「かしこい省エネは、まちの電器屋さんに聞け!」バックナンバー
東部燃焼器具販売(以下、東部燃焼)は、まちの電器屋さんとしては、少し異色の出自だ。もともとガス機器の取り付けの仕事がメインで、家電“も”売っている店だったが、2017年4月のガス小売り全面自由化をきっかけに家電もガスも等しく扱うようになった。いまでは、会社として家一軒を建てられるだけの幅広い技能・資格を持ち、家に関する困りごとをすべて扱っている。水戸、ひたちなかなど半径50キロ圏内をメインに、依頼があれば茨城県全域どこへでも出かけていく。
また、初めてのお客さんにとって、まちの電器屋さんは少し入りづらいので、店頭で焼き芋を売って子ども達の関心を引いたり、環境イベントでおかしやサービス券を配って来店を促したり、さまざまなアイデアでお店とお客さんの接点を増やす工夫をしている。
まちの電器屋さんとして、地域のプロスポーツチームとの連携にも取り組み、サッカーJリーグ・水戸ホーリーホックやバスケットボールBリーグの茨城ロボッツ、2019年にプロ野球独立リーグに参入した県民球団・茨城アストロプラネッツ(以下、アストロプラネッツ)のスポンサーあるいはサポートカンパニーとなっている。水戸ホーリーホックのホームゲームでは、ゴミの分別を行うエコステーション【1】の運営ボランティアとして参加。アストロプラネッツの試合でも、同様にゴミの分別回収を手伝ったり、遊びながら外来種や絶滅危惧種について学べるストラックアウトゲーム【2】を使って、環境問題を身近に考えてもらう機会を提供したりしている。
サッカーや野球の試合会場でのゴミ分別ボランティアを含め、東部燃焼が参加する環境取り組みを主導しているのは、一般社団法人茨城県環境管理協会(以下、環境管理協会)だ。「もともと僕らの球場では分別用ゴミ箱を設置していただけだったんですが、環境管理協会さん主導でゴミの分別ボランティアをやられていると知り、東部燃焼の岡田社長のご紹介で、まず話を伺ったのが取り組みのきっかけです。ペットボトルのラベルを剥がして中を濯いで、キャップと別にして捨てるとか、そういうところから川島部長に学んで取り組みを開始しました。今は何も言わずにお客さん自身がペットボトルのラベルを剥がして分別してくれるようになりました。『ここでいつも分別しているから家でもやるようになっちゃった』という話を聞くと、少しばかり我々も、一人一人の意識を変えるきっかけが作れているのかなと思っています」と、アストロプラネッツの山根さんは取り組みの意義を実感している。「2019年4月から始めて1年目なので言えることは限られるのですが…」と山根さんは続ける。「僕も環境と無縁のところで育ってきたので、いろいろなところで環境に対する取り組みをされている東部燃焼さんを通じて、それがなぜ必要なのか学べたということが、一番良かったです。もともと地域に貢献しようと思って立ち上がったスポーツチームなので、地域貢献の一環として環境に対する県民の意識向上にも貢献できたらという思いもあります。」
環境管理協会では、地域の企業や団体から会員を募り、環境・地球温暖化問題に関する講習会や研修会の機会を提供している。同時に、環境イベントへのボランティア参加や協賛、地球温暖化防止活動推進員【3】となるための講座参加を会員企業に呼びかけている。そして、参加協力した企業の名前を広報誌などに掲載し、環境貢献に積極的な企業を応援している。東部燃焼やアストロプラネッツも会員企業として、積極的にイベントに参加したり、推進員の講習を受けたりしている。
東部燃焼では、お店の50周年記念感謝祭をやった時にも環境管理協会と協力して、COOL CHOICEや家庭の省エネアンケート【4】を行った。アンケートに協力してくれた人にプレゼントした手回しファンやうちわは、COOL CHOICEの活動啓発グッズとして環境管理協会が制作、提供したものだ。環境管理協会の川島さんは「アンケートを単に通りがかりの人に渡すより、東部燃焼の店頭で呼びかけたり、ホーリーホックやアストロプラネッツの試合会場で協力してもらったりしたほうが断然良いですよね」と力説する。お店に来た人が、「手回しファンがもらえるならやろうかな」とアンケートを書く。書きながら、省エネで何パーセントのCO2削減ができるか、少しわかってもらえる。さらに「エアコン、これにしたら何パーセント削減できますよ」と、電気のプロがお勧めするので説得力がある。
