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「大学で学ぶエコ・2 」バックナンバー

0082012.03.13UP卒業研究を通して学ぶこと

研究のスタート

 大学生になって初めて自分ひとりで研究というものに取り組み始めるのが、卒業研究ではないでしょうか。都市環境工学コースでは4年生の5月に各研究室からテーマが提示され、そのなかから自分の興味あるものを選び、所属研究室を決定します。
 その後、6月から7月にかけて、自分の選んだ研究テーマに関連した他の研究の文献を、多い人では20本以上、さらに英語の文献なども読み込んで小論文を作成し、みんなの前で発表します。このステップはとても大事で、これまでの研究でどのようなことが行われていて、またどのような点が欠けているかを知り、自分の研究を行う意義を明らかにする目的があります。

本番は9月から

 多くの学生は9月の初めに大学院入試を受けるので、それが終わってから本格的に卒業研究を始めます。まずは教員とのミーティングを通して、研究テーマを絞っていきます。
 我々の研究室では、ひとりの卒論生につき2?3週間に一回の頻度で、1?1時間半のミーティングを行います。卒論の提出日は2月の初め(今年は2月7日でした)なので、そこまでに10回程度の個人ミーティングを行うことになります。
 ミーティングとミーティングの間が数週間空くので、学生は自主的な作業を求められます。この期間に遊んでしまうと、ミーティングの前夜に急いで作業をしたり資料を作ったり、ということになるわけですが(そういう学生さんも多々見受けられますが)、教員側は資料を見れば、時間をかけて作業したかどうかだいたいわかってしまうものです。

今年のテーマは

外濠の現場調査を行う4年生のY君(左)
外濠の現場調査を行う4年生のY君(左)

 卒業研究には、プロジェクトをいくつかに絞って、何人かの学生でチームを組ませて進めるというやり方もあります。でも、環境システム研究室では「ひとり1研究テーマ」という原則で研究を進めています。
 例えば今年、卒論に取り組んでいる学生は3名いるのですが、それぞれのテーマはバラバラでした。『宇都宮の現状を考慮した再生可能エネルギー導入ポテンシャルの評価』を行っているO君は、宇都宮を対象に、太陽光や風力、バイオマス発電といったさまざまな再生可能エネルギーがどれくらい導入できるかを調べました。
 また、K君は『環境教育ツールとしてのソーシャルネットワーキングサービスの利用実験』というテーマで、大学生にFacebookを使って環境行動を報告してもらう社会実験を行いました。
 もうひとりのY君は『江戸城外濠の水質浄化を目的とした環境用水導入の効果とコスト』というテーマで卒論研究を進めました。外濠に持って来られそうな下水再生水や湧水などが東京都内にどれくらいあるかを調べて、それを持ってきた場合に外濠の水質はどうなって、さらにコストはどれ位かかるのか、を明らかにしようとしました。

次のステップに進むためのひとつの集大成

流速を測ろうと試みるも、遅すぎて測定できず。しかし試行錯誤できるのが卒論の醍醐味でもあります
流速を測ろうと試みるも、遅すぎて測定できず。しかし試行錯誤できるのが卒論の醍醐味でもあります

 卒論は事前にレールが敷かれているわけではないので、当然やってみてうまくいかなかった、ということも数多く起きてきます。今年も、K君の社会実験にうまく人が集まらなかったり、Y君の現場調査用に高額の流速計を借りて現場に行ってみたら流速が遅すぎて測れなかったりと、いろいろな試行錯誤がありました。
 しかし、それらを通して、自分で考え、自分で解決していく能力を養うことができるのです。

 学生が実際の社会に出て行った時、簡単には答えが出ない複雑な問題をあつかう機会もたくさん出てくるでしょう。卒業研究は大学生活の集大成となるだけでなく、将来学生が社会に出て、さまざまな問題に直面したとき、自分で考え行動できる力の礎(いしずえ)となるものであってほしいと思います。それはどれだけこの卒業研究期間に、ストイックに努力できたかにもかかっているような気がします。
 自分自身のことにだけに時間を使える、というのは学生時代の特権です。学生の皆さんには、ぜひ頑張ってほしいと思っています。


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