皆さんは日々の生活の中で、どれくらい環境に優しい行動をとっていますか? 例えば、買い物に行く時はマイバッグを必ず持っていきますか。使わない電気は消すようにしていますか。なるべく車は使わず歩くようにしていますか。
修士2年の青木さんは、上に挙げたようなさまざまな環境行動を対象に研究を進めています。まず、57の環境行動について全国数万人を対象としたアンケートを行い、それぞれの行動がどれくらい実行されているかを調べました。さらにその結果を使って環境行動を分類し、分類ごとにどのような心理的因子が行動に影響を与えているかを明らかにして、最終的には、市民に対しどのような伝え方・働きかけをすれば良いかを考えていきます。例えば、“情報を伝える”というやり方ひとつをとってみても、「(この活動で)どれだけCO2が出るか」という情報が市民の行動を変えるのに有効かもしれませんし、「他の人もやっているか」、「どれだけコストが抑えられるか」といった、別の情報の方が有効な場合も考えられます。
そこで先日は、日常生活のそれぞれの行動によって発生する環境負荷(ゴミやCO2など)を情報のひとつとして取り上げ、これをどうやって市民に伝えたら実際の行動変化につながるのか、その手がかりを得るために、練馬区民の方を対象に市民向けの環境講座をおこないました。
講座では、環境負荷を算出する時に用いているライフサイクルアセスメントの考え方をどのようにしたら市民の皆さんにわかりやすく伝え、理解してもらえるかが大きな課題でした。
例えば、3合のご飯を炊いて半分を食べたとして、残りの1.5合をどうするか考えるとします。そのまま炊飯器に保温しておく人もいるでしょう。一方、ラップに包んで冷凍しておいて、食べる時に電子レンジで温める、という人もいるかもしれません。これらのうち、どちらがどれくらいCO2やゴミを発生しているかを市民の皆さんに示すことによって、ライフサイクルで環境負荷を考えるということを理解してもらうよう、講座を進めていきました。
講座の中では、その他にも「マイバッグvs レジ袋」「使い捨てボトルvs 詰替え容器」「使い捨てカップ vs タンブラー」といったように、日常生活の中で選択を迫られる行動を複数取り上げました。それぞれの行動から出される環境負荷の数値は、修士1年の新保君が、卒業研究の際に算定したものを使いました。
講座の後半では2つのグループに分かれて、それぞれができると思う環境にやさしい行動Top 5を考えてもらい、発表してもらいました。例えば、片方の班から「掃除機を使わずほうきを使う」という案が出されたのに対し、別の班のメンバーからは「普段の掃除でとてもそんなことやってられないわ」という意見が出されるなど、議論は大いに盛り上がりました。
ほうきの例のように、環境にやさしい行動といっても、行動変化に伴って生ずる手間やお金などを考えるととてもできない、というものもあります。このように、各行動がどれくらい世の中の人に受け入れられるかを考えることも、青木さんの研究の中では重要なテーマとなっています。
今回の環境講座は初めての試みであり、まだまだ改善点も多く、必ずしもライフサイクル的な考え方を伝えきれたとは言えません。例えば今回参加した市民の皆さんからは、「タンブラーってそもそも使わないよね」という意見が聞かれました。次回は、取り上げる事例が受講者の年齢層や性別に合っているかどうかも、考慮しなければなりません。さらに、コストやその他の情報の効果も検証していくことが必要です。これらを通して、市民の皆さんの環境行動を促すための、よりよい情報伝達法を考えていければと思っています。
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