「かしこい省エネは、まちの電器屋さんに聞け!」バックナンバー
1953年の創業以来、製品を通じて安心・安全な地域社会を目指してきたナショナルヤガタは、愛知県内に468店舗ある “パナソニックショップ”の一つだ。
60年代後半に本社を移した名古屋市千種区をホームグラウンドに、家電の販売や取り付け工事だけでなく電球や照明器具の取り替え工事、修理なども請け負ってきた。まさに“まちの電器屋さん”である。
「高齢者が多くなってきたこともあり、こちらから出向いて商売をさせていただくことも増えました。長く商売をさせていただいているため、どこのお宅に何年製造の冷蔵庫があるというようなデータがあるので、点検や修理のタイミングで買い替えのお話ができます。そこは地域電器店の強みですね」と、語る代表取締役の矢形修己さん。
ナショナルヤガタの顧客には「お任せするから“いいの”を持ってきて」と注文する人が多いそうだ。
「最近の電化製品は種類も豊富で、ハイスペックになってきているため、何を選んだらいいか途方に暮れる方も多いようです。信頼されている証なのでうれしくはありますが、逆に省エネ意識、エコに対する関心は高いとは言えないでしょうね。まぁ、現在は『いいもの=省エネ製品』の時代なので、優れた製品を紹介することが自動的に省エネ家電への買い換えにはなっていますが」
だからこそ、矢形さんが重要だと思っているのが社員の省エネ意識だという。
「この製品に買い替えることでどれくらい省エネになるか、それがCO2排出量の削減、温暖化防止にどう繋がるのか、を説明する際に実感を持ってできるかどうか。その差は大きいと思っています」
実は、矢形さんをはじめ全社員が省エネ効果を実感、共有できた1つのきっかけがあった。それは2015年に自社の店舗や事務所、倉庫などの照明器具82基をLEDに変更した結果の電気代の数字だ。
「1年で64万円の電気代が節約できたんです。そこまで差があるとは思っていなかったので私自身も驚きました。この数字を全社員に見せたところ、社員一人ひとりの節約意識が上がり、省エネ家電をお客様に販売することに対する自信が生まれた。これがうちにとっては大きな変化でしたね」
ナショナルヤガタの顧客は7割が個人、3割が企業や法人。商店街の美容院や八百屋さん、歯医者さんなど小規模の企業も多い。LEDへの取り換えは、規模が小さくてもできるB2B(Business to Business)【2】の省エネ買い換え提案にもなっている。
ナショナルヤガタでは、個人の顧客には製品の性能PR だけでなく、使い方をセットでPRすることを心がけている、と営業担当の松原亜希子さん。
「私たちはそれを『コト提案【3】』と呼んでいます。例えば、炊飯器なら『このボタンを押すとご飯が美味しく炊けますよ』ではなく『美味しいご飯のボタンはこれですよ』とお伝えします。省エネ家電はハイグレードなものが多いので高齢のお客様にはなかなか使いこなすのが難しくても、ご自分の暮らしに本当に必要な機能であれば自然と使っていただけます。さらに『炊いたごはんは保温しておくより、冷凍してレンジでチンする方がより省エネになります』ということも忘れずにお伝えしています」
矢形さんも、「正直、私は緊急の課題である地球温暖化防止のためには省エネ家電への買い替えを促進しているだけではダメだと思います。もっとお客様の生活様式全体を見ながら、大きな意味で省エネにつながる製品やシステムのご提案をしなければならないのではないでしょうか。個人ではなく企業でも、複数の支店のある企業にネット会議ができる設備を導入してもらえれば、会議のたびに車を動かして集合する必要が減り、結果的にCO2排出量の削減になる。電気だけでなくガソリンもまたエネルギー、車の稼働率を下げるのも省エネですから」
現在、自社の経営者であるかたわら、愛知パナソニックショップ連合会【4】会長でもある矢形さん。これまでに連合会として実施したキャンペーンの売り上げの一部を地域で「子ども食堂」を運営するボランティア団体に寄付したり、地元の警察の依頼を受けて高齢の顧客宅にある留守番電話の設定変更を会員みんなで行い詐欺防止に一役買ったり、とさまざまな貢献活動に取り組んできた。
「パナソニックショップの中には、うちのように50?60年続いているお店が多いんですよ。それはひとえにお客様であり、地域であり、この社会のおかげです。だったら、みんなで社会にお役立ちすることで返していこうよ、ということで環境、安心・安全、社会貢献の「3本の矢」でロードマップを作り活動しています。」
さらに愛知県パナソニックショップ連合会では、今年1月から全国に先駆け「アプライアンスマイスター制度」を始めた。安全な工事をすること、ガスを放出しない、きちんとリサイクルに出すこと、などのコンプライアンスを遵守するショップを認定する自主基準制度だという。
「私たちは商いの前にまず、お客様の安心と安全の確保を第一に考えなければなりません。製品に関する安心を担うのはメーカーですが、製品を安全に使ってもらうには正しい取り付け工事や正しい使い方を知ってもらうことが必要になってきます。その安全を担っているのが、私たち地域電器店です。これまでに登録した店舗数は369。やると決めたら、一斉にやる! それがメーカー系地域電器店の強み。その調子で温暖化防止対策にもどんどん積極的に取り組んでいきたいですね」
今回のインタビュー訪問の後、愛知中パナソニックショップ会が、2019年11月?12月にかけてCO2削減キャンペーンのトライアル展開を実施すると連絡いただいた。
通常のキャンペーンでは商品値引きによって販売促進をめざすが、今回のキャンペーンではCO2削減効果の見える化を目的として購入者に電気代データの提供を呼びかけ、同意いただき、対象機種をお買い上げいただいた場合、モニター費用をお渡しするというものだという。加盟全店の販売目標から、合計の年間CO2削減量として約30トンをめざす。
さらに、このトライアル実施を受けて、来春2月?4月のキャンペーンでは、愛知・岐阜・三重・静岡のまちの電器屋全店でのCO2削減キャンペーンの開催を予定している。
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.