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「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー

0022016.09.13UP自然環境を大きく変えるグレートディヴァイディング山脈-ニューサウスウェールズ州-

 “世界で最も乾燥した大陸”と言われるオーストラリアでも東沿岸部では生物が住みやすい環境があります。そのための大きな役割を果たしているのが、グレートディヴァイディング山脈(大分水嶺山脈)です。
 全長約3,700kmに及ぶこの山脈に海からの湿った空気がぶつかり、雨を降らせるため、山の手前には驚くほど豊かな緑が広がっています。ところが、山と谷を越えた途端、赤茶色の乾燥した大地へと変化します。
 こうした気候の違いが顕著にみられるのが、ニューサウスウェールズ州で、グレートディヴァイディング山脈が州内を南北に貫きます。州南部には、国内最高峰のコジオスコ山を内包する高い山が連なる山岳地帯が形成され、環境的にみると国内で最も変化に富んだ州といえます。

グレートディヴァイディング山脈の一角バーリントントップス国立公園
グレートディヴァイディング山脈の一角バーリントントップス国立公園

昔は湖だったが今は干上がってしまった内陸部のムンゴ国立公園(ウィランドラ湖群地域)
昔は湖だったが今は干上がってしまった内陸部のムンゴ国立公園(ウィランドラ湖群地域)

東西南北で異なる気候が混在するニューサウスウェールズ州

 シドニーが州都のニューサウスウェールズ州。州内の気候は、グレートディヴァイディング山脈を境に、概ね東の沿岸部と西の内陸部で大きく二分されます。しかし、州面積が80万平方kmと広大で、南部には高い山々が連なる山岳地帯となることから、南北の違いも顕著です。
 シドニーを含む東沿岸部は温帯の地中海性気候に属し、一年中温暖。より赤道に近くなるシドニー以北は、四季がある程度感じられるものの、若干、亜熱帯性に近い気候となり、夏は少し蒸し暑くなりますが、冬はそれほど寒くなりません。一方、シドニー以南では、四季はかなりはっきりしてきますが、海沿いに近い地域では、冬でも雪が降ったり、氷が張ったりするようなことはありません。
 ブルーマウンテンズと呼ばれる海岸線から100kmほど内陸へ入った標高が高い地域では、冬場に数日間程度の降雪があります。クリスマスが夏に当たってしまう南半球では、ホワイト・クリスマスにならないからと、冬場の7月前後に2度目のクリスマスを楽しむイベントがあるほどです。
 ブルーマウンテンズ地域は、冒頭のグレートディヴァイディング山脈の一角です。山脈は北のクイーンズランド州から続き、ブルーマウンテンズ地域を通って、さらに南の国内最高峰の山が連なる山岳地帯へと連なります。南部の標高が高い山岳地帯では、冬はスキーができるほど雪が降り、植物相も高原植物へと変化していきます。

緑と水が豊かなシドニー近郊
緑と水が豊かなシドニー近郊

ブルーマウンテンズの見どころ「スリー・シスターズ」
ブルーマウンテンズの見どころ「スリー・シスターズ」

オーストラリア国内最高峰のコジオスコ山
オーストラリア国内最高峰のコジオスコ山

沿岸部と内陸部で異なる動植物相

 州の東側は、グレートディヴァイディング山脈のおかげで雨が多く降るため、世界遺産にも登録された「ゴンドワナ多雨林」と呼ばれる一大森林群が形成されています。
 亜熱帯雨林や温帯雨林、さらには冷温帯雨林まで、多種多様な樹木が生い茂る豊かな森は、様々な生き物たちの“ゆりかご”。ポッサムやワラビーなどのお馴染みの有袋類の他、冷涼な地域にはコアラの親戚といわれるウォンバット、雨によって常に水質が保たれる川には地球上に2種類しかいない単孔類のカモノハシが生息しています。ブルーマウンテンズ地域では、恐竜時代から生き残ったウォレマイ・パイン(古代松の一種)も見つかりました。

草原地帯に多く生息するカンガルー
草原地帯に多く生息するカンガルー

住宅街にも出没するポッサム
住宅街にも出没するポッサム

 森は様々な野鳥にとっても楽園! 中でも、雄がレースのように繊細な尾羽を持ち、求愛ダンスを踊ることで知られるコトドリは、こうした森に好んで棲むオーストラリアの固有種です。10セントコインにもデザインされているこの鳥は、求愛行動の一環として、別の鳥の鳴き声や周囲の音を真似する“物まね鳥”【1】としても知られています。また、州の沿岸部にはリトル・ペンギンが生息しており、本土生息域の北限となっています。

コトドリの雄(出典:Wiki https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3ASuperb_lyrbird_in_scrub.jpg 、撮影者:fir0002 ( flagstaffotos.com.au ))
コトドリの雄(出典:Wiki https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3ASuperb_lyrbird_in_scrub.jpg 、撮影者:fir0002 ( flagstaffotos.com.au ))

10セントコインに描かれたコトドリ
10セントコインに描かれたコトドリ

 内陸部へ入ると沿岸部の豊かな緑から一転し、乾燥した砂漠性気候となります。太古の昔は内陸にも大きな湖があり、緑の大地だったことがわかっていますが、今や湖は消滅し、相当な大雨が降らない限り、水は一滴もありません。湖があった頃は湖畔に、ウォンバットをそのまま大きくしたようなディプロトドンと呼ばれる巨大な有袋類が生息していたそうです。ちなみに、このエリアは「ウィランドラ湖群地域【2】」として世界遺産にも登録されています。

内陸部は赤茶色の乾燥した大地
内陸部は赤茶色の乾燥した大地

約100万~6千年前まで生息していたディプロトドン
約100万~6千年前まで生息していたディプロトドン

砂漠気候に適応した生きものたち

 現在の内陸部は、砂漠気候に適応した背丈の低い植物が多く、少ない水でも生きられる爬虫類の他、ダチョウに次いで世界で二番目に大きな鳥エミューやカンガルーなどが、荒地の中にできた小さな林や草原に生息しています。
 一見、生き物にとっては暮らしにくそうな内陸部ですが、ときおりやってくる雨のおかげでできる大きな水たまりには、ペットとして人気のセキセイインコやオカメインコなどが群れでやってくることも! 沿岸部を除いて広く分布するこれらのインコは、水を求めて常に移動しています。

 今日では、シドニーでもよく見られるキバタンやアカビタイムジオウムなどの大型のオウム属も、もともとは内陸部に生息していたらしく、60年ほど前までは沿岸部にはいなかったそうです。長い年月をかけて海沿いへと勢力を伸ばし、生息域を変えて適応してきた一例なのかもしれません。

エミューのつがい
エミューのつがい

沿岸部でもよく見られるキバタン
沿岸部でもよく見られるキバタン

脚注

【1】コトドリの物まねの様子をとらえたBBCの番組動画
 https://www.youtube.com/watch?v=VjE0Kdfos4Y
【2】ウィランドラ湖群地域
 このエリアでは、1974年に「ムンゴ・マン」と呼ばれる最古の現生人類の化石が発見されました。  このことから、水と緑が豊かであった湖畔での先住民の生活の様子と、地球の地形形成における重要な段階が垣間見られる地域であると評価され、「ウィランドラ湖群地域」として世界複合遺産にも登録されています。
 ※Mungo Man ウィランドラ湖群地域の砂丘が移動することによって露出し、発見された。世界最古の埋葬儀式の様子が見られるとも言われている。

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