黒い森・シュヴァルツヴァルトに水源を有するネッカー川は、昔から、水上交通の利用が盛んな河川です。川沿いの町は古くから発展し、今もなお、複数の古城が点在しているので観光地として人気があります。なかでも、宮廷のあった城跡やドイツで最も古い大学、そして石畳が敷き詰められた中世さながらの町並みを持つハイデルベルクは、この地域の観光の拠点になっています。
旧市街地の中心にあるカール・テオドール橋のたもとには、ステンレススチールでできたキラキラと輝くモダンな遊覧船の発着駅があります。遊覧船は、太陽のエネルギーを動力源とする「ネッカーソーラー号」です。
ネッカーソーラー号は、2004年6月に運行を開始しました。長さ24.90メートル、幅5.3メートルで、重さ50トン。収容乗客数は110人です。ひとつ50キロワットの電動モーターが2台取り付けられ、最速だと時速13キロメートルで航行します。
船の心臓部には、5.7キロワットの発電容量【1】を持つ太陽光発電設備が取り付けられており、ソーラー船としては世界最大級。発電された電力は、バッテリーに蓄電できるので、夜間や冬季、雨の日にも、ソーラー船の遊覧ができるようになっています。
2002年、現市長であり、当時の環境担当の副市長だったヴィルツナー氏や職員たちが、観光都市ならではの環境対策のひとつとして、ソーラー船の実現を目指すプロジェクトを立ち上げました。当初、乗船人数10名ほどの小さなソーラーボートを導入する予定でしたが、船舶運送会社で大型船の船長をしていたイズルホーファー氏がプロジェクトに加わったことにより、大型観光遊覧船へと、アイデアが膨らみました。
イズルホーファー船長は、副市長とともにスポンサー集めを開始。その結果、ハイデルベルクを拠点に持つ保険会社や大手のソフトウェア会社、地域都市公社【2】などが資金提供を申し出てくれました。
そして、ネッカー川のほとりにある船舶デザイン会社に委託してソーラー船を建設、2004年、運行開始に至りました。
イズルホーファー船長は、「排気ガスも出さず、川も汚さず、騒音も出さず、中世の船と同じ」と自慢げに胸を張ります。
ハイデルベルクには、複数の遊覧船会社がある中で、今では年間3万5000人から4万人が利用するハイデルベルクを代表する遊覧船会社に成長しました。
ゆったりと、エンジン音もなく静かに走るソーラー船に乗り、美しい中世の古城や町並みを眺めながらの船旅は、往時の船旅を偲ばせてくれます。
ネッカーソーラー号の企画から行政一体となった経緯のエピソードが素晴らしいし、スタッフにも恵まれて実現したプロジェクトで推進した地球温暖化対策の一例。令和3年(2021年)になっても対策が進まず世界中で大問題に掲げられてますが毎年起こる大災害の原因である事は明らかです。出来る事から少しでも二酸化炭素を発生させない努力が急務です。ドイツは世界でも温暖化対策の先進国。案件を先駆けして実践する姿を日本も見倣いたいです。
(2021.01.25)
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