オーストラリアには、有袋類をはじめとする固有の野生動物が多く生息しています。他の国には生息していない珍しい動物たちの種を存続させるために、様々な保護対策がとられていますが、最も重視されているのは外来種の問題です。
移民国家であるオーストラリアは、18世紀のイギリスによる植民地宣言を機に、たくさんの西洋人が入植しました。最初に到着した本国イギリスからの入植者を乗せた船には、人間以外にも、ウサギやニワトリなどの動物が食料として運ばれてきたほか、食料に紛れ込んでいたネズミなども意図せず乗り込んでおり、オーストラリアの地を踏むことになりました。
時を経て、入植者が増加すると共に、運搬のための馬や牛、家畜としての羊や牛なども増えていきました。また、イギリスの貴族たちが、移住先でも本国で楽しんでいたキツネ狩りをするためにキツネや狩猟のための犬を導入したほか、大陸中央部の砂漠地帯を探検するための運搬用として中東諸国から連れてこられたラクダ【1】など、人間たちが持ち込んだ動物の種類はどんどん増えていったのです。
これらの動物たちは、もともとオーストラリア大陸には存在しなかった動物ばかり。面倒をみきれなくなって放置されたり、逃げ出したりした外来種の動物たちは、今では野生化し、固有種の動物たちを脅かす存在になっています。
近年では、犬や猫などのペットが野生動物を襲うケースも増え、とくに人口の多い都市部においては深刻な問題となっています。
シドニー近郊でも犬や猫に小型の有袋類やペンギンなどが襲われ、個体数が激減しています。また、ペットとして飼われていたウサギが野生化し、エサを含む生活環境が競合する有袋類のバンディクートが生息域を奪われるという事態になっています。自治体が、野生化したウサギを駆除するために毒入りの餌を置いたりしていますが、間違ってバンディクートが食べて死んでしまうケースもあり、まったく功を奏していません。
一部の地域では、ペットによる野生生物への被害を防ぐため、地区全体を保護区とし、犬や猫をリードなしで屋外に出すことを禁じるだけでなく、新たにペットを飼うことを規制する自治体もでてきています。
オーストラリアに古くから生息する有胎盤類の中に、ディンゴと呼ばれる野犬がいます。現在では他の地域には生息していませんが、オーストラリア大陸の純粋な固有種ではなく、一説によると、3?5万年前にアジアから人類が渡ってきた際に、旅の友として連れてきたと言われています。
野生化したディンゴは、大陸内で繁栄していた有袋類の一部と競合し、その結果、敗れたフクロオオカミ【2】が絶滅に追いやられたとされています。人間が持ち込んだ外来種によって、その土地の固有種が絶滅に追いやられる事態は、遥か何万年もの昔から起こっていたのです。
しかしそのディンゴも現在では、その後入ってきたペットとの安易な交配などによって、純血種の存続が危ぶまれ、保護活動が活発化しています。人間の行為が生態系に及ぼす様々な影響と、その解決の難しさを痛感するばかりです。
※次回は、農業対策として持ち込まれた外来種によって引き起こされている深刻な事態についてご紹介します。
いいね
(2022.11.22)
とてもわかりやすく、参考になりました。
学校課題のレポートに引用させていただいてもいいでしょうか
(2022.07.15)
おもしろい
(2022.06.23)
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.