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「暮らしに役立つ食と防災」バックナンバー

0042025.02.18UP在宅避難で一番大切な備えとは

 被災後、自宅の安全が確認できれば、そこで生活を続ける「在宅避難」を選択することができます。多くの自治体もこれを推奨しています。避難所は受け入れ人数に限りがあり、ストレスの軽減やプライバシーの確保の面でも、自宅で過ごせることのメリットは大きいです。また、ペットがいるために避難所へ行きづらい方も少なくありません。今回は、在宅避難のための備えについてお伝えします。

在宅避難を選ぶ

 自宅が倒壊したり、火災などの被害を受けたりした場合は避難が必要ですが、そうした被害がなければ、必ずしも避難所へ行く必要はありません。自宅周辺に危険がなく、家の中が安全で、十分な備えがあれば、在宅避難は可能です。
 私は2024年9月16日、能登半島地震(2024年1月)の被災地を訪れ、珠洲市と輪島市で被災された方々からお話を伺いました。「自宅は半壊したけれど、避難所から戻って生活した」とおっしゃる方に、「断水の際はどうされましたか?」と尋ねると、「雪を溶かしてなんとかしのいだ」とのことでした。お話を伺った皆さんが口をそろえて「やっぱり自分の家が一番いい」とおっしゃっていたのが印象的で、どんな状況でも自宅で過ごせるように備えることの大切さを改めて実感しました。


珠洲市内(2024.9.16)

珠洲市内(2024.9.16)

輪島に向かう途中 液状化で飛び出たマンホール(2024.9.16)

輪島に向かう途中 液状化で飛び出たマンホール(2024.9.16)


在宅避難は備えなしでは成り立ちません

 電気・ガス・水道など、すべてのライフラインが止まった自宅は、テントの中と同じ状態だと思ってください。山でテントを張ってキャンプをする際、何が必要かを考え、必要なものを準備して持参しますよね。
 私は小学生の頃、ガールスカウトに所属しており、夏にはテントを張り、明かりは懐中電灯のみ、火を起こしてご飯を炊いて、トイレは穴を掘って済ませ、水は限られた量しか使えず、寝袋で寝る――そんな体験をしました。そのとき、かなりの荷物を背負っていたことを覚えています。この経験から、ライフラインが止まったら在宅避難も同じような状況になるのだと実感しました。十分な備えがなければ、在宅避難は成り立ちません。


約45年前、小学4年生頃の写真

約45年前、小学4年生頃の写真


在宅避難で一番大切なのは「命を守るための備え」

 在宅避難で最も重要なのは、「命を守るための備え」です。何があっても命を守ることが最優先。そのために、一番大切な備えは何でしょうか?
 「水の備蓄!」「トイレの備え!」と答える方が多いですが、もちろんそれらも大切です。しかし、命を守るために最も重要なのは「家を安全にすること」です。具体的には、耐震補強を行い、家具や家電の転倒・落下・移動防止対策を徹底することが求められます。
 家の中が安全でなければ、命を守ることはできません。どんなに水や食料を備えていても、家が倒壊したり、備蓄品が収納棚ごと崩れ、自分が下敷きになってしまったら・・・とても無念だと思います。「備え」と聞くと、つい水や食料の確保を優先しがちですが、命を守るために、まずは自宅を安全な場所にすることを心がけましょう。


寝室を安全な場所にする

 寝室に「枕元セット」を用意していますか?備えておくとよいものは、懐中電灯、ホイッスル、軍手、手ぬぐい、そして足を守るものです。
 寝ているときは無防備な状態です。大地震が発生すると窓ガラスが割れることがあります。煙が発生するとすぐに避難しなければなりません。しかし、ガラスの破片が散乱する中、裸足で逃げるのは非常に危険です。すぐにスリッパや靴を履いて、足を守ることが大切です。
 わが家の場合、子どもが小学生時代に使っていた上履きを枕元に置いています。上履きは簡単に履けて、そのまま外に出ることもできるため、おすすめです。用意したものは手が届く場所に、ひとまとめにして置き、吹き飛ばされないように工夫しましょう。


吹き飛ばされないようにベットにかけた枕元セット

吹き飛ばされないようにベットにかけた枕元セット

枕元セットの中身

枕元セットの中身


キッチンを安全な場所に

 キッチンは災害時に「デッドゾーン」と化すことがあります。家電や食器、調理器具が吹き飛ばされると凶器になり、割れたガラスが飛び散ることで後片付けが非常に大変です。
 食器棚には多くの方が突っ張り棒などで転倒防止対策を施していますが、冷蔵庫にも忘れず対策をしましょう。突っ張り棒は地震の揺れで外れることがあるため、ストッパーと併用することをお勧めします。できれば壁にしっかり固定する方がより安全です。
 特に洪水浸水想定区域にお住まいの方は十分に注意してください。もし水が床上浸水した場合、冷蔵庫は浮いて移動し、それが凶器になることもあります。水が引いた後、冷蔵庫がその場で落下する危険もあります。重い冷蔵庫を自分で動かすのは難しいため、壁に固定して移動できないようにすることが重要です。冷蔵庫が倒れて瓶詰めジャムなどが飛び出て割れると、せっかく食べられるはずのものも無駄になってしまいます。
 私の家の冷蔵庫は壁にしっかりくっつけて固定しています。ホームセンターでは、冷蔵庫転倒防止用のアイテムがさまざま売られているので、自分の家に合ったものを見つけて取り入れてください。
 ちなみに、我が家の冷蔵庫を買い替えたとき、粘着テープがなかなか剥がれず、大人2人で力いっぱい剥がした結果、壁紙がごっそり剥がれてしまいました・・・。それだけ強度が強いということですね。でも冷蔵庫を置けば隠せるので、我が家の場合は問題なし。やはり、安心に勝るものはありません。

 また、全ての窓ガラスや食器棚などにガラス飛散防止フィルムを貼ることも非常に有効です。さらに、消火器も必ず用意し、すぐに取り出せる場所に置いておくことが重要です。初期消火は非常に大切です。最近はおしゃれなデザインの消火器が増えており、我が家の消火器は白色のスリムタイプです。目立つ場所に置いて、飾るようにしています。防災館で消火器の使い方を練習したので、もしもの時に活用できるように普段から「ピン、ホース、レバー」と唱えながらイメージトレーニングを行っています。初期消火は本当に大事です!


冷蔵庫粘着テープ

冷蔵庫粘着テープ

わが家の消火器

わが家の消火器


 今回は在宅避難の備えについてお伝えしました。災害時、最も大切なのは命を守ることです。命を守った後、次に大切なのは健康を維持することです。災害関連死を防ぎ、心身ともに健康でいることが非常に重要です。健康で過ごすために必要なことについて、次回お伝えいたします。

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  1. 001「目玉おやじに私はなりたい」
  2. 002「防災と食の本に込めた思い」
  3. 003「即食レシピとお湯ポチャレシピ」
  4. 004「在宅避難で一番大切な備えとは」

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