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「オーストラリアのユニークな自然環境に迫る!」バックナンバー

0102018.07.24UPその昔は海だった!? 5億年以上前の地球を目の当たりにする、ウルル-カタジュタ国立公園-地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-

世界最大級の一枚岩であり世界遺産のウルル © Shaana McNaught/Tourism NT
世界最大級の一枚岩であり世界遺産のウルル © Shaana McNaught/Tourism NT

 オーストラリアで最も有名ともいえる観光地のひとつ「ウルル」。世界最大級の一枚岩として知られるこの場所は、日本では、「エアーズロック」という呼び名のほうが一般的かもしれません。
 一生に一度は行ってみたい観光スポットとして人気のウルルですが、その畏怖堂々たる姿で世界遺産になっている、ということ以外に知っていることはほとんどない、という人も多いのではないでしょうか?

世界でも希少な複合遺産

 世界最大級の一枚岩「ウルル」は、このエリアにもうひとつある奇岩群「カタジュタ」と共に、一帯が国立公園になっており、世界複合遺産に登録されています。
 世界遺産の中でも、自然と文化の両面から貴重であるとされる複合遺産は、世界でも38件しかありません(2018年7月現在)。ウルル-カタジュタ国立公園が複合遺産として登録されているのは、地球の長い年月の中で形成された稀有な景観と、太古の昔からこの地で暮らしてきた先住民アボリジニたちの目をみはるような文化が根付いているためです。

世界遺産に指定されたもうひとつの奇岩カタジュタ © Tourism NT
世界遺産に指定されたもうひとつの奇岩カタジュタ © Tourism NT

ウルルに定住してきた先住民アボリジニの人々の文化を学ぶ © Shaana McNaught/Tourism NT
ウルルに定住してきた先住民アボリジニの人々の文化を学ぶ © Shaana McNaught/Tourism NT

今は砂漠地帯。でも、その昔は海だった!

雨が流れ落ち、長い年月をかけて岩肌に溝をつくる © Sarena Hyland/Tourism NT
雨が流れ落ち、長い年月をかけて岩肌に溝をつくる © Sarena Hyland/Tourism NT

 ウルルとカタジュタは、9憶年ほど前にできた「アマデウス盆地」と呼ばれる場所にあります。この場所は、当時、浅い海でした。その後、土砂が堆積し、氷河期や何度かの地殻変動を経て、アマデウス盆地に最初に堆積した層が曲がったり歪んだりしながら、再び地表に押し上げられ、約5憶5千万年前に山脈ができたとされています。
 そして、雨が降り、周囲の堆積物が押し流された後、約5憶年前に、この場所は再び海となりました。この時、形成された扇状地に残った一部が浸食などを経て、後にウルルとカタジュタとして、現在見られる形になっていったとされています。
 つまり、私たちが今日目にしているウルルとカタジュタは、何億年も前にできた地球の堆積層が再び地表に現れた姿。長い歳月をかけて、地球の地殻変動が生み出した偶然の産物を目の当たりにしている、というわけです。

過酷な環境下にあるウルル

何千年という時を経て、風雨によって造られる溝や窪み © David Kirkland/Tourism NT
何千年という時を経て、風雨によって造られる溝や窪み © David Kirkland/Tourism NT

 上述の通り、その昔は海だったウルル-カタジュタ国立公園。ですが、今から50万年ほど前からこの地は徐々に乾燥し、今では極度に乾燥した砂漠気候となっています。第8回「湿潤な森と湿原、乾燥した砂漠の2つの顔を持つ準州 ─ノーザンテリトリー準州」でもご紹介した通り、夏場には40度を超える日も多く、年間を通じて少雨で、人間の生活環境としては、かなり厳しいエリアです。
 最も近い町は、約26km離れたところにある観光のために人工的に作られたユララと呼ばれるリゾート地区ですが、現代人が文化的な生活を送ることができる最低限の設備が整っているだけで、他には一軒の民家もなく、ただただ広大な大地が広がっているのみ。
 ユララには、薬局はなく、医療機関は、小さな町の簡易医療センターといった程度のものしかありません。もし、本格的な治療が必要となった場合、最も近い街らしい街までは約450km。車だと少なくとも4時間はかかります。ウルルは、そんなとんでもない僻地にあるのです。