環境管理協会では、月1回、会員企業が集まるミーティングを開いて情報交換をしている。異業種で幅広い世代が集まるので、新たな発見が出てくるのだという。例えば、川島さんは50代、岡田さんは40代、山根さんは30代だ。東部燃焼がアストロプラネッツの系列会社の事業所に省エネクーラーを取り付けるなど、会員企業同士で商談が成立するというメリットもある。持ちつ持たれつの関係ができるのが一番の強みだ。
環境イベントやスポーツの試合への協力も、東部燃焼にとっては営業のひとつだという。岡田さんに言わせると「ラーメンを食べに行くのも、営業」なのだ。例えば、ラーメン屋にお昼を食べに行った時、お店にあるテレビが古いなと思ったら、次に行ったときに「マスターごちそうさん、これテレビの見積もりなんだけど」と声をかけるのだ。すると「いやぁ、かえってすみません」となり、たとえテレビが売れなくても「どんなことやってるんですか?」と、会話がつながる。そこで、「うちはこういうお店なので、いつでもお声がけください」と言うと、「ちょっとガスコンロを見にきてもらえますか」とつながることもある。
見積もりと一緒に、COOL CHOICEのアンケートを持っていき、「常連さんにも配っておいてくださいよ。またおいしいラーメン食いに来ますよ、マスター」と言えば、向こうもこちらのことをお客さんと思っているので、書いておいてくれる。
また、前述のとおり店頭でサツマイモを売っているのだが、実は育てるところから関わっている。東部燃焼の社員は、農業の知識もないし資材も持っていないけれど、芋の苗を植えに行き収穫を手伝い、収穫した芋を売って機械代、苗代を払う。社員にとっては、ふだんの仕事とまったく違う経験をすることで福利厚生の一環にもなるし、農家の方と話をする時の話題も増える。農家の方は「マネジメント」のノウハウなどいつもと違う視点で農家の経営を見られる。東部燃焼からの提案で農業倉庫の電気をLEDに変えたので、省エネもなった。
これからは家電を販売するだけではなく、高齢者の見守りやお困りごとの解決など、地域とどうつながっていくかが重要だと、多くのまちの電器屋さんが認識している。けれども、家電販売一筋でやってきたぶん、横の繋がりが作れないことがある。
これについて岡田さんは「地域密着の電器屋という言葉はかっこいいけれども、実はそこに落とし穴があるんです。地域密着という言葉が美徳化しているので、お得意様は丁寧に回るけど新規営業はなかなかやらないのではないでしょうか」と言う。
東部燃焼も、もともと東部ガスの系列で新規開拓をしなくても商売がなりたっていたので、気づいたときには営業という考え方、スタイルが社内になくなっていたそうだ。そこで、環境イベントでボランティアをする、ラーメンを食べに行って見積書を置いてくる、サツマイモを栽培して焼き芋を売るなど、一見、電器店の仕事とはかけ離れたことをやりながら、新しいお客さんを呼び込んできた。どんなことでも、意識的にやっていれば、必ず本業にリンクされるのだ。
「電器製品を売っているだけでは、量販店に行った方が安いしネットでも買えます。だから電器屋として困ったことにすぐ答えが出せるような会社を作りました。つまり、電器屋が電器屋ではなくなり、お困りごと相談屋みたいになるんです」と、岡田さん。「家電製品を売る、器具を交換することは、目的ではなく手段です。売り上げをあげるという部分に特化すれば、自ずとやることが見えてくるはずです」
環境はお金がかかることが分かりました。でも続けることが大事です出来ることから続けてください。一緒に続けましょう))
(2020.05.27)
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