今の世の中、ほとんどのメジャーな野菜は、年間通じて食べることができますな。
例えばトマト。夏の野菜ですから、冬はハウスでボイラーを焚いて栽培することができます。沖縄だったら真冬でもボイラー使わなくても栽培できますが、飛行機で輸送しなきゃいけないので、コスト的にはこっちの方がかかったりしちゃいます。
玉ねぎやじゃがいもは、春は九州から出てきてだんだん産地が北上し、秋には北海道産が出てきます。
キャベツやレタス、大根やほうれん草などは春や秋に千葉や茨城などの平地で栽培し、冬はもっと暖かい地域で栽培することになります。冬のキャベツや大根は黒潮に暖められる銚子や三浦半島、渥美半島などが有名。もちろん南の九州などでも作られます。冬のレタスは静岡県の暖かい地域や、香川県なんかが有名ですね。
じゃあ夏はどうしてるんでしょう?
夏は、涼しいところじゃないとムリです。でもクーラーかけるわけにもいきません。暖房よりも冷房の方がずっとエネルギーを使い、コストがかかりますよね。
だから、岩手県や青森県、北海道などで作られてますが、ひとつ問題があります。東京などの大消費地まで遠い、ってことですね。
例えば、クール宅急便で運べば、一箱1000円くらいかかりますね。これにキャベツが10個入ったとして、それだけでコストは1個100円!野菜の値段と同じくらいです。
もっとも、クール宅急便なんて使わず、農家は専用トラックでどーんと運ぶわけですが、消費地まで遠いと価格的にそれだけ不利になるのであります。
そこで、高原の産地の出番であります。群馬の嬬恋村や、長野県の川上村は有名ですね。ここは東京まで100kmから200km。岩手県が東京まで600kmくらいあるので、それよりぜんぜん近い。
だいたい、標高が60m上がると平均気温は1℃下がると言われております。この、八ヶ岳や浅間山などの周辺の高原地帯は、標高が1000m以上あり、北海道くらいの気温なのであります。
夏しか稼げないこの高原地域の農家は、雪に閉ざされる冬はヒマですが、夏は戦場。
先日、川上村の農家の所に行って来ましたが、朝、というより夜中と言った方がいい、3時くらいから、サーチライトを点けて収穫を始めます。レタスは朝収穫しないと品質が落ちるので、朝8時くらいには収穫を終えるわけです。
さて、私ら野菜の流通の人間が、最も頭をかかえるのは6月から7月くらいの時期。
梅雨といえば、いろんなものが腐ったりカビたりする時期。弁当は腐るし、ワタクシの左足に潜むミズムシ君が暴れだすのもこの時期です。
十分な湿気と生物が活動しやすい気温。これによって、菌たちにとってのパラダイス、最も作物を病気にして腐らせる時期なのです。
この菌の被害に会いやすいのがレタス。畑の菌は土にいるので、雨で土がはねてレタスにくっつく事になります。そして葉っぱの下の方でゆっくりと増殖して、収穫してからも増殖が進んで、私たちの倉庫につく頃にはレタスがとろ?りとトロけてたり、外からはわからなくてもレタスを切ると中が腐ってたりするのであります。
そもそも、野菜自体が、収穫してからも活発に呼吸をします。自分のエネルギーを消費するので、野菜の品質は悪くなるし、野菜の温度も上がって微生物の動きが活発になって腐りやすくなる。
これを避けるのに、産地では出荷前に野菜をよ?く冷やす「予冷」というのを行います。冷えれば野菜が仮死状態となり、呼吸が押さえられるし、微生物の動きも止まります。
しかし、なかなか温度を低いまま流通するのもムツカしいものであります。なにせ、そもそも、涼しい地域から、暑い都会にやってくるのですから。
消費者の方から、レタスを切ったら中が腐ってた!というお声を毎年、頂戴してしまいます。これでもいろいろ努力はしているのですが…。ああ悩ましい…。
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