ウルル登山で繰り返される悲劇

 ウルル観光で、日本人に絶大なる人気を誇っているのが「ウルル登山(岩)」です。しかし、地元アボリジニのアナング族の人々は、観光客がこぞってウルルに登ることを快く思っていません。
 それは、彼らにとってウルルが聖地であるという理由と共に、登山で命を落とす人がいることを悲しんでいるから。ウルルの登山口には「登らないでください」というアナング族の人々からのメッセージを記した看板が掲げられています。

 ウルル登山を始めたのは、この地をアボリジニの人々から奪い、観光地化させた西洋人です。彼らは、世界最大級の一枚岩を制覇する喜びのためだけに、アボリジニの人々の聖地を踏みにじり、そして、何人もが滑落するなどして、命を落としてきました。
 そんな中、昨年、長いこと協議されてきたウルル登山が、ついに2019年10月をもって完全に禁止されることが決定しました(※これまで正式に禁止にしてこなかった訳と、禁止を決定した経緯については、文末の参考サイトのコラムをご参照ください)。
 しかし、それにも関わらず、日本人観光客がウルル登山を目指す状況は、ほとんど変わっていません。むしろ「もうすぐ登れなくなるらしいから、今のうちに登っておこう!」という人がチラホラ……。
 そして、つい先日、日本人観光客が登山中に死亡するという残念な事故が起こってしまいました(参考サイト参照)。この男性は、滑落したわけではなく、登山の途中で倒れて死亡したということですが、76歳と高齢だったこともあり、過酷な自然環境や容易ではないウルル登山に対応できなかったのかもしれません。

ウルルの周りに作られた遊歩道を歩く無料のガイドツアーもある © A Hatakeyama/ Tourism NT
ウルルの周りに作られた遊歩道を歩く無料のガイドツアーもある © A Hatakeyama/ Tourism NT

 ウルルの高さは約348mと、日本でよく山登りをしている人なら、なんなくクリアできそうな高さですが、ウルルは山ではなく、硬い岩状になっているため、表面は滑りやすく、大変危険。しかも、かなり急な斜面もあり、登山というより、ロッククライミングのような感じでもあります。そのうえ、上でご紹介してきた通り、乾燥した過酷な環境下にありますので、日が昇れば灼熱の太陽にさらされ、その厳しさは増すばかり。
 「登らないでください」というメッセージを読み、登ってほしくない理由を知って(登山を)止める人が増えたことで、現在では、全観光客の80%が登らないウルル観光を楽しんでいるそうです。一方、残り20%の「まだ登っている人」のほとんどが、日本人を含むアジア人という現実も明らかになりました。中でも日本人観光客の登山者は、残念ながら、かなり目立っているそうです…。

 完全禁止まであと1年ちょっとありますので、「登らないで!と言っているのに、いまだに登っているのは日本人だけ」と言われないよう、慎み深い気持ちをもって、ウルル観光を楽しんでもらえたらと思います。


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バックナンバー

  1. 001「知っているようで、意外と知らないオーストラリアという国。」
  2. 002「自然環境を大きく変えるグレートディヴァイディング山脈」 -ニューサウスウェールズ州-
  3. 003「世界最大の珊瑚礁と世界最古の熱帯雨林」 -クイーンズランド州-
  4. 004「コンパクトな地の利と多様な環境が育む‘食の宝庫’」 -ビクトリア州-
  5. 005「原始の森に包まれた世界でいちばん空気がきれいな島」 -タスマニア州-
  6. 006「乾燥と寒暖差を利用した世界屈指のワイン産地」 -南オーストラリア州-
  7. 007「インド洋に沈む夕日と独自の生態系が見られる資源の宝庫」 -西オーストラリア州-
  8. 008「湿潤な森と湿原、乾燥した砂漠の2つの顔を持つ準州」 -ノーザンテリトリー準州-
  9. 009「二大都市間に計画的に造られた政治の中枢都市」 -キャンベラ首都特別地域-
  10. 010「その昔は海だった!? 5億年以上前の地球を目の当たりにする、ウルル-カタジュタ国立公園」-地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-
  11. 011「地球にとって重要な古生物が今も生き続けるシャーク湾」 -地球の息吹を感じるオーストラリアの旅先案内-

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