4月半ばは、異常な寒さで野菜は困ったことになっておりました。特に春のキャベツが遅れて、日本中、キャベツが無い状態、キャベツがとんでもない値段になっております。トンカツ屋さんやお好み焼き屋さんはホント、困ってることでしょう。
オソロしいのは、果樹の花が咲く時もこんな気温だったら…ってことですね。果物や果菜(*1)など、実のものは当然、花が咲いてから受粉して実ができるんですから、花がダメだったり受粉しなかったりしたらアウト、です。寒さ自体、花や花粉に悪影響ですが、さらに寒くて虫たちが飛ばないと、受粉もできません。
幸い、これを書いている4月末からだいぶ暖かくなりましたが、まだまだ油断できません。掲載される頃はどんなことになっているか、とても心配であります。
そもそも花ってのは何のためにあるんでしょうか?人間が「まあきれい!」と感動して飾ったり、花を眺めながらその下で酒飲んで酔っ払ったりするためにあるんでしょうか?
この世の花のほとんどは、虫などの動物たちに受粉を手伝ってもらうためにあります。花の歴史は虫たちの歴史とともにあるわけですね。
虫たちに植物から植物へ飛び回って花粉を運んでもらうため、あのハデな色で目だって、いい香りまでさせて、蜜のおみやげまで付けて、至れり尽くせりの接待をしちゃう、太っ腹な作戦が「花」の正体なのです。
しかも、色も、ニオイも、狙った虫の好みに合わせてコーディネートすることで、お得意様の虫を確保。お得意様作った方が確実なのは、飲み屋や旅館の経営も一緒ですね。
ラフレシアという、世界で一番でっかい花があります。この花はものすごくクサイ!ってことで有名ですが、世の中、マニアックなヤツが必ずいるもんです。数多い、いいニオイ好きな虫は無視(ダジャレすいません)して、腐ったものが好きなハエのような虫たちを呼び寄せるという競争率の低い「穴」狙い大作戦によって、いまだに生き延びているわけです。
ミツバチが消えてしまう現象、CCD(蜂群崩壊症候群)が世界的に増えていると聞いたことがあるでしょうか?ミツバチが消えてしまうと困るのは、ハチミツ屋さんだけじゃないのです。
ローワン・ジェイコブセンの「ハチはなぜ大量死したのか?」という本には、このミツバチがいなくなる現象でアーモンド農家も壊滅の危機にあることが書かれています。なぜなら、アーモンドはミツバチに受粉してもらって実を付けるからですね。
植物は虫とともにある。虫が滅びたら、ほとんどの植物も滅ぶってことなのです。
じゃあ何で植物は、他人である虫にその一族の運命を託すようなキケンなことをしてるんでしょうか?生物によっては細胞分裂で増えていくモノもおります。そうなると遺伝子はほとんど一緒になり、たまたまその生物に強く作用する病原体があると、一族全滅です。遺伝子がちょっとずつ違えば、なかにはその病原体に強い遺伝子を持ったヤツがいて生き残り、一族は再び復活できる。
だから、生物は雄と雌と分けて交配して、ちょっとずつ違う遺伝子が常にミックスするようにしたわけですね。植物の場合、それが「受粉」という作業。最初、風などで花粉を運んでたけどあまりに不安定なので、やがて「あれ、虫を使ったほうが確実じゃん!」となったんでしょう。
この受粉というしくみのおかげで植物はどんどん多様になり、例えば同じアブラナ科アブラナ属でも、キャベツと小松菜とカブという別な種類になってくれました。だから僕らは夕食のホイコーロー定食に、小松菜のおひたしとカブの漬物を付けることもできるわけですな。
本来、虫たちを呼び寄せるための花を、ニンゲンたちも「あらきれい!」「いい匂い!」と思ってしまうんだから、人間も虫も基本的にあんまり変わらない、ってことでもあるんじゃないでしょーか?
写真が…(笑)
思わず拡大してしまいました。
(2010.05.21)
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