「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー
西オーストラリアの西岸部、パースから約850キロ北にある「シャーク湾」。類まれなる素晴らしい自然が見られることから、1991年世界自然遺産に登録されました。
シャーク湾が、地球上において貴重である最大の理由のひとつは、湾内のハメリン・プールという浅瀬のエリアで、地球創世期に誕生した「ストロマトライト」の比較的大きな群生が見られることにあります。
このストロマトライトの群生が見られるシャーク湾は、西オーストラリア州の中西部沿岸部にあります。周囲は世界遺産の大自然に囲まれ、人工的なものはひとつもなく、聞こえてくるのは波の音だけ。視界に入ってくるのは、どこまでも続く大海原と、ところどころ剥き出しになった赤茶けた大地、そして、大地を覆うように生える低灌木の緑が絨毯のように広がっている光景です。
ストロマトライトとは、シアノバクテリアと呼ばれる藍藻類の活動によってつくられた層状の堆積構造の岩石です。シアノバクテリアの死骸や海水中の石灰砂が積み重なって少しずつ成長していきます。見た目は、単なる黒い岩の塊のようにしか見えない物体ですが、実は「微生物=生き物」であるということに、まず驚かされます。
このストロマトライトは、地球にとって極めて重要な役割を果たしてきました。
ストロマトライトは、25から30億年ほど前には、地球上の様々な場所に存在していたとされ、大量の酸素をつくり出したと言われています。最古のものは、約37億年前と推定される化石が見つかっており、そのほかにも世界各地で発見されてきたものの、今なお成長し続けるストロマトライトの存在はもはやないと考えられてきました。
ところが、1960年代に西オーストラリア州のシャーク湾で、現生するストロマトライトの存在が確認され、世界を驚かせました。表面の黒い着色物を詳しく研究したところ、シアノバクテリアだということがわかりました。現在もシャーク湾内のハメリン・プールで見られるストロマトライトの群生は、いわば、“生きた化石”。その後、西オーストラリア州のインド洋沿岸部に点在する一部の汽水湖や淡水湖、また、メキシコやブラジルの閉鎖的な水域などで、小規模な群生が見つかっています。
ストロマトライトが直径20cmに成長するためには、1,000から2,000年かかったと推定できることから、シャーク湾のストロマトライトが成長してきた期間は、少なくとも5憶年以上!さらに、1年に0.3mmという非常にゆっくりとした速度で、今も成長を続けているそうです。
では、なぜ、多くのストロマトライトが化石化した地球上で、シャーク湾にはいまだに大きな群生が存在しているのか?その理由は、現在も調査研究中だそうですが、シャーク湾は塩分濃度が濃く、ストロマトライトを形成するシアノバクテリアを餌にするような貝類や甲殻類などの生き物がほとんど生息できない環境にあることによるのではないか、という説が有力とみられています。
西オーストラリア州は、以前ご紹介したように、この地域だけでしか見られない独自の生態系が育まれています。(参照:インド洋に沈む夕日と独自の生態系が見られる資源の宝庫)
同じオーストラリア大陸の陸続きでありながら、他の州とは異なる植物や動物がたくさん見られ、さらに、同じ州内であっても、特定の地域だけでしか生息しない植物や動物も数多く存在しています。ストロマトライトもそんななかのひとつに数えられます。西オーストラリアならではの独特でユニークな自然環境が、不思議な生物たちの楽園をつくりあげているといえそうです。
砂漠地帯でしか見られないモロクトカゲや西オーストラリア州ならではのワイルド・フラワーなど、西オーストラリア州だけの固有種はもちろん、変わった生き物や植物が数多く見られる © Tourism Western Australia
うわわわ
(2023.03.02)
わかりやすかった
(2022.12.11)
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