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「島と自然と生きる人びと」バックナンバー

0032016.10.11UPハワイと八丈島をつなぐ未来への道(後編)-八丈島 栗田知美さん-

島と自然と生きる人々003 ハワイと八丈島をつなぐ未来への道(前編)からの続き

「黙っていたら大切な物はなくなってしまう」

 1日目にアロハスピリットの基礎を学ぶ授業があり、ハワイの信仰や思想、クレアナやラウリマについても学びました。そのあとはネイチャーセンターでハワイの在来種と外来種、移入種について学んだあと保護活動に参加したり、かつてはハワイの主食だったタロイモの畑で実習をしたりしました。また牛やニワトリ、豚、馬を育てている農園や、ハワイならではの農産物を売っているファーマーズマーケットにも足を運び、現地の人びとから話を聞きました。

 「僕たちはいま伝統を取り戻すためにこういうやり方で、取り組んでいる。でも、問題点もまだまだたくさんあるんだ」
 「君たちにも島の大事なもの、なくしたくないものはあるだろう。でも、ただそう思っているだけではきっとなくなってしまうよ」
 7日のあいだ、たくさんの示唆、教えをシャワーのように受けて、2人は土が水を吸うように吸収していきました。

 最終日。八丈島がどんな島なのか、KCCの人びとに向けて産業や自然、信仰などについて英語で10分前後プレゼンテーションします。
 最後に学長直筆の修了証を受け取りました。直筆なのはこのプログラムだけだそうです。国際プログラムの授業はほかにもたくさんあります。しかし、島同士のプログラムは特別な意味があります。八丈島は島だから、ハワイでの教えをすぐに活かすことができます。だから学長も八丈島とのプログラムにとても期待していて、その証の1つがほかのプログラムにはない直筆の修了証なのです。

動き出した子どもたち


帰国後たくさん報告会を行った。写真は町立三原中での報告会


2015年、ハワイアンが最も大切にするタロイモ畑に入らせてもらっての実習風景

 当時を思い出し栗田さんは言います。
 「帰国後の報告会を島内のあちこちで行ったんですが、2人は成長しましたよ。学んだことを報告するだけではなく、それを元に『島をこう変えていきたい』と、八丈島の未来について自分の言葉で発言するようになったんです」
 「外の世界を見た若者の意見を聞きたい」と町議会にも招かれました。

 「気がついたら2人ともどんどん自発的に動き始めて、コーディネートする必要なんてなくなっていきました。すごい! と思ったのは自力で島内の中学校校長に交渉し、中学校で自分たちの経験と、それを与えてくれた母校の魅力を語り『ぜひ八丈高校に入ってください!』と在校生にプレゼンテーションしたことです」

 かつて、ハワイから出して本土で教育を受けさせなければ! と考えたハワイの人びと同様、八丈島でも高校から本州の学校へと進学させる親世代も少なくありません。でも、いま、ハワイの人びとが「ハワイ大学の教育こそがハワイ人に必要だ」と考えを変えたように、八丈高校が地域から選ばれる高校に変わってくれば、島を愛し、島で生きようと考える若者が増えるに違いありません。

 2015年も11月に4名が旅立ちました。1名は同じ事情を抱える新島からの参加です。1年目に参加した豊田さんは2年目、3年目にもプロモーターとしてプログラムを手伝うようになりました。こうしてOBが次の参加者に経験を伝えたり、島同士のつながりができたりと、将来、島で何かをはじめようとしたときに支え合える仲間もできているのです。

よそから移り住んだからこそできることを

 この活動はもちろんボランティアです。なぜここまで栗田さんは打ち込めるのでしょうか。
 栗田さんが島に移り住んだのは19歳のとき。島の人びとからするとちょうど島を出て行った子どもたちとほぼ同じ年齢の若人が島に飛び込んできたわけで、たくさんの人が初めての島暮らしをする栗田さんを支えてくれました。

 「島が好きで、最初は“島の人になりたい”って思っていたけど、ここで生まれてないし、なれるわけないですよね。だったらよそから来た自分がお世話になったお返しにできることは何? と考えていました。何年かして、あ、私の立場だからできることがある、って気がついたんです」
 その立場とはアウトサイダーであること。島生まれの島人でもなく、完全なよそ者でもない。どんな立場も超えているから逆にどんな人からも悩みごとや相談ごとなどが持ちかけられて、年齢性別問わず知り合いがいる。それは生まれた集落が異なったり、立場がある島生まれの人にはなかなかできないことでもあります。

 誰ともフラットにつながり「この人とあの人の考えていること同じだから結びつけたらいいかも!」と、人と人の接着剤になることもアウトサイダーだからこそできます。そして、若かった自分を支えてくれた島の人のように、今度は自分が若い世代をサポートしたい。
 「それが私のクレアナなのかもしれません」

伝統的な作りの集会所(ハラウ)でルーツについてハワイアンから話を聞く
伝統的な作りの集会所(ハラウ)でルーツについてハワイアンから話を聞く

 八丈島は黒潮に乗ってやってきた外からの文化を取り入れ歴史を重ねてきました。いま栗田さんという “ユリムン”を得て、また新しい歴史を重ねていくのでしょう。栗田さんの笑顔の向こうに、八丈島の明日がのぞいて見える気がしました。


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