどの花が目立ち、オオバギボウシもふっくらとした蕾をつけ、茎の下から咲き出しています。
 この時期、もっとも目立つのは低木の花です。6月半ば、サンショウバラが木いっぱいにピンクの大きなバラの花を咲かせます。道沿いにはウツギの真白い花房が垣根をつくり、テリハノイバラ、ガマズミなど白い花が咲いています。4枚の白い苞を十字に広げたヤマボウシ、花付きのよい年は周辺の山肌が白くなるほどです。
 ゆっくりと花々を観察するには箱根湿生花園がお勧めです。

ノハナショウブ
ノハナショウブ

サンショウバラ
サンショウバラ

ヤマボウシ
ヤマボウシ

仙石原にはゆっくりと流れる小さな川がたくさんありますから、夏の夜はホタルが光ります。小川の畔に集まるたくさんのホタルの光りは、まるで小人の街の夜景を見るようです。
仙石原にはゆっくりと流れる小さな川がたくさんありますから、夏の夜はホタルが光ります。小川の畔に集まるたくさんのホタルの光りは、まるで小人の街の夜景を見るようです。

変わりゆく湿原を守る

平成12年に復活した湿原の野焼き、平成元年から復活した、ススキ草原の野焼きと共にその風景は、早春の箱根の風物詩となっています。
平成12年に復活した湿原の野焼き、平成元年から復活した、ススキ草原の野焼きと共にその風景は、早春の箱根の風物詩となっています。

 湿原は、本来徐々に乾燥が進み、森林へと植生が変わっていきます。仙石原湿原でも昭和45年を最後に野焼きが途絶え、笹の一種のハコネダケや高木になるハンノキが繁りはじめて乾燥化し、湿原の植物が減少してきました。
 そこで、平成12年に「仙石原湿原保全計画」が策定され、野焼きと草刈りを実施することで湿原の保全をはじめました。その努力の結果、湿原の代表花、ノハナショウブも少しずつ数を増やしています。
 この季節、仙石原湿原散策のBGMはシュレーゲルアオガエルの静かな合唱です。
 是非、お気に入りの傘を片手にお出かけください。

※今年は震災の影響で野焼きは行われませんでした。

地図
地図

野焼きが行われなかった、今年の仙石原湿原。
野焼きが行われなかった、今年の仙石原湿原。

(一般財団法人自然公園財団 箱根支部 石原和美)

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