大学教員には、大学と大学院両方の講義を受け持っている教員が多くいます。私もその例にもれず、大学の都市工学科と大学院の都市工学専攻を担当しています。そのうち、都市工学科の必修科目となっているのが演習です。
単なる講義とはちがい、各学生が実際に手を動かし、現実の社会を対象として作業をすることで、環境工学の基礎と応用力を身につけるのが狙いです。演習は、2年生の冬学期【1】から始まり、4年生の夏学期まで続きます。
各学期に行う演習の内容はさまざまで、広い範囲に渡ります。都市工学科に配属が決まる2年生の冬には、幅広く環境問題を理解することを目的に、「環境問題の論点整理と構造化」と「都市活動のエネルギー消費と環境負荷評価」という演習が設定されています。前者の課題では、世の中にあふれる環境問題に関する議論に対して、信頼できる情報源からの資料やデータを集め、何が正しくて何がはっきりしない情報なのかを整理して、課題と解決策を明らかにする方法を学びます。後者では、いくつかの都道府県を対象に、統計データからエネルギー消費や環境負荷量を算出して、各都道府県の規模や産業構造、市民のライフスタイルといった、さまざまな要素との関連を調べることで、環境問題を定量的【2】に議論する姿勢を身につけます。3年生になると、環境を評価するためのいろいろな手法を学びます。評価対象は、水環境や大気環境、化学物質によるリスク、上下水道、と幅広いですが、いずれも環境評価のための基礎力をつけることに主眼が置かれています。ですから、評価に必要な水質・大気の環境中での値を実際に測定する方法や水処理技術を学ぶ実験演習も同時並行で行われます。
そして4年生になると、これまでに修得した基礎力を駆使して、地域を総合的に評価するための応用力をつける演習が組まれています。
演習では、実際の地域を対象に分析を進めることも少なくありません。例えば、3年生の夏に行う「流域汚濁負荷解析」では、各班で河川流域をひとつ選びます。その流域で、生活排水や農業などから生じる汚濁物質(有機物や窒素やリンといった栄養塩など)の量と、それらが河川に流れ込んで、下流までいった時、水質にどのように影響するかを、解析していきます。
また、身近な所から持ってきたサンプルを分析してみることで、具体的な分析方法を身につけると同時に、身の回りの環境を数値で表すとどれくらい…といった感覚も養っていきます。
3年の冬には、班ごとに朝から都内の河川に出向いて、調査を行い、採取したサンプルの分析と評価をします。夏の演習でやった「流域汚濁負荷解析」の実地演習のようなものですね。
このような演習を通じて、環境工学者としてのセンスを養うと同時に、発表の仕方やグループワークの進め方など、講義だけでは得られないスキルを身につけていくこととなるのです。
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