メインコンテンツ ここから

「オーストラリアの野生動物保護」バックナンバー

0012012.05.01UPオーストラリア最大の野生動物保護団体

ゴンドワナ大陸の名残をとどめる生態系

 オーストラリア大陸はその昔、超大陸『ゴンドワナ大陸』の一部でした。約6,000万年前に起こったとされる大陸分裂により孤立したため、旧大陸の一部であった頃の生態系がそこかしこに残されています。そのため、大陸分裂以前に繁栄した太古の植物や動物たちを今でも容易に見ることができます。

ゴンドワナ大陸の名残をとどめたオーストラリア大陸
ゴンドワナ大陸の名残をとどめたオーストラリア大陸

他の大陸にはほとんど生息していない有袋類
他の大陸にはほとんど生息していない有袋類

 オーストラリアの代名詞ともいえるコアラやカンガルーといった有袋類も太古の時代にこの地に渡り、他の大陸とは違う形で繁栄してきたと考えられています。また、現在の哺乳類の祖とされる単孔類【1】もいまだに現生しており、固有種の数は1,300種以上にも及びます。こうした点からも、オーストラリアは、他の大陸では見られない珍しい生き物の宝庫と言われています。

古代から生き延びたとされる単孔類のハリモグラとカモノハシ
古代から生き延びたとされる単孔類のハリモグラとカモノハシ


固有の生態系を守るボランティア

巨大なパイソン(ニシキヘビ)もオーストラリアの固有種
巨大なパイソン(ニシキヘビ)もオーストラリアの固有種

 オーストラリア大陸のみに生息する珍しい生き物を守るために、国や自治体だけでなく、民間レベルでも様々な保護活動が行われています。そのうちのひとつでもある、ニューサウスウェールズ州の「WIRES」は、メンバーのほとんどがボランティアとして活動する国内最大の野生動物保護団体です。現在2,000名以上がメンバーに名を連ねています。

車にひかれて命を落としたアオジタトカゲ
車にひかれて命を落としたアオジタトカゲ

住宅に棲みついてしまった有袋類ポッサム
住宅に棲みついてしまった有袋類ポッサム

 WIRESの主な仕事は、野生動物の救助や介護。人口が増えるのに伴い、野生動物の生息域が狭められ、交通量の増加と共に交通事故が増えています。また、電線にひっかかったり、人間によって持ち込まれた外来種やペットに襲われたりするケースもあります。こうした人間の生活活動に伴って増える傷ついた野生動物たちを救助し、手当てや介護をしながら、可能な限り再び野生に戻すのが一番の任務。私もボランティアとして携わっていますが、活動するためには、野生動物に関する様々な知識習得のための講習会を受講し、資格を取得する必要があります。

野生動物への救助&応急処置資格の証明書
野生動物への救助&応急処置資格の証明書

 これ以外にもWIRESでは、国立公園のレンジャーと連携し、一般向けにも野生動物に関する情報提供を行っています。自分たちの国に生息する固有の生き物に関心を持ってもらい野生動物の保護・繁栄につなげようというのがその狙い。学校や地域のコミュニティなどでの講演会やトークショーを通じ、市民が学習する機会を持ってもらえるような活動も行っています。ちなみにWIRESとは、Wildlife Information, Rescue and Education Service の略で、日本語に訳せば「野生生物に関する情報、救命および教育の提供」といった感じでしょうか。

世界中から寄り集まった人々が支えるWIRES

オーストラリアの美しい自然と生き物に関心を持つ
オーストラリアの美しい自然と生き物に関心を持つ

 オーストラリアは移民国家のため、世界中から様々な民族が移住しています。ヨーロッパやアメリカなど、人口の多い北半球から移り住んできた人が、まっ先に驚くのが他の国では見られない固有の自然だといいます。そして、そこに生息する珍しい生き物に興味を持ち、保護活動への参加を考えるようになったという人がとても多いのです。WIRESのメンバーもそんな人たちがたくさんいます。
 日本でも、生まれ育った土地でしか暮らしたことがないと身近な自然の素晴らしさやかけがえのなさを意識できないことも少なくはありません。ですが、一度外へ出てみると違った視点から見えてくるものも多く、またよその地域から訪ねてきたり移り住んできたりした人たちの視点や感動を通して、それまで当たり前のように見過ごしてきた地域ならではの素晴らしさを再発見できたりするものです。

傷ついた野生動物を再び野生へ帰す
傷ついた野生動物を再び野生へ帰す


 オーストラリアには、世界中から人々が寄り集まって成り立つ移民国家ならではの、外から見た視点が常にあります。こうした新鮮な視点が、この国の野生動物保護を支えていると言っても過言ではありません。


注釈

【1】単孔類
 哺乳類なのに卵を産む、極めて原始的な生き物。化石を含めて4科が確認されていますが、現在、生きた状態で見られるのは、カモノハシ(プラティプス)科とハリモグラ(エキドナ)科の2科のみ。どちらもオーストラリア区=元々同じ大陸であったオーストラリア、ニューギニア島、ニュージーランドとその周辺諸島のみに生息しています。

このレポートは役に立ちましたか?→

役に立った

役に立った:47

このレポートへの感想

筆者です。コメントありがとうございます。WIRESの活動や組織については、以下の公式サイトから問い合わせてみてください。
https://www.wires.org.au/
(2018.07.20)

私は動物保護に興味があります。
Wires の方と活動などについて、インタビューしたいのですが、どうすればいいかですか?
(2018.07.20)

日本ではエゾシカやカンガルー、トナカイ、ダチョウ、クロコダイルを出してる居酒屋があります。
仕入れはどうしてるから知りませんが
寄食として有名です。
ちゃんと許可はもらってたとしても
こうゆうのは残念です。

大阪市難波にある味園ビルにある赤狼とゆうおみせです。

(2017.01.25)

全ての感想を表示

感想コメントはこちらから

前のページへ戻る