「家で防災訓練をしたことがありますか?」
講座でお聞きすると、手を挙げる方はほとんどいません。幼稚園や学校、職場では定期的に訓練が行われているのに、「自分の家で訓練をする」という発想にはなかなかなりません。ですが、普段やっていないことは、いざというときに急にできるものではありません。自宅での練習はとても大事で、一人暮らしの方にも必要です。とはいえ「訓練」と聞くと身構えてしまいます。そこでおすすめしているのが「防災ごっこ」。今回は家の中でできる3つの防災ごっこをご紹介します。
災害時は電話がつながりにくくなり、家族の安否確認が大きな課題になります。
実際に私も、2011年3月11日の東日本大震災のとき、ディズニーシーに行っていた中学1年生の娘と連絡がつかず、夜になるまで安否がわかりませんでした。「生きているのか、無事なのか…」。胸が締めつけられる思いをしたあの経験が、今の活動の原点になっています。
そこで頼りになるのが災害用伝言ダイヤル171。地震や風水害など、大きな災害時に提供される音声メッセージサービスです。毎月1日・15日・正月三が日など、体験できる日が設けられています。「もしもしごっこ」では、この日に家族や親戚と実際に「171」をダイヤルし、録音から再生までを一通りやってみます。
私は1日や15日に講演を行う際、朝に私が入れた伝言(質問)を、講演中に参加者の皆さんに聞いてもらうという体験を行っています。その際は共通の電話番号が必要になるため、主催者の電話番号をお借りしています。操作に手間取り「伝言を聞けなかった」という方もいらっしゃいますが、何度か試すうちにできるようになります。また、30秒以内で伝言を入れるのは意外と難しく、「あらかじめ話す内容を考えておかないといけない」という気づきにもつながります。
だからこそ、事前の体験がとても大切です。家族で使い方を確認しておけば、災害時の不安がグッと減りますし、無駄な通話を避けることで通信混雑を防ぎ、結果的に社会全体のエネルギー利用を抑えることにもつながります。ぜひ、聞いてほしい相手と一緒に「もしもしごっこ」をしてみてください。
夜、家中の電気をすべて消し、まずは真っ暗な状態をつくります。そこが「停電ごっこ」のスタートです。玄関、トイレ、洗面所、お風呂、階段、寝室など、スタート地点は毎回変えてください。災害はどの場所で起こるかわかりません。そこから、懐中電灯やランタン、ヘッドライトなどを手探りで探し出し、スイッチをつけてみます。
・懐中電灯はどこに置いてある?
・手探りで取りに行ける?
・電池は切れていない?
・この明るさでどこまで生活できる?
実際にやってみると、「置き場所を家族で共有できていない」「電池が切れていた」など、意外なつまずきポイントが見えてきます。懐中電灯を頼りに携帯トイレを使おうとしてみると、不便さがよくわかり、「自分に足りない備え」に気づくきっかけにもなります。
「スマホがあるから懐中電灯は不要」と思う方もいるかもしれませんが、災害時はスマホの充電が命綱。明かりとして使うと電池を消耗してしまうため、室内を照らすライトは別に備えておくことをおすすめします。
・暗闇で懐中電灯を探しやすくする工夫
真っ暗な中で懐中電灯を探し当てるのは、想像以上に難しいものです。そこで役立つのが蓄光テープ。日常の光を蓄えておき、暗闇でぼんやり光るテープです。
懐中電灯の持ち手やスイッチ部分に貼っておけば、停電時でも場所がすぐにわかります。強い揺れで枕元から離れてしまっても、緑の光を頼りに見つけられます。小さな工夫ですが、いざという時の安心感が大きく変わります。
私は、家中の懐中電灯・ランタンとそのスイッチ部分に蓄光テープを貼っています。また、ドアノブや電気のスイッチにも貼っています。お風呂上がりに暗い部屋へ戻ったとき、すぐにスイッチの場所がわかることがこんなにもストレスフリーなのかと、毎回感動しています。ドアノブにも貼っているので、もしもの時にも避難しやすくなると感じています。
・懐中電灯の明かりだけで「料理ごっこ」も
懐中電灯やランタンだけで食事を作ってみるのもおすすめです。やってみると気づきがたくさんあります。
・懐中電灯よりランタンのほうが手元が見えて料理がしやすい
・ヘッドライトをつけていると移動や作業が楽になる
・暗い中では包丁や火をあまり使いたくないと感じる
こうした気づきは実際の災害時にとても役立ちます。暗い中での作業を体験してみることで、「どんな道具が必要か」「どんな料理なら安全に作れそうか」がリアルにイメージできるようになります。
・電気のありがたさと省エネ意識が自然と身につく
ライトだけで過ごしてみると、普段どれほど電気に助けられて暮らしているかを実感します。また、電池がもったいないので、ランタンや懐中電灯をつけっぱなしにするのが自然と気になり、限られたエネルギーを大切に使おうという意識も芽生えます。
停電ごっこは、防災の練習になるだけでなく、「電気を大切にする気持ち」や省エネ意識が自然と育つ、環境教育としても優れた取り組みです。家族で楽しみながらできるので、ぜひ日常の中に取り入れてみてください。
「断水ごっこ」もぜひやってみてください。水道を使わずに暮らしてみると、想像以上に水への依存度に気づきます。まず、朝起きてから夜寝るまでに、どれくらい水を使う場面があるか書き出してみましょう。「見える化」することで、実際に断水したとき何をどうすればよいか、具体的に考えられるようになります。
・飲み水はどれだけ必要?
・手洗いは?ハミガキ、洗顔はどうする?
・料理はどうやって?
・食器洗いをなくすには?
・トイレはどう備える?
実際に「半日断水チャレンジ」や、「備蓄している水だけで料理を作る」など、できる範囲で試してみてください。そうすることで、日常にも生かせる節水アイデアや工夫が自然と身につきます。その工夫は災害時に役立つだけでなく、普段の水使用量の削減は、環境負荷の低減にもつながります。
防災は構えるものではなく、日常の延長で無理なく続けられる仕組みやアイデアが大切です。「防災ごっこ」は、家族の年齢や生活スタイルに合わせて自由にアレンジできます。「今日は懐中電灯だけで過ごす日」「半日断水チャレンジ」「今日は171の日だからもしもしごっこ」など、日常に無理なく取り入れるのがおすすめです。
やってみると、家の中の危険や不足している備えが見えてきます。また、節電・節水を意識することで、環境への負荷も減らせます。楽しく続けられる「防災ごっこ」を、ぜひ取り入れてみてください。
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